#387 雑誌読みの愉悦

2016/09/11

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 吝嗇家を自認する私は、ともかく「月額いくら」でかかってくるものに対してはとことん経費節減に努めている。毎月定期的に支払うものは、積み重なると結構な金額になるため、家計への影響が大きいからである。特に携帯電話やインターネット接続サービスなどは、全く使わなくても固定料金部分が存在するため、利用頻度が大したことなければ、きちんと見直して、より安いサービスにするかいっそ解約する方が良い。

 そんな私であるが、このほど、docomoが提供する雑誌読み放題サービス「dマガジン」の購読を契約した。雑誌を対象としたサブスクリプション型の電子書籍サービスで、税込み月432円で160誌が読み放題という謳い文句で宣伝しているサービスである。

 私に関して言えば、スマホについては中古スマホにMVNO、それと基本料金無料のIP電話の組み合わせで使っている状況であり、大手キャリアであるdocomoとはもはや契約していないので、私には無縁なサービスかと思っていたが、このサービスはdocomoの携帯電話やスマホを使っていなくても契約可能だそうである。

 契約はとても簡単で、Webを通じて必要事項を入力すれば、IDが発行され、ログインすれば読めるようになる。二段階認証もオプションでつけられるようになっており、一度登録した端末についてはログイン不要で読めるように設定もできる。スマホやタブレットで閲覧する場合は専用アプリを使うことになるが、今年2月からはPC上の汎用ブラウザでも閲覧可能になった。雑誌は概して写真と細かいフォントの文字で紙面が構成されていることが多いので、スマホやタブレットの小さな画面だけでなく、横長のPCディスプレイで見開きで読めるというのは大きなメリットである。

 購読可能な雑誌は160誌以上あり、ラインナップとしても、多くの人が名前を知っているようなメジャーな月刊誌や週刊誌はかなり網羅されているようである。また最新号だけでなく、ある程度前までのバックナンバーも購読可能である。クリックやフリックでページを送ったり、ダブルクリックやダブルタップで原寸表示にできたり、インターフェイスもわかりやすい。

 ただし、紙の雑誌と全く同じコンテンツが読めるわけではなく、雑誌によっては紙のコンテンツからの抜粋版や簡易版になっているものもある。その辺は、おそらく著作権とか出版社とdocomoとの契約の関係でそうなっているのであろう。

 ともあれ、1冊買っても通常数百円する雑誌が、160誌も読み放題というのは非常にコストパフォーマンスに優れている。docomoの方では、利用者のページビューの数をカウントし、その数に応じて出版社に還元しているということである。既に120万人が契約しているということであるので、それだけ多くの人に参照してもらえれば、単価は低くても十分収益になるということであろう。

 実際、160誌も手元にあれば、書店や図書館では手に取らないような雑誌であっても、ちょこっと見てみようかという感じになる。そうやってあちこち雑誌を「ザッピング」してみると、話題の選び方、記事の書き方、紙面の構成など、それぞれ雑誌ごとに個性があって、それを比較するのも面白い。記事を深く読み込まなくても、デザインに優れた紙面はそれをぱらぱらめくるだけでも楽しめる。

 アプリの場合は、気になる記事を「クリッピング」したり、雑誌1冊を丸ごとダウンロードして、オフラインの環境で読むことも可能である。ただし、基本的に紙面は画像データであるので容量は結構大きい。Wifi環境などを併用して通信料を節約する工夫が必要であろう。

 また「ホットワード」「おすすめ記事」というのもあり、特定の話題について関連する記事を横断的に読むことができるのも面白い。アプリの方ではこれらのインデックスから直接雑誌へのリンクができるので、できれば同じ仕組みをパソコンのブラウザの方でも実現してほしいところである。更に言えば、ユーザーの入れたキーワードで記事検索できるようになると鬼に金棒であると思う。

 各出版社がきちんと手間隙をかけて取材をして編集された雑誌記事を読むことには、インターネットでの情報収集では得られない愉悦がある。今の所は、毎日のように新しい雑誌が配信されているのを、飽きずに濫読しているところである。難点があるとすれば、ファッションやライフスタイル系の雑誌を読んでいると、いろんな商品紹介の記事がやたら物欲を刺激してくるところであるが、そこは吝嗇家魂を発揮して「自分に必要ないものは買わない」と心に決めつつ眺めている。


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