#382 ネットでふるさと納税

2016/05/12

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 遅ればせながら、今年から「ふるさと納税」をやってみることにした。

 ふるさと納税という名前であるが、実際に行うのは自治体への寄附である。個人が2000円を超える寄附を行ったときに、住民税の最大約2割程度(2015年4月より)が控除される制度で、地方間格差や過疎などによる税収の減少に悩む自治体に対しての格差是正を推進するための構想として、2008年に創設された制度である。

 「ふるさと」という名前がついているが、寄附する先は自分の実際のふるさとである必要はなく、自分の住んでいる自治体以外であればどこにでも寄附することが可能であるし、複数の自治体に寄附することも可能である。

 単に寄附というだけであれば、本来自分が納めている住民税の一部を別の自治体に移転するだけのことであるが、各自治体は寄附に対して、地元の特産品などの「お礼」をするようになり、寄附する側にもお得な制度として急速に認知されてきた。

 寄附をする個人の側にしてみれば、最小で2000円の負担のみで全国各地の特産品などの魅力的な返礼品が手に入る。寄附をされる自治体の方にしても、返礼品の実費送料を除いた分がまるまる寄附として自治体の財政の足しにできる。割を食うのは、本来住民税として納められる分が寄附された分だけ減ってしまう、寄附した個人の住む自治体ということになるが、それでも最大で2割であるし、ふるさと納税をやっているのは住民の一部なのだから、それほどの影響はないのかも知れない。

 とはいえ、当の自治体としても、何もしないで手をこまねいていては、魅力的な返礼品を提供する他所の自治体に住民税を持っていかれることになるわけなので、最近では、いかに「見入りのいい」返礼品を用意して全国から寄附を集めるかという競争になっているようなところもある。中には、高額寄附者を対象に高級家電を用意したり、商品券やプリペイドカードなどを提供したりする自治体もあると聞く。さすがにそう言った換金性の高い返礼品については自粛するように総務省が要請しているようであるが、特に強制力があるわけではなく、返礼品合戦はますます加熱しているようである。

 私の場合そこまで高額の寄附をする余裕はないものの、1万円も寄附すれば、米なら10kg、お酒なら発泡酒24本、焼酎5本などがそれぞれ返礼品としてもらえるようである。身銭を切って買っているこれらのものが、年間で2000円の自己負担でいただけるのだから、ありがたく利用させてもらうことにして、あちこちの自治体に寄附を始めた次第である。

 今では「ふるさとチョイス」や「さとふる」など、こうしたふるさと納税の手続きを簡単に行えるサイトもある。氏名や住所などをあらかじめ登録しておけば、あとは寄附する先の自治体と希望する返礼品を選ぶだけで、細かい情報を都度入力することなく、簡単に寄附ができてしまう。寄附の決済はクレジットカードを利用できる場合も多く、細かいことだがクレジットカードのポイントも貯めることができる。

 ただし、寄附を申し込んでから、返礼品や住民税控除に必要な寄附受領証明書が届くまでの時間は自治体によってまちまちのようで、申し込んでから1週間で届く場合もあれば、申し込んだはずなのにメールによる連絡すらしばらく寄越さないところもあるようだ。

 動機が返礼品目当てというのも少なからずあり、若干の後ろめたさを感じる部分もないではないが、お上お墨付きの制度であるし、もとはと言えば自分の稼いだお金であるから、単に税金として持っていかれるよりは自分の意思を込めて使えるのだから有意義なことではないかと思うところもある。最初は返礼品が目当てであっても、それまで馴染みのなかった自治体からの丁重なお礼の言葉と返礼品をいただくことで、その自治体に思いを馳せることができるのも良いことなのではないかと思う。

 最近では、熊本地震で被災した自治体に、敢えて返礼品を辞退して寄附をする動きも増えており、そうした自治体にかわって事務を代行する自治体もあると聞き、大変良いことではないかと思う。

 利用者にとってもメリットが大きいふるさと納税の利用をためらう向きがあるとすれば、制度の複雑さや税控除の手続き(確定申告)のわずらわしさというのが理由の一つにあるのかも知れない。だが、サラリーマンにはあまり馴染みのない確定申告も、やってみれば簡単なので、次回はその辺の話を。


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