#350 母の携帯電話を新規購入

2013/09/24

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 今や国内の携帯電話の加入者数累計が日本の総人口を上回っている時代において、携帯電話の新規加入者というのは非常に珍しいものであり、各社とも、学生などをターゲットにそういう少ない市場を奪い合うような構図になっているところであるが、一方で、携帯電話などなかった時代を長く生きており、携帯電話を持つ必要性を感じないシニア世代というのもまた、新規加入者の予備軍には違いない。

 私の母も、もとより機械に強くないし、外出そのものもあまりしないので、携帯電話など不要と考えているシニア世代の一人であった。その母から、携帯電話を新たに持ちたいのだがと相談があった。

 実は母からそういう相談があったのは初めてではない。しかし、母が実際に携帯電話を必要とする頻度と、それに比べての初期費用や月々の維持費などを天秤にかけると、そんなに必要なものではないのではないかと説得をして、一度は思い直させた。

 それでも、たまにグループで出かけた時に、自分だけが携帯電話を持っていないがために咄嗟の連絡が取れないことで他のメンバーに与える不便さや、公衆電話がないために、いざという時に他人の携帯電話を借りなければならなくなることに対する肩身の狭さ、また高齢であることから、外出中に体調を崩した時など緊急に助けを求めたりしなければならないこともあるかもしれないことから、まだ頭が働くうちに携帯電話を持って使えるようにしておきたい、との強い意志で、また購入の相談を受けたのであった。

 そういうことであれば、息子としてもそれに応えるべく、各キャリアのカタログを集めたりして、どういう機種が適切か検討してみる。今や各キャリアとも、通信料収入が割高で実入りの大きいスマートフォンを若者に売りつけることに注力しているところであるが、高齢の母に関して言えば、いきなりそういうものは使いこなせないだろうし、もとよりメールですら必要ないとのことなので、使いやすいフィーチャーフォンで、通話のみ可能なシンプルなプランで選びたい。問題はそういう機種や料金プランがまだあるのかどうかというところだが、各社とも、新規契約者向けにさまざま割引プランは用意していても、機種代の割賦金や基本料金プランには充当しない仕掛けにしてあるようで、通話だけが必要な客からも最低限のお金はいただきますよということのようである。

 というわけで、どのキャリアで選ぼうと大して変わりはなさそうなので、あとは実際に母に見てもらって、使いやすそうな機種を選んでもらおうというぐらいの気持ちで、先日実家に戻った折に、母を連れて近くの家電屋を訪れる。

 店員をつかまえて、これこれしかじか、と条件を伝えると、店員が勧めたのはSoftbankのかんたん携帯であった。文字表示が大きく、よくかける相手へのワンタッチダイヤルボタンや、防犯ブザー機能、健康事典がついているなど、シニア向けに作られたフィーチャーフォンである。しかも、いくつかの条件を満たすと「スマート一括」という方法により、本来4万円以上する機種の購入代金が0円になるという。

 その条件とは「指定機種であること」「クレジットカード決済であること」「2年契約であること」「ホワイトプランに加入すること」「店舗での新規契約であること」だそうで、いずれも満たしてはいる。このほかいくつかの有料オプション契約が必須とのことであったが、ホワイトプラン以外の有料オプションについては、契約した直後に解除することも可能とのことである。

 ということで、身分証明書を提示し、いろんな書類を書いて契約し、その場で端末を受け取る。なお、私は妻とともにWillcomであるので対象外だが、弟の家族はSoftbankで揃えており、その場で弟の契約者情報を調べて家族割の設定もしてもらったので、弟の家族とはいつでも無料通話可能である。これで維持費は通話料を除けば月980円であるから、大きな負担でもないだろう。ちなみに契約時にお願いされた有料のオプションは、サポートセンターに電話して、すべてその日のうちに解除した。

 ということで、中学生になった弟夫婦の長男に、早速手にした携帯電話で楽しそうに電話をかけている母を見ると、まあまあ親孝行できたかなとも思う。


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