#322 電子書籍端末を購入

2011/07/27

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 昨年北米に出張した折、飛行機の中では、Amazon Kindleで読書している人をちらほらみかけた。あちらでは、Kindleに代表される電子書籍端末が結構普及しているようである。端末ひとつで、好きな時に電子書籍を(紙の書籍よりも廉価で)購入でき、端末に何百冊もの本を保存でき、好みの文字の大きさで読むことができるというのは、読書好きにはなかなか魅力的な存在である。

 そういった彼の国の状況を反映し、日本も昨年暮れあたりから、相次いで電子書籍端末が販売され、「電子書籍元年」などと報じられたりもした。ただ、端末はいろいろ発売されたものの、日本の出版業界の構造のせいか、肝心の電子書籍そのものの普及にまだまだ難があるようで、まだ大きな広がりを見せるに至っていないような気がする。

 私自身も、実際のところ日本における電子書籍市場にはほとんど期待していない。これは、上に述べた理由により電子書籍市場に今のところ明るい展望が見られないということ以前に、私自身が、そもそも書籍をあまり購入していないということがある。

 私は決して本が嫌いなわけではないのだが、読みたい本はたいてい図書館で調達して、読んだら返却してしまうというスタイルを貫いているので、申し訳ないことに、ここしばらくほとんど定価で本を買い求めるということをしていないのである。従って、いくら電子書籍が普及しようと、紙の本を買わない私が電子書籍だからと言って買う可能性は低いのである。威張って言うことではないが。

 にもかかわらず、このたび、昨年暮れに発売されたSonyのReaderを購入することにしたのは、電子書籍の購読が目的ではなく、主にはPDFで提供される国際会議のドキュメントを読むためである。

 国際会議の際には、事務局やメンバーからさまざまなドキュメントがあらかじめ提出され、Webを通じて共有される。一つ一つの文書は数ページから十数ページくらいのものなのだが、それらがいくつもいくつも五月雨式にやってきて、合計すると数百ページになったりすることもある。印刷すると結構な分量になるし、持っていくのも結構な荷物になってしまう。あるときなど、会議が終わってお土産を買って帰ろうとしたら、荷物が重量オーバーになってしまったので、結構な重量の会議書類を、どうせ電子化されているのだしと、パリのゴミ箱に捨ててきたこともある。そうした書類を電子書籍端末に入れてしまえば、嵩張ることもなく持ち運ぶことができ、場所を選ばず参照することができる。

 そういう用途であるから、表示がカラーであることよりも、モノクロでもいいから電池の持ちがよく、重量も軽いという理由で、SonyのReaderを選んだ次第である。

 私の購入したのはTouchEdition(6インチ画面)の方である。会議資料はA4サイズのPDFで配布されることが多いが、6インチあれば、表示を横にして、上下あわせて1ページとし、更に「余白カット」というオプションを選ぶことで、細かい英文でもどうにか読むことができる。E-inkによるディスプレイは、液晶に比べるとコントラストもあって、何より目が疲れない。

 難点を言えば、書籍の整理が「コレクション」という1階層のみのフォルダ単位でしかできないことと、付属のソフトが遅くて性能がいまいちなのと、PDFの場合は「タイトル」と「著者名」で管理しているということである。

 意識している人は少ないかも知れないが、PDFには「タイトル」と「著者名」の情報が埋め込まれている。これはファイル名とは別のものなので、たとえばMS-WordからPDFに変換したものだと、必ずタイトルの冒頭に「Microsoft Word」というのが入ってしまって鬱陶しい。ファイル名を変更するのは適当なシェルスクリプトやバッチファイルを使えば一括で変更できるが、PDFのタイトルを変更するのはなかなか骨が折れる。

 いろいろWebを徘徊して調べた結果、Javaを使って、タイトルと著者名をファイル名から引いてきて設定するツールを見つけ、それを使って文書を整理することにした。具体的には、「著者名-タイトル.pdf」というファイル名を読んで、PDFについたタイトルと著者名を一括して変更してくれるツールである。バッチファイルによってこのようなルールに従ってファイル名を一括変更したあと、このツールを使ってタイトルと著者名を一括変更する。

 きちんと整理するために一手間かかるところがやや難ありだが、それを除けば、文書を読むという目的に関しては非常によくできた端末である。本を読む目的で買ったわけではない電子書籍端末であるが、いずれ電子書籍の環境が整ってきた暁には、実際に書籍を購入してこれで読むということもあるかも知れない。


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