#304 やっぱり地デジは気に入らない(後編)

2009/12/27

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 HDDレコーダのDVD再生機能の一部が調子悪くなった機会に、新しく 地上デジタル対応のHDDレコーダを買ったというのが前回のお話。

 で、テレビに接続して、地上デジタル放送を見てみる。地上デジタル放送は基本的に16:9のワイド画面であり、我が家のテレビの方は相変わらず4:3のブラウン管テレビである。水平解像度も525本しかないから、当然画質の違いなどわかろうはずもないし、単に上が欠けているのでかえって画面が小さく見える。データ放送というのもあり、その日の天気とかが確認できたりするのであるが、4:3のテレビだと、文字もいまいち読みづらい。やはり地上デジタル放送を楽しむには、テレビの方もワイド型の地上デジタル対応のものにしなさいということらしい。

 またデジタル放送の方は詳細な番組表のデータが入るようになっており、その番組表を見ながら録画のセットなどをすることが可能になっている。しかしこの番組表のデータはアナログ放送の方には対応していないため、アナログ放送の番組を録画しようと思ったら、開始時刻や終了時刻やチャンネルをすべてマニュアルで設定しなくてはならない。昔のビデオだったらGコードというものがあって、数字を入れればその辺の情報が入るようになっていたのに、どうやらそれにも対応していない。いずれ役目を終えるからということか、アナログ放送に対してはとことん冷淡である。当然ながら、そうやって録画したアナログ放送の場合は、番組タイトルなどがつけられるということもない。

 間抜けなことに、機器の時計は常に正確に保たれているのであるが、地上デジタル放送はデータのエンコード・デコードの分だけタイムラグができるので、番組を録画すると、必ず2秒ほど、前の番組のお尻から録画しているのである。番組の頭が欠けるのよりはましかも知れないが、いつも関係のない絵からタイトルが始まるのはやっぱり気持ちがよろしくない。

 で、もっとも困ったのが、地上デジタル放送のDVDへの録画である。現在のところ、ほとんどのデジタル放送のコンテンツはCPRM(Content Protection for Recordable Media)に対応したメディアでなければ、コンテンツのコピーや移動ができなくなっている。また再生に関しても、CPRMに対応した機器でなければ再生ができないようになっている。CPRMに対応したメディアは、そうでないものに比べればまだまだ割高であるし、ゆくゆくはすべての機器がCPRM対応のものになるのかも知れないが、そうでない機器で再生できないというのは、現状ではまだまだ不便な場面も多い。

 さらに、こうした地上デジタル放送のコンテンツは、たいてい「コピーワンス」もしくは「ダビング10」という制限がかけられている。前者はコンテンツを第1世代目への1回の移動しか許されず、後者は第1世代目への9回のコピーと1回の移動しか許されていない。ダビング10であっても、第2世代目以降へのコピーが許されていないため、バックアップを取ることすらできない。HDDの容量も有限である以上、ある程度まとまったらDVDに焼いていくことになるのだが、焼いたDVDはもはや(第2世代以降となる)複製を作れない(作っても再生できない)ため、バックアップを取ることもできない。

 DVDは決して半永久的に使えるメディアではなく、数年くらいしたら読み取れなくなることも覚悟しなくてはならないメディアである。実際、私がこれまで撮りためたアナログ放送を録画したDVDでも、時間がたつにつれ、レコーダでの再生が不調になることがある。その時には、パソコンで新しいメディアにコピーしたところ、無事再生できるようになることも何回かあった。現在のダビング10のコンテンツでは、こうした第2世代以降への複製版は再生できないので、今後はそういった芸当もできなくなり、そのメディアが再生できなくなったらそれまでということになる。大切なコンテンツは最初の第1世代へのコピーの際に必要な数だけバックアップコピーを作っておけということであろうか。それではあまりに不合理である。

 デジタル放送の無制限なコピーは確かに著作権上問題になることもあるかも知れないが、例えば、個人的な範囲で視聴を楽しむようなものにまで、このような制限をかけるのは、利用者の便を著しく損なうものだと思う。せめて同じ制限をかけるのであれば、第2世代以降にもコピーできる(ただし世代数は制限する)という方向であれば、無制限のコピーを防ぐという目的は保ちつつ、利用者の便もある程度は確保できると思われるのだが。

 そういった調子なので、残念ながら地上デジタル放送に完全に移行されるまでは、あるいは、初代のHDDレコーダ(アナログ)のHDD機能やDVD録画機能が壊れるまでは、我が家では地上デジタル放送は「ほとんど必要ないもの」と認識され、折角買った新しいHDDレコーダも、テレビ放送の録画にはほとんど使われないままの状態が続いているのである。


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