#302 pomera大活躍(後編)

2009/10/27

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 pomeraは用途が非常に限定されているため、パソコンのようにユーザのニーズにあわせて複数の機能を持つようなものに比べると、ある意味使う人を非常に限定した商品だと言える。こういった商品が、2万円を超える価格設定で売れるのかどうかと思う意見もあったようだが、いざ発売してみたところメーカーの予想を超える売れ行きのようで、発売直後しばらく品薄な状態が続いたようである。

 私も仕事上、先に述べたような議事メモを作ったり、あるいはプライベートでも日記を書いたりこんなサイトを作ったりするくらいだから、このような入力装置の登場を待っていたと言える。そんなわけで、どうにか2万円そこそこで買うことのできるところで、通販で1台購入した次第である。

 実際に使ってみてどうであったか。まず、キーボードの具合は非常にいい。折りたたみ式なので強度が心配されたが、特にがたつきもない。一応キーボードの右側には、開いたキーボードを下から支える板が引き出せるようになっているのだが、その助けを借りなくても、十分固定されている。キーボードの高さストロークの強度も適当で、長時間打っていても疲れない。キーの縦間隔がやや狭いのも、前後の運指距離が小さく、私にとってはかえって打ちやすい。

 乾電池のみで動き、ほとんどキーボードくらいの面積しか必要としないので、作業場所を選ばない。セミナー会場の小さい机、新幹線や飛行機の簡易机の上、そしていざとなれば膝の上にファイルを乗せて、その上で文字を打つことも可能である。もちろん、キーボードを畳めばそのまま電源が切れて、編集中の文書も作業中の状態で保存してくれるから、すぐに作業を再開できる。

 一般的なショートカットであるCtrl+X,C,V(それぞれカット、コピー、ペースト)も有効だし、編集中のファイルの上書き保存(Ctrl+S)ファイルオープン(Ctrl+O)新規作成(Ctrl+N)などのショートカットを覚えれば、編集するファイルの切り替えも非常に機敏に行える。クリップボードに入っているデータの内容は別ファイルの編集に移っても保持されるので、文書間での文字列の移動やコピーも可能である。

 F2を押すと現在日時が入力できる機能も重宝している。日記や出納帳では日付を入れる場面も多いし、また議事録などを打ち込む時も、区切り区切りで時刻を入れると、あとで進行具合を確認するのに役に立つ。

 F7を押すと現在の文字数を表示してくれるのも便利だ。もともと1ファイルの文字数に制限があるために、文字数が気になるということもあるが、例えばこのコラムの場合、私はだいたい1つ1500〜2000文字という基準を設けている。字数を確認して、多ければ編集したり分割したりということをするので、一発で文字数が確認できる機能はなかなかありがたい。

 そして、これが実は最も重要なことだと思われるが、pomeraには文字を入力するという以外にほとんど機能がないので、これを起動するということイコール文字を打つということになる。ネットにもつながらないので、ネットから拾ってきた文章を適当にコピーペーストして作るという使い方もできないから、おのずと頭の中からでてくる文字を打ち込む作業を黙々と行うことになる。常に頭を働かせながら物を書くということになり、使っていくうちに、頭の中が研ぎすまされていく感覚がある。

 アドエスにキーボードを繋いでも同じようなことはできるのだが、編集開始・終了までのステップ数の短かさ、ディスプレイの視認性、乾電池での長時間駆動(電池の心配がいらない)、安定性・堅牢性から言うと、専用機としてのpomeraに軍配があがる。電子メモ帳の名にふさわしく、議事録取りには断然pomeraが便利である。

 アドエスのように「こんなに小さくてこんなに高性能」というものに弱い私であるが、このpomeraは、決して多機能ではないものの、文字を書くという用途一点において非常に洗練された機械であり、非常に私のツボにはまった機器であった。今後、ユーザからの意見を吸収し、より洗練された後継機が出てくることを望むものである。


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