#241 議事録取りを簡単に

2005/02/22

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 仕事上、時々何かの会議の議事録を取る必要が生じる人も多いだろう。そんな時あなたはどうしてるだろうか。

 一口に議事録と言っても、簡単なものであれば「こんなことが議論されて、結論はこうでした」程度のものもあり、その程度であれば1時間の会議でもA4紙1枚〜数枚程度で済むだろうから、さほどの作業でもないし、自分も議事に加わる余裕があるだろう。

 だが「誰が何を言ったか」をある程度正確に記録したようなものを作る場合、速記の心得がある人でない限りは、他人が話した言葉をその場で正確に記録することはほとんど不可能であろうと思われる。そのため通常は、音声を録音できる機器、具体的にはカセットだったりMDだったり、あるいはビデオカメラだったり、最近ならICボイスレコーダだったり、そういったものでひとまず音声を記録し、会議が終わったあとでそれを文字に「起こす」と言った作業が必要になるものと思われる。

 だが、リアルタイムで発言を「起こす」ことはやはりできないだろうから、議事録を作るためには記録した音声を何度も何度も聞き返す必要が生じる。結局、議事録を作るために会議の何倍もの時間をかけて発言を起こす作業をしなくてはならないから、手間のかかることおびただしい。

 一度自分が主催した会議で、速記の会社に議事の記録をお願いしたことがある。出席者の席順を記録した紙を事前に受け取り、当日は参加者のそれぞれの席近くにマイクを設置して音声を記録し、わずか1週間ほどで、会議の全発言を網羅したテキストを送ってきてくれた。3時間ほどの会議で数100kbyteほどのテキストであるが、それらを1週間かそこらで起こしてくれるのだから、さすがはプロである。

 最近のICレコーダーでは、音声をパソコンに取り込み、発言を音声認識して文字に直してくれるような機能を持つものもあるようだ。今のところは特定の人の話し言葉を学習することによってある程度のテキスト化はできるようだが、複数人のそれに対応するのはなかなか難しいようである。将来的にこれが実現できるようになれば、上のように速記をお願いしなくても文字に「起こす」作業はそれほど大変なことではなくなるだろう。

 とは言え、ではその発言を網羅したテキストが議事録になるのかと言うと、そうとも言えない気がする。何しろ話し言葉というものは自分が思っているほど理路整然としたものではなく、文字にしてみると、それはもう間抜けなくらい冗長な言葉や相槌や繰り返しが含まれているものであり、かえって意味を汲み取りにくい。議事録として「読んで分かる」ものにするには、やはり発言の内容を「書き言葉に変える」作業が必要であり、結局別の作業で手間がかかることに変わりはない。

 そんなわけで私の場合、議事録取りをする必要があるときは、思い切ってノートパソコンを持っていき、その場で発言者の発言を書き言葉に要約して打ち込むということをやっている。もとより私のタイプ速度では、発言を一字一句追って入力するのは不可能だし、日本語の入力には途中で「漢字変換」というアクションが入るため、難渋することもあるが、入力ミスや変換ミスなどがあっても、とりあえずその場では無視してひたすら打ち込む。集中すれば2時間程度の会議の記録はなんとか可能である。

 もっとも、記録に集中する必要があるので、自分が発言するなど会議そのものに参加することは不可能である。あくまで記録者として議事録取りをお願いされた時しかこの技は使えない。ペンを持って速記まがいのことをするよりは手も疲れないし、あとは読み返して記録時の入力ミスや変換ミスを修正すれば、ほぼ議事録が出来あがるので「文字起こし」のための余計な手間も省けて良い。なお細かいテクニックだが、あらかじめ参加者がわかっている時は、例えば「議長:」を「@ぎ」などの文字で単語登録しておくと、発言者の入力が簡単にできる。

 先日もその方法で議事録取りをやった結果、打ったテキストは約2時間で18kbyte程度であった。このくらいが私のテキスト入力の限界速度のようである。もしかしたら世の中には、携帯を使って親指で文字を打つスピードで議事録を取れる人がいるかも知れない。ただ、たとえそんな能力を持っていたとしても、今のところは会議中に関係無いメールを売っている不埒な社員にしか見られないだろうから、やめておいた方がいいだろうけど


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