#219 毎分3000回転

2003/04/30

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 歯を磨くという習慣は、まあほとんどの日本人が持っているものだと思われるが、その頻度や回数などは、人によって随分違うものだと思われる。たとえ外食であっても食後は歯を磨かないと気が済まないという人から、歯を磨くのは一日のうちに寝る前に一度きり、という人まで様々であろうと思われる。歯を磨くためには、自分専用の道具(歯ブラシ等)と、洗面所などの水が自由に使える場所が必要なわけで、工夫次第でそのような場所が確保できないケースはあまり無いものだとしても、自分の家以外の場所ではなかなか面倒に思ってしまう部分も多いのではないかと思われる。

 自分の場合はどうかと言えば「自分の家や旅先の宿での食事の時は磨く」という程度である。職場での食事で磨く習慣はなく、朝起きた時も磨かない。それでどうかと言うと、とりあえず今のところ、虫歯は無いようである。しかし、以前奥歯の詰め物がはずれた時に歯科医に見てもらったところ、歯茎が弱いと言われたことがあり、その後も歯科検診など受けるたびに「歯周病に注意して下さい」ということはよく言われる。いくら歯が丈夫でも、それを支える歯茎が弱くなってしまっては、下手をすると遠からぬうちに歯がごっそり抜けて入れ歯のお世話にならなくてはならない可能性もあるそうで、ある意味虫歯よりも深刻である。ある統計によれば、日本人の約半分は歯周病であるとの報告もあり、これを読んでいるあなたにとっても人ごとではないかも知れない。

 歯周病を予防するためには、もちろん日々の歯磨き、なかんづく歯周ポケットと呼ばれる歯の生え際のところに溜まる歯垢を除去することが肝要なのであるが、ポケットと言うだけのことはあって、ただ漫然と歯磨きをしていたのではこういうところの歯垢はなかなか取れない。こういうところまできちんと磨くには、歯1本1本の生え際を細かく磨く必要があるわけで、最近ではそういう目的の歯磨きに特化したヘッドの歯ブラシも多数販売されている。そしてそういった歯ブラシの進化形とも言えるのが、電動歯ブラシというものである。

 電動歯ブラシは、ヘッドのブラシの部分が円形に植毛されており、ヘッドが高速回転することにより、本来人間の手で行うブラッシングをより高速に行うことができる。ヘッドを歯に当てておくだけで、人間がやるよりも入念にブラッシングをしてくれるのがありがたい。更に高度なものになると、前後運動まで加わるらしいのだが、そこまで凝ったものでなければ、最近は3000円くらいで売っていたりする。3000円の電動歯ブラシでも毎分3000回転だというのだからすごい。何がどのくらいすごいのかよくわからないけど、ともかくというわけで、歯周病が気にかかる私も、ものは試しで一台買って来た次第である。

 注意書きを見ると「使い始めのうちは、歯茎から血が出るかもしれませんが、2週間ほどすれば出血はおさまります」とある。恐らく弱い歯茎であると、ブラシの高速回転に歯茎が絶えられず、大量出血してしまうということなのだろう。実際私も使い始めてしばらくは、歯茎から盛大に出血していたものだが、そのうちに出血もしなくなり、心なしか、磨きあがりもすっきりしてきた気がする。確かに効果はあるようだ。

 当然ながら、長く使っているとヘッドが消耗し、取りかえる必要がある。目安としては、毛先につけてある緑色の塗料がとれて白くなってきたら取りかえ時らしい。だいたい1ヶ月半から2ヶ月はもつようだ。替えのヘッドは一つ600円くらいなので、普通の歯ブラシに比べれば割高だけれども、それだけの効果はあるのだし、高いものとも思わない。スイッチを入れて2分たつと、ブラシの回転が一時停止する機能もあり、歯磨きの時間の目安にもなる。

 割といいことづくめの電動歯ブラシであるが、ただ難を言えば、高速回転しているヘッドを歯に当てるのであるから、歯磨き中は頭蓋骨が振動する音のため、家人に話し掛けられてもまったく聞こえないということがある。それに、こういう文明の利器に頼っていると、普通の歯ブラシで歯が磨けなくなるような気がしないでもない。ワープロに頼り過ぎて漢字をどんどん忘れているがごとく。


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