#207 母(マザーボード)をたずねて三千里

2002/10/10

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 前回までの話。あちこち具合が悪くなった自宅のデスクトップパソコンを修理するべくメーカーに送ってみたものの、修理代の高さに唖然として、修理をキャンセルし故障した部分を自分で直してやると思い直した次第である。

 修理を依頼したパソコンは、マザーボードとHDDが故障しているとのことである。このうちHDDについては、ちょっと前に具合が悪くなった(ように見えた)ため、既に新しいものを購入し交換してある。修理の時は初期状態に戻すために、具合の悪いHDDを接続していたわけであるから、HDDが故障していると言われてもそれは折込済みのことであり、わざわざ新しいものに交換してもらわずとも良い。ということで、調子の悪いマザーボードのみを新しいものに交換すれば、原理的には復活するはずである。

 マザーボードはパソコンの根幹となる部品で、CPUをはじめあらゆる周辺機器がそれに接続されている。人間の体に喩えて言うなら、CPUつまりパソコンの頭脳からの命令を各器官に伝達する役割を担うものであるから、マザーボードはパソコンの脊髄もしくは神経系と言ってもいいかも知れない。あまりぱっとしない比喩だが、それはそれとしてマザーボードは、格納するケースの大きさや、接続できるCPUの種類、そしてチップセットと呼ばれる様々な機器を制御するための補助的な集積回路の違いによって、実に多くの種類のものがある。今回のように、ケースやCPUをそのまま流用するのであれば、ケースやCPUの種類によって、自ずと代替可能なマザーボードの種類が決まるわけである。

 修理に出したパソコンの現物はまだ戻ってきていないが、メーカーのサポートに問い合わせてみたところ、使われているマザーボードは、MicroATXという小さめのケースに入れる規格のもので、Socket370というPentium3やCeleronというCPUを接続するタイプのマザーボードであることがわかった。

 元のマザーボードの型番からスペックを調べて、同等のスペックを持つマザーボードを探す。しかし、MicroATXでSocket370のボードというのは、実を言うと今となってはあまり多く出回っていない。2年ほど前には主流であったはずの規格であったSocket370も、今ではむしろマイナーになり、今ではPentium4を載せるSocket478のボードにその座を明け渡している。加えて、小型で拡張性に制限があるMicroATX用のボードは、ATX用のそれに比べるとどうしても種類が少ない。

 その上、メモリ搭載数やグラフィック・サウンド機能・コネクタの種類など、以前のボードと同等の性能を持つものとなると、選択肢は非常に限られる。手っ取り早く通販で同社の同型のボードを購入しようとも考えたが、今ではもう古い規格なのでメーカーの在庫くらいしか無いと言われる始末。自分で探して交換してやると意気込んだは良いが、電気店を10件近く回っても、実際には似たボードを見つけるだけでも難しく、厳しい現実に直面する。

 そんなマザーボード探しの旅にも疲れてきたある時、時間ができたので秋葉原のパーツショップなどを徘徊していると、通販ですら在庫取り寄せと言われた同型のボード(正確にはATA66がATA100対応になった同社の上位型のボード)が、バルク品として半値近い値段で投げ売りされていたのを発見した。もちろん速攻で購入である。レジで確認したら、ドライバCDが添付されていないので更に500円値引きしてくれるという。ポイント割引などもあって値段は約6000円。これで直るなら安いものである。うまく動くかどうか不安がないわけでもなかったが、ドライバやユーティリティ類についてはメーカーのサイトから一通りダウンロードすることができるし、何だかんだ言っても同型のボードだから何とかなるだろうという変な自信はあった。

 そうこうしているうちに、ようやく修理に出していたパソコンが戻ってきた。もちろん修理はされていない。見積料1890円と、2週間近い時間が無駄にはなったが、果たして6000円の投資で自分での修理に成功してパソコンが復活するか、それとも失敗してパソコンそのものが無駄になってしまうか、それはこれからの作業にかかっている(続く)。


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