#195 大丈夫かみずほ

2002/04/06

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 2002年4月1日、第一勧業銀行・富士銀行・日本興業銀行の3銀行が統合・再編され、個人と中小企業向け取引が中心の「みずほ銀行」と、大企業取引が中心の「みずほコーポレート銀行」として営業を開始した。

 思えばバブル崩壊後、大手都市銀行は軒並み統合・再編を行ってきた。1996年4月に三菱銀行と東京銀行が合併し東京三菱銀行になったのを皮切りに、2001年4月にさくら銀行(これも三井と太陽神戸が1990年に合併したものだ)と住友銀行が合併して三井住友銀行になり、更に2002年1月には三和銀行と東海銀行が合併し、UFJ銀行になっている。統合し巨大化することで、不良債権処理などで疲弊した銀行の体力を維持するというのが主な狙いであろう。

 しかし、多くの顧客を抱える大銀行の統合ともなると、様々な問題も出てくる。とりわけ、今や銀行経営の根幹を支えるオンラインシステムの統合ともなると、入念に準備をしていても、いざ統合するとなると様々な問題が発生するらしい。

 みずほグループの場合、スタート直後の1日朝から、ATMで他行のキャッシュカードで現金が引き出せないなどの問題が全国規模で発生。翌2日からは正常に機能を始めたものの、4日になって、口座振替サービスの一部に遅れが出ていることが判明。5日の段階で、少なくとも250万件の口座振替の遅れが生じているほか、一部では二重振込みや二重引き落としの事例も判明している。

 1月のUFJ発足の際も、口座振替サービスのトラブルが18万件あったそうだが、今回はそれをはるかに上回る規模である。あまりの酷さに、財務相からは「たるんでいる」と言われ、金融相も業務改善命令を出すことまで視野に入れているなど、厳しく対処する考えを明らかにしたという。

 塩爺財務相に「たるんでる」と言われるようではみずほも立つ瀬がないが、それはともかく、銀行のシステムは、不正の入る余地を排除する目的などから、その根幹は銀行内の機密事項とされている。その機密とされているシステムどうしの統合であるが故に、相互の情報交換が不十分になり、統合が効率的に行われなかった結果今回のような事態を招いたものであるとの見方もある。

 そもそもUFJの場合をはじめ、これまでは高々2銀行の合併であったから、システムの更新と言っても相手が一つなので問題はまだ比較的たやすかった。しかし一度に3銀行を統合するとなると、それぞれが他の2つとのシステムの整合性をとらなければならず、結果として問題の複雑さは、2つの場合に比べて(単純に考えても)3倍になる。

 加えて、この4月1日は月始めと週明けということが重なり、通常の3倍もの取引量が集中したために、余計にシステムに負担をかけたことが、障害を拡大させた原因であるとも言われている。以前に、移動体電話の番号を一斉に変更するのを1月1日にするのはいかがなものかと述べたことがあるが、今回はまさにそれが仇となったわけで、いくら切りがいい日だからといって、敢えてシステムの負荷が高くなりそうな時を選んでシステムの更新を行うなんてことは、エンジニアから見たら自殺行為だろう。

 想像するに、もちろん当のみずほ銀行のエンジニアたちも以上のようなことは重々わかっていたのだろうが、恐らく経営陣の「4月1日に移行する」という決定には逆らえなかったのだろう。その「決行日」まで必死の移行作業を行ったにも関わらず、テストが不十分なまま移行を行い、結果今回の事態を招いたのだとしたら、エンジニアの人たちには少なからず同情する部分もある。

 いずれにせよ今回の事件によってみずほグループの信用は少なからず落ちたとともに、日本の金融システムの脆弱さをも露見する結果となってしまった。願わくば、このような情けない事故によって、ただでさえ疲弊した日本の経済・金融状況がますます悪化することのないよう願うものである


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