#177 慣れない、電話

2001/08/07

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 どんな職種であれ、およそ電話のない職場というものはほとんどないものと思われるが、働いている者にとって、かかってくる電話というのは何とも煩わしいものである。こちらの方は会議中だったり、あるいは集中して書類を作っていたりしている最中であるにもかかわらず、そんなこちらの事情はお構いなしに着信音が鳴り出し、出ることを強制させられる。

 かける電話の方にしても、相手が留守だったりするなどして目的が果せない場合もあり、かけ直すにしろかけ直してもらうにしろ、或は伝言を依頼するにしろ、お互い余計な手間をかけることになってしまう。また会話が成立しても、音が小さかったり雑音が入ったりして、大事な内容を聞き違えたりすると、場合によってはとんでもないことになってしまう。

 その点メールなら相手の都合のいい時に読んでもらえるし、やりとりの内容も文字情報として残っているから、誤解の起きる心配があまりない。最近ではちょっとした資料にしても、パソコンのファイルになってしまえば、メールに添付して送ることができる。(かと言ってただのテキストをわざわざワープロの文書にして送るのもそれはそれで問題なのだが。)メールが普及して、会社間の連絡は本当に便利になったものだと思う。

 とはいえ、その場のやりとりで決定を行わなくてはならない場合は相手とリアルタイムで話をしなくてはならないから、電話の利用価値も依然として高いわけであるが、一般的に言えば電話というものはなるべくなら受けたくないものであろう。しかし会社によっては「呼出し3回以上は会社の恥」なんていう所もあると聞くので、電話での適切な応対は依然社会人のマナーの必須科目であろうかとは思う。

 ところで会社などの場合、受けた電話が他の人への電話であったりする場合などはしばしばある。その場合は、物理的に当事者を呼びつけて電話を代わって取ってもらうのも手段の一つであるが、電話がそれ一つしかない場合はともかく、離れたところにいる相手を電話を受けた自分のところまで呼びつけるのはあまりスマートなやりかたとは言えない。この場合、相手の近くにある電話に転送するのがスマートなのだが、この転送というものも電話の形態によっていろいろなやりかたがあり、慣れないとなかなかうまくいかないものである。

 私の職場が引っ越しをした話を前回したが、それに伴い電話のシステムも変わってしまった。いままでは課内の電話回線は一つしかなく、あとは内線が割り振られた電話がいくつかあるだけだったので、かかってきた電話はどの電話機でも取ることができた。電話機にはそれぞれ番号がついており、電話を転送する時には、保留を押した後「○○さん、2番に電話が入ってます」とかいう具合に回すことができた。要するにあまり頭を使わずに電話の転送ができたのである。

 それが引っ越した後、ダイヤルインで個別番号のついた電話がいくつか設置されたほか、内線用のPHSが全員に支給された。電話の転送は、保留にしたあと、相手のPHSもしくは近くの固定電話の内線番号を回し、相手に取ってもらったことを確認したあと、電話を取り次ぐという形になった。依然のようにダイレクトに相手を呼ぶよりはスマートなのかも知れないが、その分手間が2つほど増えてしまったわけである。もちろん電話を回すためには相手の内線番号を知らないといけないし、しかも固定電話とPHSではそれぞれ操作が違うため、慣れないうちはうっかり操作を間違えて、相手の電話を知らずに切ってしまうということも度々起きている。

 ちなみにPHSは、とりあえず職場内であればどこでも通じるので、本人が常に携帯して職場内にいる限りにおいては、席を離れていても電話を回すことができるのだが、まだみんなそういう習慣が身についていないせいか、あるいは単に所構わず呼出されるのが嫌なのか、折角本人に転送しても、たいていは主人に置いていかれた電話が主人の机の上で空しく鳴っているだけだったりする。ダイヤルインになって回線数は増えたわけだし、うまく使えば前よりスマートなはずなのだが、皆が使いこなすようになるまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。

 というわけで、最近私の職場への電話が予告無く切れてしまうのは、そういう事情だったのです。どうかあらかじめご了承下さい。って、こんなところで謝っても仕方ないか。


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