#178 コンセントはどこだ

2001/08/28

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 仕事の関係上、外部から人を呼んで会議を開くことがある。もちろん当事者間で適当に都合を合わせ、場所を適当に確保し、当日は適当に資料を持ち寄って、1時間ほど打合せておしまい、という気軽な会議も多いのだが、中には開催するのにあらかじめ役職が3つくらい上の人の了承をもらって行うような、偉い人の集まる改まった会議もある。

 偉い人ばかりが集る会議であるから、日程調整も周到にやらねばならない。メールを送ったりFAXを出したりして、いついつまでにご都合をお知らせ下さい、などとやるわけだけど、最後にはやっぱり一人一人電話で確認を取らなくてはならない。しかし、普段忙しいお歴々のすべての都合を合わせることはなかなか至難の技で、一人でも都合の悪い日を除外して行くと、たちまち開催可能日は限定されてくる。ついには全員が出席できる日時はなくなってしまい、そうなると申し訳ないと思いながらもどなたか一人二人程度は、日程の都合が合わず申し訳ありません、ということになる。

 なんとか日程を決定したら、今度は会議室の予約である。以前は会議室の予約はグループウェアで早いもの勝ちでできたのだが、今回はたまたま職場の引っ越しも重なってシステムが止まってしまうこともあり、担当の係に申込書を出した上に抽選を行うなどという前近代的な方法に戻ってしまった。

 それでもなんとか会議室を確保し、あとは前日までに資料を用意しなくてはならない。総ページ数100ページ以上もある分厚い資料を人数分作成する。性能のいいコピー機があるのでそう時間はかからないけど、さすがに使う紙の量が半端ではないので、両面コピーにするなどの工夫は必要である。その他、OHPやスクリーンや会議中の飲物の予約、席札の準備など、やるべきことはたくさんある。

 そんなこんなで、会議当日を迎える。会議開始1時間前までに予約していた会議室を開き、手すきの同僚を一人呼んで、会議室のセッティングを開始する。席を整え、席札を配置し、用意した資料をセット。準備は滞りなく行われそうな様子であった、が

「スクリーンはこの辺に置けば見やすいでしょう」
「そうだな。あとはOHPをセットして、えーとそっちの角にコンセントある?」
「ないみたいですね。そっちの角は?」
「あれ、こっちにもないぞ」
「コンセントの数が少ないですね。不便な部屋ですねー」
「仕方がないな。じゃああっちの角に置くか」
「そうしますか。…あれ?」
「どうした」
「ない、どこにもないですよコンセント
「そんな馬鹿な」

 ないのである。普通なら壁の角に一つ二つはあるはずのコンセントが。ガス栓、電話のモジュラジャック、TVアンテナ、果ては10base-Tの挿し込み口まであるのに、AC100Vのコンセントがこの部屋にはないのである。

「どうしてないんでしょう」
「知るわけないだろ」
「電気使わないんでしょうか、この部屋」
「TVのアンテナ口まであるのに、そんなわけあるか
「じゃあ一体どこに…」
「…待てよ?」
「…もしかしたら、ここにあるんじゃ」

 二人で床の絨毯を見る。そう、このオフィスは床下がフリースペースになっていて、そこにAC100V線やネットワークケーブルを這わせる構造なのである。そのため不要なコンセントは床下に格納されているのである。よく考えたら自分の課の部屋もそういう構造で、ところどころAC100Vのコンセントやネットワークケーブルが生えていた。しかしこの会議室には絨毯の上に引出されたコンセントが一つもない。

「どうすんだよ。あと20分で会議だぞ」
「そんなこと言ったって」
「絨毯はがせないか」
だめです。道具がないと」
「悔しいなあ、床下にはいっぱいあるはずなのに」
「困りましたね」
「くそう、本当にどこかにないのか、コンセント」

 会議の準備は周到に進めてきたつもりだった私も、まさか部屋にコンセントがないという状況は全く予想だにしていなかった。あせりまくる二人。結局10分後、配電盤を開けたところの隅に、非常用と思われるコンセントを発見。なんとか事なきを得たものの、早目に来た出席者の方々に準備の遅れを露呈する結果となり、えらく恐縮してしまった。

 本日の教訓。どこにでも あると思うな コンセント。


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