#161 どこを選ぶかマイライン

2001/03/31

<前目次次>


 年が明けてから、やたらと電話会社の広告が目立つようになったり、時には電話会社から直接電話をもらったりする機会が多くなった。曰く「マイラインは○○」というキャッチフレーズである。

 あれだけ騒がれているから大方の人はご存知かと思うが、念の為にマイラインとは何なのか説明すると、一言で言えば「自分の使いたい電話会社を自動的に選択するシステム」のことである。今年(2001年)の1月から申込み受付を開始し、実際のサービスは5月からスタートする。サービス施行開始の今年に関しては、10月までは登録は無料である。(それ以降は800円の登録・変更手数料がかかる。)

 かつての日本の電話事業は、電電公社が独占して行っていた。それがNTTとなって民営化されてのち、NTT以外にも長距離電話をターゲットにサービスを提供する会社が現われはじめた。これらの会社は加入料や基本料金は無料で、概してNTTよりも安い通話料によるサービスを提供していた。ただしこれらの会社の回線を利用する際は、通常局番の前に会社を識別する4桁の番号を入れる必要があった。

 同じサービスを受けられるのであれば少しでも安い方がいいに決まっているわけであるから、これら加入料が無料の電話会社に加入し、適宜これらの会社のサービスを選択すれば、より安く電話がかけられることになる。言わば電話にも「選択の余地」ができたわけである。しかし、これら新しい会社の通話料は、距離や時間帯によって料金が微妙に異なるため、使う側にとってはどの会社を選択するのが一番安いのかを判断するのが非常に煩雑であったし、またいちいち4桁の会社選択番号を入れるのも煩わしかった。そこで会社選択番号を入力しなくても、自動的に通話料が最安の回線を選択してくれるハード的な仕組みができた。これがLCR(のちにACRへと進化する)というシステムである。ただし当然ながら、LCRやACRのサービスを受けるためには、それらに対応した電話機を求める必要があった。

 やがてNTTも分割によって長距離区分と短距離区分の会社に分かれ、後者に関してもNTTに対抗する勢力が現われ始め、今ではどの距離区分でも複数の会社が参入する競争状態に入るようになった。しかしNTT以外の会社を選択するのにいちいち4桁の会社選択番号を入れるのは公正な競争のためにならない。LCRやACRも、先に述べた各種サービスなどを考えると必ずしも最低額のサービスを選択できなくなってしまった。

 こういう事情から、2001年5月より、市内通話・県内市外通話・県外通話・国際通話の4区分について、それぞれ特定の電話会社を選ぶと、会社選択番号を入れなくても指定した電話会社を選択できるようにしたソフト的な仕組みが実施される運びとなった。これがマイラインと言われるものである。

 各電話会社が大々的に宣伝しているおかげで、マイラインそのものについてはだいたい認知はされてきたようであるが、2月現在マイラインを申込んでいるのは全体の1割にも満たないそうだ。残りの9割は、関心がないのか、様子見なのか知らないが、まだマイラインを申込んでいないということである。ちなみに、積極的にマイラインの申込をしなかった場合は「今までと同様」ということで、市内通話・県内市外通話については東西NTT、県外通話についてはNTTコミュニケーションズが選択されることになる。

 マイラインについても2種類あり、指定した会社に関しては会社式別番号を入れる必要がないが、他の会社式別番号を入れることによって他社による通話も選択できる「マイライン」と、選択した会社以外は原則的に選択できなくなる「マイラインプラス」というものがある(マイラインプラスの場合も、冒頭に解除番号122を入れれば、他社の通話を選択することができる)。マイラインよりマイラインプラスの方が拘束条件が強いわけだが、マイラインプラスを選択することによってよりよい割引サービスを提供する会社もあり、熾烈な囲い込み競争が展開されている。

 そういったマイライン競争の中で、消費者たる我々はどのような選択をするべきなのであろう。次回は関東圏の例を取って、具体的にどのような選択をするのがよさそうかを考えてみることにする。

 でもこれを書いた3月31日までに登録しないと、5月1日からのサービス施行に間に合わないので、お急ぎの方はお先にどうぞ。


<前目次次>