#157 掘り出し物のメルパレット

2001/03/01

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 先日、芝居の小道具を探しにパソコンやAV関係の中古品を扱っている店へ行った。芝居で使う小道具は、なるべく本物を用意したいところであるが、予算も限られているので新規に買うにはちょっと懐具合が苦しいし、実際に誰かが今使っているものを使うのも、劇中のアクシデントにより破損しかねないので憚られる。だが、芝居であるから実際に機能しないものでもそれを使っているつもりの演技ができれば構わない。ということで、身近に適当なものがないときにはよくこういった店で動作保障のない中古品(ジャンク品)を探して購入するのである。

 例えば、携帯電話などは今や毎月のように新製品が出ている状態なので、店頭ディスプレイ用の模造品ならば100円とかで売っている。その他動作保障のないものなら、電話1000円とかラジカセが2000円とかワープロが3000円とか、そんな破格の安さで売っている。動作保障がないのだから当然と言えば当然かも知れないが。

 今回は小型のパソコンもしくは携帯端末を探していた。携帯端末を駆使して敵のコンピュータをハックしたり時限爆弾を爆発させたりするという役と設定があるのだ。嵩ばらないよう、できれば片手で持てるノート型以下の大きさのものがいい。とは言えさすがにノートパソコンのジャンク品は5000円以上するし、舞台で使うにはちょっと嵩ばる。いいものはないかと探していると、パームトップのメール送受信端末が2500円で売っているのを見つけた。

 見つけたのは「メルパレット」というメール送受信端末である。機器に付属しているケーブルと携帯電話と繋ぐことで、メールの送受信が行えるというものだ。大きさは幅15cm程度で、QWERTY配列のキーボードもついている。知っての通り、IDOは今やKDDやDDIと合併してKDDIとなり、携帯電話事業はAUという会社がやるようになっているが、そのIDOが販売していたメール送受信用の端末である。大きさが手の平に乗る程度で持ちやすく、外観もこれを使う役のキャラクターにあっているということで、迷わずこれを購入した。

 パッケージにはご丁寧にマニュアルまで添付されていたが、動作の確認はなされていないとのこと。単3もしくは単4電池で動作するものらしい。もちろん芝居で使うものなので、動くかどうかは全くどうでもいいことなのだが、触っていた私は、当然の疑問と欲求が頭をもたげてきた。「これ、まだ使えるんじゃないか?

 早速私の携帯端末用の予備充電池を入れてみる。とりあえず電源は入るみたいだ。主な機能はメールの送受信であるが、そのほか電卓やスケジューラ、それに飲み屋の支払などを傾斜配分するための「せいさん君」なる割り勘電卓もついており、オフラインで動くこれらの機能は問題なく使えることがわかった。これだけでも結構便利なので掘り出し物である。

 更に、通信機能の設定を見てみる。これらの機械は特定のプロバイダへの加入を前提とした商品なのかと最初思っていたが、メニューを探すと、汎用的なプロバイダ設定ができるようになっていた。試しに自分の使っているプロバイダの番号やアカウント、POPサーバ、SMTPサーバ、DNSサーバなどの設定を入れてみる。

 メンバーの一人がIDOの携帯電話を持っていたので、それを拝借してケーブルに繋いで接続してみると、なんと、受信メールがダウンロードされてきた。まだちゃんと動くではないか。ジャンク品だから動かなくてもともとと思って買ったものであったが、これは儲け物である。更に、私の持っているDoCoMoの携帯電話もコネクタに繋がり、接続したらやはりちゃんとメールを受信した。結構汎用的にできているではないか。

 この種の商品の優れているところは、ケーブルを携帯電話に繋げば、あとはボタン一つで送受信ができるというその簡便さである。もちろん私の愛用しているHP200LXでもメールの送受信はできるが、カードを入れ替え、ケーブルをLXとカードの双方に接続し、コマンドを打込んでやるという手間がかかるため、初心者向けでないことは確かだ。もちろん、メール送受信以外の機能は知れたものだが、簡便に使えるという魅力は大きい。またi-modeだけの携帯単独でのメール送受信機能を持つ携帯電話では、文章を親指だけで打つのが結構大変だが、メール端末なら多少の長文のやりとりもさほど苦にならない。

 ということで、芝居が終わったらゴミ同然となるはずだったこのメール端末は、どのキャリアでも動作することが証明されたため、今や芝居が終わった後にこれを自分のものにしようと虎視眈眈と狙っている輩がいっぱいいるという次第である。


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