#154 欧州紀行雑感(後編)

2001/02/07

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 アムステルダムからバスで移動し、ハーグ、ブリュッセルと回ってきた6泊8日の美術館巡りパックツアーも、5日目、いよいよ最終目的地パリに到着。

 フランスのパリでは、言わずもがな、世界最大の美術館であるルーブル美術館を訪れる。が、何しろ所蔵点数35万、廊下の総延長20kmという、これまで見た美術館も確かに大きかったがそれをはるかに凌ぐ大きさ。中にはショッピングモールまであったりして、とても美術館とは思えない規模と雰囲気である。ダ・ビンチのモナリザ、ミロのヴィーナスなど、誰でも知っている有名な作品が所蔵されているわけだが、これだけ大きく、見どころもいっぱいある美術館なのにたった1時間しか見学時間がないのだから、慌ただしいことこの上ない。自由時間中一部屋1分以内というハイペースで回っても全体の1割程度しか回れず、戻った時には足がふらふらになっていた。

 パリは他にもエッフェル塔やら凱旋門やら名所は多いのだが、面白かったのはパリのコンコルド広場にあった観覧車。一昨年のミレニアム直前に建てられたものだが、そこそこ人気があるらしく、ミレニアムのお祭が終わった現在も残っている。夜はライトアップして、かなり夜遅くまで動いている。係員は陽気なお兄さんで、我々が日本人と知るや「おっはー」などと挨拶していた。どこで憶えたそんな言葉。

 この観覧車、日本のそれと違い、乗降時には回転を止め、一旦動き出すと結構なスピードで回る。それほど大きくないものとは言え、1分もすれば1周してしまうようだった。例えて言えば、メリーゴーランドを縦にしたようなもので、景色を落ち着いて観るにはちょっと不向き。そのかわり3周くらいは観覧させてくれる。最後に観覧車から降りてきたところで写真を撮っており、欲しい人には30フラン(約480円)でプリントしてくれる。日本のアミューズメントパークのアトラクションにもよくある奴だが、日本のそれとは違い、50フラン(約800円)だとプリントとともにJpeg画像を入れたフロッピーがついてくる。出来が良ければデスクトップの壁紙にでもどうぞということか。妻は記念にプリントの方だけ買っていた。

 欧州の街では、携帯電話はそこそこ普及しているものの、まだ日本ほどではない。また、今や日本では携帯電話と耳にあてる人より、正対してメールやWebを閲覧している人が目立つが、欧州ではまだそんなことはなかった。使い方にしても、若者が公共の場所で大声で話す風でもなく、マナーの悪い事例はほとんど見当たらなかった。日本と同様着メロすなわち着信メロディなども鳴っていたが、バリエーションはクラシックとかCMソングとか、誰でも知っている定番的なものが多かったようだ。もっとも私が聞いて分からないものは耳に残っていないだけかも知れないが。

 あちらではクレジットカードはレストランでも土産屋でも、はたまた街のスーパーでも、ほとんどの場所で使える。更にパリの街では、ほとんどの支払がデビットカードでできるようになっている。日本でも徐々に使われはじめているが、パリの街ではメトロの切符までデビットカードで買えるらしく、本当に便利である。スリが多いなど、街中で現金を持ち歩くのが不用心なせいもあるのかも知れないけど、あちらの社会はすっかりキャッシュレス社会である。

 建物などの街並みの様子は古そうでも、社会のシステムは近代的という欧州の街は、見ていてとてもスマートである。また桁違い所蔵作品数を誇る美術館は、どこも入館料数百円程度で入れる上、フラッシュさえ焚かなければ写真撮影も可で、あちこちで美術学校の学生とおぼしき人が一生懸命模写に励んでいる。文化的な教育環境の彼我の差は天と地ほどもあると思ってしまう。駆け足だったため美術品の多くをゆっくり観賞できなかったのは残念だったが、そんな欧州の雰囲気を感じることができただけでも、有意義な旅行であった。

 翻って、果たして外国人観光客が東京に来た時に見るものって何だろう、などと成田空港で帰りのバスを待つ間テレビでも見ながらぼんやり考えていると、秋葉原の街を紹介する英語の放送が流れてきた。うーむ、やっぱり外国から見た日本の名物は「フジヤマ、ゲイシャ、アキハバラ」なのかしら。


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