#146 世紀末年賀状事情

2000/12/05

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 早いもので、20世紀最後の年である今年も12月に入ってしまった。そして12月と言えば年賀状の季節である。

 郵政省によれば、今年のお年玉くじ付き年賀状発行枚数は計画当初で合計41億9600万枚と、昨年比1.3%の減。昨年売れ行き好調だったインクジェット紙葉書は、今年は発行枚数を昨年の約5倍に増やしたにもかかわらずそれでも売切れ局続出で、追加発行する破目に陥ったという御粗末さ加減である。

 裏を返せば、それだけ自宅のパソコンとインクジェットプリンタを使って年賀状を印刷して作る人が急増してきたということであろう。パソコンショップの売場などでも、11月の後半になると、年賀状ソフトと呼ばれるジャンルのソフトが店の一番目立つところに平積みにされて売られている。

 こういったジャンルのソフトももうここ5〜6年くらい毎年のようにバージョンアップを続け、もうすでに完成された感があり、どれを選んでも大差ない気もする。主な機能としては、年賀状の裏面のデザイン作成を支援するクリップアート集・表面の宛て名を連続印刷するための住所録作成管理機能、といったところか。最近では、NTTの電話帳に登録された全4000万件の個人データを収録し、宛先の電話番号を入れるだけで、その人の住所や氏名まで入力してくれる機能まであるそうで、こうなると便利と言うよりも自分の個人情報が全国にばらまかれているようで気持ちが悪くなってくる。故に私は、自宅の電話番号は電話帳には掲載していない。

 しかしこういったソフト、果たして毎年買う必要があるのだろうか。年賀状を何枚出すかは人にもよりけりだろうが、まあ100枚出すものとして、官製葉書代もしくは郵送代が5000円。一方この手のソフトも5000円前後はするだろう。そうすると、このソフトを毎年買う人は、葉書代と同じくらいの投資を毎年しているということになる。

 考えてみれば、インクジェットプリンタにしても安くて2万円くらいはするものだが、毎年年賀状の用にしか使わないのであれば、4年使っても年あたり5000円。実際にはインクなどの消耗品代もかかるわけだから、元を取るには随分と長く大事に使わなくてはならない。年に一度年賀状の季節に思い出したように使おうとしたら、久しぶりに動かすものだからインク詰まりが起きていて、仕方がないから修理に出そうとしても修理代がばかにならず、一方フチなし印刷可能な高解像度の新型プリンタも出たから、いっそ思いきって買い替えよう、なんてことを毎年やっているようでは、とっても単価の高い年賀状を毎年作っているということになる。それなら写真屋や印刷屋に作ってもらう方がまだ割安である。

 そうは言いながら恐らく私は昨年同様今年もパソコンで年賀状を作るクチであろう。1年半前に買った初代プリンタは相変らず調子よく動くし、素材はまた何か自分で写したデジカメの画像もしくは写真をスキャナで取り込んだものを使うだろう。昨年は「ミレニアム」(厳密には違うのだろうけど)なんて言葉が踊ったように、今年は「新世紀」「New Century」なんて言葉が踊ることは今から目に見えているので、敢えて「平成十三年」を使うのもかえって新鮮かも知れない。「皇紀弐千六百六拾壱年」なんて使うと更に新鮮だが、そういう思想の持ち主だと思われることに抵抗がある人は、やめておいた方がいいだろう。

 アイデアは色々考えているのだが、それを具体化する作業はせいぜい1時間もあれば終わる。裏面の印刷は100枚で3時間程度かな。問題は宛て名面、すなわち誰に出すかだが、毎年こっちから送りはしても、返事を寄越さないか、あるいはあきらかにこっちから出した賀状の返事というタイミングで出してくる輩は、今年こそは少し整理しようかなんて考えたりもする。それでも年に一度だし、50円で人の縁が保てるのなら安いもんだと思って結局出し続けていたりするのだけど。

 ちなみに今年も、早目に出した年賀状には「2001年」の記念押印を押してくれるのだそうだ。私の家の近くの郵便局では、加えて毎年粗品進呈のキャンペーンをやっているらしい。去年は出勤前に年賀状を出しに行ったら大根を進呈してくれた。こんなものを出勤前にもらってしまうと、どうにも処置に困るので、どうせ進呈してくれるなら、今年はもう少し扱いに困らないささやかな粗品にしてもらいたいものである。


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