#127 顧客名簿管理の今昔

2000/07/26

<前目次次>


 今回も劇団の話から。

 劇団の制作というのは、公演の企画段階から打ちあげまでの間に、雑用的な仕事がわんさとあるわけだが、その一つに顧客名簿の管理というものがある。

 どこの劇団でも大抵そうしていると思うのだが、うちの劇団では公演のたびにお客様にアンケートというものを書いてもらっている。アンケートでは、公演の感想の他に、差し支えなければお客様のご住所やご氏名をいただいている。そういったものをいただいたお客様には、次の公演などの折に公演の案内などを郵送でお送りさせていただいている。所謂ダイレクトメール(以下DM)というものだ。毎回足を運んで下さるお客様は、劇団にとっては大変ありがたい存在であり、そのため劇団の顧客名簿は劇団にとっての一番の財産であると言える。

 私が劇団に入る以前は、こういった顧客名簿は紙の形で保存し、DMを出す折にはこれをコピーして分割し、封筒に貼りつけてそのまま送付していたらしい。これはこれで合理的なやり方であるが、公演を重ね顧客ののべ人数が増えてくると、同じ人を二重に登録してしまったり、逆に消息不明の方が出てきたりして、次第にぐちゃぐちゃになってくる。

 私が制作を担当するようになってからは、これらのデータを電子化して管理することにした。当時はまだ実家のワープロしかなかったので、ワープロの住所録機能を利用して顧客データベースを作り始めたのである。

 ワープロの住所録機能の場合、氏名や住所や郵便番号といった基本的なことはもちろん記録できるが、例えばその人がどの公演に来たのか、といったような特殊な項目は用意されていないので、これらを記録するには備考欄に頼らざるを得ない。例えば、あるお客様が8回の公演の公演のうち、3,5,6,7,8回目の公演に来場しているということを備考欄に記録する場合は以下のようにする。公演番号と2進数の桁を対応させ、来場している回(桁)のビットを立てた2進数で表すと11,110,100になる。このままだと桁が多いので、これを8進数に変換して364というように記録する(2進数を3桁づつに区切ると簡単に8進数に変換できる)。改めて考えてみると、ほとんど作った本人にしかわからないデータである。

 パソコンを購入してからは、当然データベースの方もパソコンに移行した。パソコンにデータを移行したことで、以前よりもはるかに柔軟にデータの加工処理ができるようになった。ただしデータベースソフトなどという小賢しいものは使っていない。大元のデータはテキストファイルで保存してある。理由は以前にもしつこく書いた通りである。

 今回もまた、公演前にDMを発送する時期が近づいてきた。DM発送用にタックシール(宛先住所氏名などを書いた紙)を印刷する手順は以下の通りである。まず、事前に顧客名簿を劇団員に回覧し、住所の変更などがある方のデータについては修正を入れてもらう。また、7桁郵便番号に誤りがないかどうかを、電子化した最新の郵便番号簿を元にチェックする。そして、DMを送付する顧客を抽出し通し番号付の名簿を出力するとともに、タックシールの印刷を行う。

 データの抽出処理などは自作のスクリプトを使ってやらせている。一方、タックシールの印刷はこれまで適当なソフトがなかったので、仕方なくMS-Wordを使っていたが、MS-Wordの「差込み印刷ヘルパー」は、手順が面倒な割には細かい融通が効かない。今回ラベル販売会社のサイトから宛て名ラベル印刷ソフトを見つけてきたので、それを使うことにしてみた。一度に256件しか読み込めないので、何回かに分けて印刷を行う必要があるが、MS-Wordに比べて、フォーマット作成や印刷の際に木目細かい指定ができて、大変便利である。

 最近ではアンケートにメールアドレスも書いてもらうようにしており、アドレスをいただけた方には、郵送のDMのほかにメールマガジンのようなものを送付させていただいている。劇団の制作としては、あれやこれやの手段を通じて、自分たちの公演を一人でも多くの方に見に来ていただけるよう、日々地味な努力を続けているのである。


<前目次次>