#122 紙の手帳は使わない

2000/06/15

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 気がつけばここ数年、紙の手帳を持たなくなってしまった。

 およそ市販されている紙の手帳には、必ず予定表と住所録とメモ用紙がついている。これらは、個人情報管理(Personal Information Management/PIM)の三大要素と言っていいだろう。大雑把に言えば、市販されている紙の手帳はこの三つの個人情報をきちんと管理する目的で作られていると考えられる。

 紙の手帳が煩わしいのは、手帳が古くなると更新しなくてはならないことだ。大抵の手帳は1年たったら新しいものにしなくてはならない。それでも予定表などはその切換えの時期にどちらの方を使うか戸惑う程度だが、住所録などをまた一から書き直すのは相当な手間である。そのため手帳の中には、住所録の部分だけ取り外しができ、同じ種類の手帳であれば続けて使うことができるようになっているものもある。だがそれらも長く使い続けるうちに、追加や訂正などが増えて徐々に見づらいものになっていく。また件数が多くなれば、五十音順やジャンル別に整理するなどの工夫をしていないと、検索するのも大変である。

 ともかくこれは、紙という物理的な媒体にデータを記録して行く上での限界であるとも言える。もしこれらの情報を、物理的な媒体から切り離して情報のみで管理できるようになれば、もっと便利なものになるはずだ。

 というわけで私は自分のパソコンを持ちはじめてから、これらの情報は徐々に紙ではなくパソコン上のファイルに記録するようになった。と言っても、たかだかこれらの情報を管理するのにSchedule+だのOutlookだのといった大げさなソフトは使わない。これらのソフトが使えない環境だと参照すらできないようでは、かえって不便であるからだ。ということで私の予定表や住所録は、ただ単にテキストで箇条書きにしているだけのものである。テキストファイルであれば、どのような環境でも編集や参照が容易であるからだ。

 例えば予定表は、こんな具合に書く。

 2000/06/09 13:00 会議 @第1会議室 -14:00
 2000/06/25 ***** 学会 /4 @京都

 先頭には日付と時刻(特に時刻の指定がない予定は*****で表す)と内容を、あとは場所を@〜で、終了時刻を-〜で、同じ予定が複数日続く場合は/?で日数を表すなどの付加情報をつける。この形式はそのままいくつかのフリーソフトで再利用可能になっている。例えばikisakiというスクリーンセイバーでは、直近の予定を書いたボードを画面に表示してくれる。またTODAYというソフトは、パソコンの起動時などに直近の予定を表示してくれる。両方とも非常に重宝し愛用させていただいている。もっともこれらはDOSのフリーソフトなので、多くの人にはもう参考にならないだろうが。

 また住所録の方も、読みがな・氏名・生年月日・血液型・電話番号・住所から年賀状を出す出さないなどのフラグに至るまで、約20種類の項目順に1データ1行で書いたCSVファイルで保存している。項目が列挙しているだけでは中身が分かりにくいので、条件に符合した内容を整形表示してくれるツールをAWKで作っている。例えば「中野区」という条件を引数にすれば、中野区在住の人の(正確には中野区という文字列が含まれている)データが整形された形で表示される。

 そしてこれらのデータを手帳のように屋外で参照・編集するのには、私の愛用する携帯端末HP200LX(以下LX)を使っている。LXはDOS互換パソコンという面を持つ一方、優秀なスケジューラ(appointment)や住所録(phone)やメモ帳(memo)などといったPIMソフトが標準添付されている。テキスト形式のデータとこれらのPIMソフト用のフォーマットとを互いに変換するフリーソフトもあるので、パソコン上にテキストで記録している最新の予定表や住所録をこれらLX上のPIMソフト用に変換し利用することが可能になっている。

 LXは、ボタン一つで立ち上がるこれらのPIMソフトと本体のすぐれたレジューム機能のおかげで、手帳に勝るとも劣らない軽快な操作が可能であることに加え、項目などを自分の好きなように編集できる柔軟なデータベースエンジンを持っている。更に条件検索なども素速くできるし、スケジューラであれば、予定の時間が来たらアラームで知らせてくれるなど、紙の手帳をはるかに凌ぐ能力を持っている。

 かくして、予定表や住所録については携帯端末を利用し便利に活用しているのだが、メモ帳としての用途となると、入力の自由度や速度という点で紙の手帳に勝るものはない。私など逆に紙の手帳を使っていないものだから、ふとした覚書きをその辺の紙に書いてしまって、あとでなくしてしまう場面が多々ある。何でもかんでも携帯端末に任せると言うのも問題ありと言うことかも知れない。逆にこのあたりをバランスよく使いこなせば、個人情報管理のエキスパートと言えるようになるだろう。誰に言うのだ。


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