#119 チャットルームを開設

2000/05/26

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 先日私の劇団の会議があり、その中で私が管理している劇団のページのことにも話が及んだ。その際に、もっと色々な人が気軽に参加できるようなものが欲しいということから、チャットルームを開設しては、という意見が出てきたので、早速つけてみた次第である。

 チャットルームを開設するのは、そんなに面倒なことではない。プロバイダ提供の出来合いのCGIを使えば、基本的な環境設定を加えるだけで、あっと言う間に自分のチャットルームができてしまう。あとはそれを自分のページからリンクしてやるようにすればいいだけだ。

 好きな時に書込んで好きな時に参照し返信しておけばいい掲示板と違い、チャットの場合は同じ時に2人以上が入室していなくてはならない。とりあえず設置して、その旨を劇団員などに紹介してはみたが、最初の内は、おのおのが適当に都合のいい時間に現れては、結局他に誰も居なくて、メッセージを残してすごすごと帰ると言うことを繰り返していた。これではただの独り言ボードである。

 そうこうしているうち、ようやく同じ時間に2人が集り、初めて会話が成立した。片方は私だったのだが、目の前にいない人間と筆談が出来るというのはなかなか新鮮な驚きである。まあ結局は、こっちの天気はどうだとか、お昼に何を食べただとか、他愛のない話で終わってしまったのだが。

 しかしこんな具合に漠然と好きな時におのおのやってくるというのでは、他の人と出会う確率は低いので、とりあえず週に2回、例えば月曜と金曜の23時というように時間を決めて集るようにしましょう、と半ば勝手にルールを作ってみた。そうやって初めて、今度はようやく3人が同じ時間に集ることができた。

 ところで考えてみればわかることだが、普通会話は2人でやるものである。2人でペアを作る組合せの数は1通りしかないのに対し、3人の場合は3通りになってしまう。従って、慣れない3人が遭遇すると、一気に複数の会話が同時進行しはじめ、わけがわからなくなるという状態が生じる。

 日本語の場合特にそうだが、会話の場合は自明な部分を省略して話すことが多い。チャットのように、往々にして複数の会話が平行してしまう場合、普通の会話のように「わかった」とか「それは困ったね」とか書いてしまうと、それが何に対しての返事なのだかわからなくなってしまう。あるいは面と向かって行う会話の場合には、返事をする相手の方を向いたりすることによって、誰に対する返事なのかが明らかになることも多いのだが、顔の見えないところでやっているチャットでは、そういった情報が一切不明である。

 こういった会話の交錯を避けるために、つまり誰に対する(何の話題に対する)返事なのかを明らかにするために、チャットでは ">" とか "<" といった記号を使うことが多い。例えば返事する相手を明らかにするために「そうですね(^_^)>Aさん」と言ったように使ったり、あるいは話題を指して「うわー、また出たー<ひよこ」といった具合に使う。前者は、返事をする相手に対して、後者は話題にしているものに対して使う。

 これらの記号は、UNIX発祥のフィルタ系コマンドのリダイレクト機能に由来しているようだ。フィルタ系コマンドでは、入力元や出力先をファイルなどのデバイスに切換える時に"<"や">"を使う。その類推から">"の後ろには出力先(=相手)、"<"の後ろには入力元(=話題)が入るというわけだ。

 ちなみに参加者は、誰の発言か分かりやすいように、いくつかの選択肢の中から自分の「色」を決めることができる。自分の書いた発言は、自分の指定した色で表示されると言った具合である。新たな参加者は、まだ他人に使われていない色を選択すれば、誰が発言しているのかも一目瞭然になる。

 とりあえず話し手が以上述べたような方法で工夫すれば、ある程度は会話が整理されるのだが、それでも人数が段々と増えてくると、どうしても話が分散し混乱していく。つい先日は6人が同時に入ってきたことがあった。これだけ人数がいると、ほおっておけば別の人によってどんどん話が進み、返事をしようとしたらもう別の話題に移ってしまったりということもしばしば起きる。普通の会話では声の大きい人が往々にして主導権を握るものだが、チャットの場合、キータッチの早い人が会話の主導権を握っていくというのも面白い。

 このチャットはそれほど能力があるわけではないので、6人くらいでやると、処理が追いつかなくなるせいか、環境によっては「ページが見つかりません」などのエラーが出てくることがある。ちなみにこの時に代替ページになぜか「ひよこ」の絵が描かれているので、「うわー、また出たー<ひよこ」となるわけである。最初のうちは何のことだかわからなくて、チャット参加者全員で首を捻ったものだ。

 色々な人が気軽に、と思って始めたチャットではあるが、今の所はやはり劇団員とその周辺くらいの人間が参加しているといった具合である。まあ楽しいからいいのだけど、家からチャットに参加する場合、一度のチャットに何時間も時間をかけていると、電話代や通信代が心配だ。成る程。こうしてネットワークのトラフィックはますます上がり、NTTはますます儲かっていくというわけか。


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