#097 2000年問題対策大詰め(後編)

1999/12/28

<前目次次>


 パソコンの場合「もう一つの2000年問題」と言われていることがある、2000年の直前直後に発症するコンピュータウィルスなどの悪意のプログラムが最近とみに流行しているのだ。ことにWordやExcelやPowerPointやInternetExplorerやOutlookなど、Microsoft製品をターゲットにしたワームやウィルスが多く出回っており、中には2000年になったらHDDの中身をすべて消去するような凶悪なものまである。

 これらの被害を未然に防ぐ方法の一つとしてワクチンソフトの導入があるが、ウィルスはそれこそ毎日のように新種が発生し、その度にワクチンソフトも更新されているので、こまめにワクチンソフトのデータを更新しなくては意味がない。しかし現実にはこまめに更新をしている人はあまりいないようである。またできれば、それらのウィルスのために大事なデータが消失してしまうという万一の場合に備えて、必要なデータのバックアップを取っておくことが望ましいだろう。

 コンピュータもワークステーションくらいのものになると問題は更に複雑になる。最近はUNIXなどのOSもどんどん規模が大きくなり、細かい不具合がOSリリース後に見つかることも多い。大抵は、不具合が見つかる度にそれらを修正するパッチ(継ぎあて)プログラムが公開され、それをあてて対応することになっている。2000年問題に関するパッチも当然たくさんあるのだが、これらを実際にあてるには、すべてのジョブを止めてネットワークから切り離して立上げ直し、といったことをしなくてはならない。通常ノンストップで業務に使っているWSに対してそのようなことをするのは結構準備と手間のかかることである。2000年問題の対応の難しさと煩わしさはここにもある。

 日々の生活にかかわる電気やガスや水道などのライフライン、通信や物流や医療関係については、自分だけの努力でどうにかなるものでもないので、それぞれの機関での対策とその情報を信頼するしかない。とはいえ、全体的に見ればそう大層なことにはならないのではないかというのが大方の予想のようである。各機関でも一通りの対策を終え、2000年問題が万一起きた場合の訓練などを行ったとのことだ。いずれにせよ今回の2000年問題は、2000年問題に限らず普段の危機管理を考え直すいい機会と言えるかも知れない。

 むしろ我々庶民が2000年問題について神経質になりすぎて、皆が皆大量の備蓄を始めたり通常より余計に電気や電話を使うようになると、システムのバランスが崩れて別の問題が生じる可能性があると指摘するいう識者もいる。例えば電話などが通じているかどうかを確認するために受話器を上げるという動作を多くの人が同時に行っただけで、交換機がパンクする可能性があり、NTTでは2000年1月1日0時前後のそういった行為を避けてほしいと広報しているほどだという。そういう意味では、2000年問題に関心を向けすぎることの方が却って問題なのかも知れない。

 国別で言えば、2000年問題対策にもっとも関心の高いのはアメリカ合衆国であるとの話であるが、関心が高いからと言って備えが完全とは限らない。アメリカの場合は日本とは比べものにならない程、様々なインフラのコンピュータ化やネットワーク化が進んでおり、不具合が伝播する可能性がはるかに高いという事情もある。一方ロシアなどでは、原発や核ミサイルを持ちながらも2000年問題に対する国民の意識が低く、対策も遅れがちだという噂もあり、それもあまり気持ちのいい話ではない。中にはロシアや北朝鮮の核ミサイルが飛んでくるのではなどと心配する人もいるようだが、心配な人は正月休みに海外に逃亡して下さい。万一悪い予想が当った場合には、帰る国もなくなっているかも知れないわけだが。

 何はともあれ、大事に至らず皆様が良い新年を迎えることができますように。そしてこのページを来年以降もちゃんと続けられますように。


<前目次次>