#096 2000年問題対策大詰め(前編)

1999/12/21

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 今年も残すところあとわずか。嫌だと言っても2000年は確実にやってくる。新聞やテレビでも取り上げられない日はないくらいようやく広く認知されてきた2000年問題であるが、実際のところ各方面での対応はどのくらい進んでいるのだろうか。

 身近なところから順に見て行く。まず手持ちの家電製品であるが、よくよく考えると、2000年問題で影響が出る可能性を持つ日付機能が内蔵されているのは、テレビやビデオ、FAXくらいのものである。タイマー機能のついている家電は、洗濯機や炊飯器や冷暖房機器など、他にいくらでもあるが、大抵のものは日付情報を必要としない24時間単位のものであるため、2000年だからと言って特別なことがあるわけでもない。FAXにしても、せいぜいFAXの頭に送信時刻を印字する機能がおかしくなる程度で、使えなくなるわけではない。

 家電の中で2000年問題に一番関係がありそうなのはビデオの予約録画機能であるが、これについても、最悪その機能が使えなくなるだけで、その他の機能が使えなくなるわけでもない。少なくとも、2000年問題が取りざたされてきたのちに販売された比較的最近の製品については、はじめから2000年問題に対応している場合が多い。

 最近は家電メーカー各社が自社のWebPageや新聞広告などで2000年問題が発現する恐れのある製品とそれに対する対応を告知している。しかしどの会社も、購入した顧客に対し個別に情報を送っているわけではないので、各個人で情報を集めて対策を行う必要がある。

 パソコンの場合は問題が複雑である。パソコンはその動作の仕組上、BIOSレベル、OSレベル、アプリケーションレベルといくつもの階層が存在し、対策もその階層別に施されていなければならない。当然、下の方のレベルの対策をクリアーしていないとその上の対策がしっかりしていても仕方がない。

 BIOSとは、ハードウェア制御などのパソコンの最も基本的な機能を制御する内蔵のソフトウェアのことで、ここの日付機能に問題があると、すべてのソフトウェアで問題が起こる可能性がある。BIOSレベルの対応については各社製品によってまちまちだが、最初から対策を施してあるか、あっても概ね1998年以降の製品であれば大丈夫であるとのことである。各社の対応についてもそれぞれのWebPageなどに詳しい情報があるので参考にされたい。

 OSレベルで言えば、MacOSについてはもともと問題ないとしているし、MS-DOSについても一部コマンドの機能が制限されるだけでほとんど問題ない。Windowsの場合だが、ほとんどすべてのバージョンについて大なり小なり何かしらの問題があることが分かっており、それに対する修正ソフトもWebなどで公開されている。ただ、Windows95などの場合はInternet Explorer(以下IE)4.0以上がインストールされていないと修正ソフトが使えない、などと言う代物であり、そのためにIE4.0をインストールしたらかえって具合が悪くなったなどという報告もある。

 そもそも2000年問題によって一部機能が不具合になることと、その機能が不具合になって自分がどれだけ困るのかということは別の問題である。対策を施すつもりが却って別の問題を作ってしまうくらいなら、実際に問題が起きて困るようになるまで何もしない方がまだ賢明なのかも知れない。もっともそんなことを言い出せば、個人レベルでパソコンが使えなくなって困ることなんて実はあまりないのかも知れないが。

 アプリケーションレベルになると、やはりスケジューラや表計算における日付処理など、日付にかかわる部分がどれだけあるかによって影響の大きさも変わってくるだろう。話は少しそれるが、来年から改正された祝日法が施行され、成人の日と体育の日についてはそれぞれ1月と10月の第2月曜日ということに改められた。そのため市販されている来年のカレンダーなどは当然そのように改められているのが普通であるが、カレンダー作成機能のあるアプリケーションがこのことを考慮に入れていなくて、旧来の祝日設定でのカレンダーを作ってしまうという問題が起きたというニュースがあった。パソコンレベルのみならず、銀行のオンラインシステムなど生活に密着したシステムについても、こういった祝日のデータを書き換える必要があるだろう。今年と来年はただでさえ2000年問題の対応に追われてしまうというのに、政府も間の悪い時期に改正など行ってくれたものである。(続く


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