#076 初めての人間ドック(後編)

1999/08/14

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 前回は品のない話に終始して申し訳なかった。気を取り直して後編へ。いよいよこれから検査らしい検査が始まる。

 まずは比較的易しい身体測定や胸部レントゲンなどのおなじみの検査から。最近の身長計は裸足で立つだけで、上から自動的に棒が下りてきて身長を計り、同時に体重と体脂肪率も計算してくれる。血圧だって筒の中に腕を入れておけば周りから風船が広がってきて自動的に計ってくれるし、視力検査も、潜望鏡のようなものを覗き込んで中のディスプレイに映る例のCの字の開いている方向をジョイスティックを動かして答えると言うもので、ゲームみたいで結構面白い。検査記録は、受付でもらった磁気カードのようなものに記録されていくらしい。随分と便利になったものだ。

 興味深いのは、この健診センターでは、これらの計測機器の制御やデータの記録などにMacのColorClassicIIを使っていた。医療の現場で活躍するMacというのはあまり見たことがなかったのでなかなか新鮮であった。

 聴力測定ではヘッドホンで左右異なる4つの周波数の音を聴く能力を測定。眼底検査では、目の中を至近距離でフラッシュ撮影されて、一瞬目の前が真っ白になってしまい、しばらく円形の影が視界から消えなかった。心電図はベッドに寝て洗濯鋏やら吸盤やらをつけて測定するもので、これは結構おなじみ。

 腹部超音波測定では、お腹に超音波測定器を当てて中の様子を見ると言うもの。画面を見ると、自分の腹の中を映しているらしい白黒の画像が見えるのだが、素人の自分にはそれが何を意味するのかはよくわからない

 そして検査の最後が胃部X線撮影である。やったことのある人はわかるだろうがこれが結構大変で苦痛なものなのである。この検査のために昨夜より断食を強いられた上に、胃の動きを鎮静化させるために肩に注射を打たれ、そのあとお待ちかねのバリウム飲みがある。最近のバリウムは昔に比べると、ほのかに苺の味をつけたりして、以前に比べると飲みやすくなったらしいが、あの白くて重くてそれこそ胃にもたれそうな液体を飲むのはやはり結構大変である。

 最初は食道などの撮影のために1口2口くらいずつ飲んでいく。そしていよいよ胃の撮影となると、残ったバリウムを一気飲みした上に炭酸の発泡剤を流し込んで胃を膨らませる。当然胃が膨らんでゲップが出そうになるのだが、膨らませた胃が縮まないようにゲップはするなと言われる。そしてそのもたれた胃の状態のまま、ベッドの上に寝そべり、「左を向いて」だの「一回転して」だの言われるままに重い体を動かさなくてはならない。撮影の為に胃壁にバリウムを満遍なく付着させるためである。時にはベッドの横の手すりを持ったまま、ベッドごと逆さにされたり、胃の部分を機械で圧迫されたりすることもある。胃が重くなった状態で体をぐるぐる回されるのは結構な苦痛ではある。

 なんとかそれも無事終わり、これで午前中一杯かかった検査終了。昼食引替券をもらって、検査結果が出るまでの時間を待つ。さすがにバリウムを飲んだあとすぐ食事する気にはなれなくて、しばらく本でも読んだ後に食堂へ行き、健診弁当なる魚を主体としたカロリー塩分控え目の昼食をいただく。それでも結果発表までだいぶ時間があるので、近くの本屋に立ち読みに行って時間を潰す。

 検診が終わったのが最後の方だったので、結果発表は遅めの14時からであった。結果はそれぞれの値を記録した紙をもらい、医師との面談という形で行われた。しかし出てきた結果は「全く異常なし」ということで、「コメントすることもありません」と1分で終わってしまった。

 結果が書かれた紙を見ると、検査した身体計測・胸部レントゲン(心臓・大動脈)・肺機能・血圧・心電図・尿・血液生化学・脂質代謝・糖代謝・腎機能・血球算定・免疫血清・上部消化管・便・腹部超音波・視力・眼圧・眼底・聴力の各項目において、すべてA判定で全く問題無いとの判定。加えて全部で50近くある各細目についても一つの漏れなくすべて正常値の範囲内という完全判定であった。面談した医者曰く「ここまで完全なA判定は一年に1人か2人くらいしか見たことがない」とのこと。余りにも出来すぎた判定に受けた本人も驚いてしまった。

 まあ人間ドックの結果が良いからと言って健康であるとは限らないかも知れないが、とりあえず悪いところが見つからないと言われるのは結構なことである。電脳生活を楽しむためには、なんにせよ健康が一番大切である。あれ?前にも言った気がする。


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