#075 初めての人間ドック(前編)

1999/08/10

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 職場の斡旋で、人間ドックなるものを初めて受診してきた。

 ドックというのはもともと船の点検や修理を行う港のことであるから、人間ドックというのはつまり、人間の健康状態のチェックを総合的に行うものであることは周知の事実である。がしかし、私は今まで受けたことがなかったので、一体どんなことをされるのか、興味深いものがあった。

 人間ドックを受診する前には、いろんな書類の入った袋を渡され、その中の問診票には、自分の生活や性格や健康状態に関することを書く。「お酒をどのくらい飲みますか」という項目においては「○合くらいを週に○日」とか「普段より多く飲む時は一回○合くらいを飲む時が年に○日くらい」とか。また普段の食生活については「肉を週4日以上食べますか」とか「魚を週4日以上食べますか」とか「卵を週4個以上食べますか」とか「牛乳を毎日飲みますか」とか。あるいは性格について「自分に対する周囲の評価が気になる方ですか」とか「何でも自分でやらないと気がすまない性格ですか」とか。あんまり普段意識していないので正確かどうかよくわからないが、まあこんなもんだろうということを正直に書いて答えればいいのだろう。

 もう一つ事前にやっておかねばならないこととして、こちらの方が厄介なのだが、検便というものがある。以下、食事中の人はおすませになってからお読みいただきたい。

 検便は検査を受ける前二日間に渡って行うこととなっている。普段ならそのまま便器に落としてとっとと流してしまうものを紙に取り、楊枝のようなスティックで5〜6箇所挿して便をつけて、それを容器に密閉して冷所に保存しておくようにと書いてある。ちなみに便の受け方については「いずれの場合も便器にトイレットペーパーを敷き、和式の場合はそのままの姿勢で、洋式の場合は通常と逆向きに(つまり和式と同じく前向きに)構えて受けよ」とある。

 1日目の採取の際、早速仰せの通りに準備をして、宿舎の洋式便所でそれを行ったのはいいのだが、宿舎の洋式便器は傾斜が大きかったためか、折角受けられたそれは勢い余ってそのまま水の中に落ちてしまった。「貴重なサンプルが…」その時のショックというのは情けないやらがっかりするやらでうまく言葉にできない。結局方法をあらため、そのまま床に紙を敷いて便を受けるようにし、何が悲しくてこんなみじめなことをしているのだろうと一人トイレで懊悩しながらも、1日目は何とか採取することが出来た。

 しかし2日目、つまり検査の当日、今度はどうしても便が出ない

 何しろ人間ドックを受診する前日は、胃の検査の為に、夕食は19時までに済ませた上、当日は検査が終わるまで水1滴すら飲んではいけないのである。そんな状態で便が出るかと言うと、どうしても出ないのである。物を食べて押出すわけにもいかず、運動すれば少しは通じがあるかと思い、早目に自転車を飛ばして健診センターへ行き、そこのトイレで最後の奮闘を試みたのだが、脂汗は出ても便は出ない。

 受付の時間になってしまったので、「出ないものは出ない」と諦めて、受付で正直にその旨伝える。綺麗なお姉さんにそんな恥ずかしいことを告げるのも結構情けないものがあるが、あっさり「じゃあ今回は一日分で検査いたしますね〜」などと言われてしまう。よく見ると受診者名簿には「一日分」などと書かれた人もちらほらおり、私だけではなかったのかととりあえず安心する。そんなことで安心するのも情けない話だが。

 以上、非常に品のない話で申し訳ない。しかも電脳に全然関係なかった。

 というわけで、受付で磁気カードのようなものをもらい、更衣室で下着1枚になって検査衣というものを纏い、いよいよ検査が始まる。のだが、最初に「採尿します」と言われてしまった。しまった、先ほどトイレで格闘したために尿の方も殆ど出てしまって残っていない。紙コップに1cmくらい採って提出して下さいと言われたのに、いくらがんばっても結局3mmくらいしか取れなかった。これも「出ないものは出ない」と諦めてそのまま提出する。いかん。また品のない話になってしまった。しかもこのままでは電脳の話題が何もないまま終わってしまう。「電脳」ではなくて「便悩」になってしまった。

 なんてつまらん洒落で落ちたと思うなよ。後編に続く。


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