#072 HP200LX製造中止反対

1999/07/21

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 二月に一度くらいしか訪れないNIFTYのfhppcフォーラムに久しぶりに行ってみたところ、「200LX生産継続署名に御協力お願いします」とのメッセージが出ていた。なんでも、HP200LXの製造元であるHP社が今年11月1日をもって200LXの製造を中止するというプレスリリースが出たのだそうである。

 この電脳でもたびたび取り上げられているHP200LX(以下200LX)とは、システム手帳の程の大きさの筺体に完全なDOSマシンの機能を持ったパームトップPCである。これが世に出てからすでに5年がたつものの、私を含めて、今でも重宝して使っているユーザーはかなり多い。

 200LX自体は、カタログスペック的に見た製品としての魅力には正直に言って乏しい。CPUなどは何世代前かわからないような80186相当のものであるし、動いているOSだってMS-DOSである。表示は480×200のモノクロ画面でしかない。しかし、機械駆動部分などを排し優秀なサスペンド/レジューム機能をつけるなど、とことんまで消費電力を押さえた結果、汎用的な単3乾電池2本で驚異的な駆動時間を実現し、その他耐久性やキータッチやPIMソフトなどについても、実際に屋外で使うことを考えられた設計になっている。

 そしてこの200LXの本当の魅力は、200LXを愛用しているユーザーの強力なコミュニティである。もともと国外の製品であり英語DOSしか動かなかったものを、ユーザーの手によってプログラムを開発して日本語化してしまうなど、今ほど資料が無かった時代に先人が茨の道を切り開いて次々と優秀なソフトを作り情報を交換してきたという経緯がある。そのコミュニティの中心となるNIFTYのfhppcの他、WWW全盛時代の今は、ユーザー各個人が200LXについてのWebPageを作り、各人の使い方や思い入れを語っている。

 この生産中止のニュースがHP社より発表されたのは7月6日であったが、私もこの事実を知った18日以降にいくつかの200LX関連の個人WebPageを見直してみると、その多くが生産継続を求めるバナーを入れているようになっていた。更に反対運動の中心となるメンバーが、秋葉原や日本橋などで街頭署名まで行いはじめた。わずか2週間の間にここまで運動が広がっているのは、インターネット時代の情報の伝播スピードもさることながら、いかに200LXのユーザーが200LXを愛し、生産中止の発表に遺憾の意を持っているかの現れであると思う。

 HP社は後継のJornada680というWindowsCEマシンへの移行を勧めているものの、日本語化の目処がたっていないなど、資産の継続という意味では大いに疑問がある。そもそもWindowsCEなどというメモリ資源などを無駄食いするだけで安定性を欠きレスポンスも悪いような中途半端な規格のOSを載せた携帯端末が200LXの代用になるとはとても思えない。

 これはあくまで私見だが、200LXを選び愛用する人には、その人のライフスタイルというか考え方にある種の共通点が見られるような気がする。無駄を排し、流行や情報に安易に流れず、本当に自分が必要としているものを選び、必要なものは自分で努力して手に入れ、それを大事に使い続けるという考え方である。私もそうありたいし、そう思うからこそ200LXを使い続けているのである。200LXが消えてしまうということは、単なる一商品の消滅と言う問題以上に、そういったライフスタイルそのものを否定されるような気がするものであり、私としても無視できるものではない。

 200LXのユーザーコミュニティの中では、私は単なる1ユーザーとしての域を出ない人間ではあるけれど、私自身の意見として、200LXの生産中止に反対する意志を表明し、微力ながらこの運動を盛り上げていきたいと考える。

HP 200LX continue!


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