#063 プリンタ購入計画(その3)

1999/05/14

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 前回までのあらすじ。自宅での印刷の需要が増してきて、今まで職場のプリンタなどを使いながらお茶を濁していた私もついに自宅用のプリンタを買うことに決めたのだが、いろいろありすぎてどれを選んだらいいのやらわからない。ということでWebPageなどでプリンタに関する基礎知識などを蓄え、比較検討した結果「これだ」というプリンタを決めたのであった。

 それはH社のGraphilシリーズである。
 以下、前回に述べた項目別にGraphilシリーズの特徴を見てみることにする。

 画質に関してだが、実は専用紙を使ったカラー印刷に関しては、E社のものがずばぬけてすばらしい。これはインクノズルにピエゾ素子というものを使ってインクの吐出量(最小6pl〜最大19pl)を微妙に調節し、加えて薄い染料系インクを6色重ねることで微妙な色合いの再現を実現しているためである。実際、専用紙に出力された結果を見ると、かなり近づいて見てもインクの粒状感が全くと言っていいほどない。ただし、染料系のインクは専用紙では真価を発揮するものの、表面がコートされていない普通紙では滲みが多く、色の再現性が著しく劣化してしまうという欠点がある。また、ピエゾ素子はコストが高くノズルの密度を上げることができず、そのため用紙を少しずつずらしながら印刷するという方式を取っており、印刷速度の向上が難しいという欠点もある。従って、通常頻度が多いと思われる普通紙でのモノクロ印刷には結構時間がかかる。

 それに対しGraphilシリーズのそれはサーマルインクジェット方式を採用している。これはノズルの構造が比較的単純であり、ノズルを高密度配置することが可能である。そのため一度に印字できる領域が大きく、印字速度が高速になる。また、モノクロ印刷用に顔料系のインクを使用しており、普通紙での印刷でも滲みがほとんどなく、レーザープリンタの出力に匹敵する品質の出力が可能になっている。専用紙へのカラー印刷については確かにE社のそれよりも若干落ちるけど、インクの滲みが少ない分、普通紙での印刷に関しても品質が著しく劣化することがないのが嬉しい。

 H社のプリンタのインクは他社のそれに比べて比較的高いのだが、これには理由がある。先にも述べたように、インクジェットプリンタには、長時間使用しないとインク詰りの可能性が高いという構造的な欠陥があるのだが、H社のプリンタはこれを解決するため、インクタンクとノズルを一体化しているのである。これにより、万一目づまりが起こってもインクタンクを丸ごと交換すれば済み、いつまでも初期性能を保つことが可能になっている。ヘッド一体型のインクタンクはその分コストがかかるのだが、H社のそれは、インクタンクを大きくしてコストパフォーマンスを高くするようにしている。むしろヘッド分離型のプリンタが頻繁に行うヘッドクリーニングによる無駄なインク消費がほとんどないため、インクの消費量が極めて少なくて済み、交換の頻度も少なくて済むので煩わしさがない。

 また、他社プリンタが構造を単純にして製造コストを下げるため(?)に給紙トレイを上につけているのに対し、Graphilシリーズのプリンタは、給紙・排紙トレイを前に置いてある。このため用紙の交換や取り出しが楽であり、背面に余分なスペースを必要とせず、紙がまとめて送られる等のエラーも起こりにくく、長期に紙を置いておいても丸まったりしない。更にGraphilシリーズは、出力中に排紙トレイの横から「翼」のようなものが伸びて、印刷中の紙が宙に浮きながら印刷される恰好になり、印刷が終了してから、おもむろに排紙トレイに紙が落ちると言う、非常に凝った芸当を見せてくれる。生乾きの紙どうしがこすれて汚れたりかすれたりしないためであり、こういった細かい配慮には感心すらしてしまう。

 そしてGraphilシリーズの最大の特徴はその静粛性にある。と言うよりも、他社のプリンタは印刷時の音が無闇に大きく、家庭での使用ではかなり耳障りである。静粛性を売り文句にしているプリンタは私の知る限りGraphilシリーズ以外にはない。静粛性は、単に印刷時に耳障りである云々の問題ではなく、機器の耐久性(パーツに余計な力がかからないので製品寿命が長い)という点でも非常に有利な点である。

 ともかくGraphilシリーズのプリンタを一言で言えば「トータルバランスに優れたプリンタ」であると言える。もちろん、個々の事例について比較すれば、Graphilシリーズのプリンタよりも優れた点を持つプリンタは存在する。しかし、他社の最近のプリンタが専用紙での写真画質にこだわり過ぎる余り、その他の目立たないが大事な部分(静粛性、使い勝手)などが配慮されていないのに対し、ともかく細かいところまで配慮が行き届いているのがGraphilシリーズである。

 なんだか随分H社のヨイショをしてしまったが、WebPageを色々見て回って、ユーザーの立場としての意見から得られる情報を総合すると以上のような結論に達したのであった。最後に、私のプリンタ選定のための一助となり、これをまとめるのに参考にさせていただいたページを紹介する。まあこういった情報収集の仕方自体にバイアスがかかっている可能性は否定できないが、上に述べたことに対して「そんなことはない。こっちのプリンタの方が優れている」という意見があれば、私が実際に購入する前に是非お知らせいただきたいものである。

 ということで、次回はいよいよ購入編である。(実はまだ購入していないのだった。)プリンタの話だけで随分引っ張ってしまって申し訳ない。


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