#050 メールに潜む罠

1999/02/25

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 仕事に私用にInternet Mail(以下単にメール)を利用するようになって4年。今ではほとんどメールなしの生活は考えられなくなってしまった。何度も言うが、相手の都合を気にせず、光の早さで気軽にやりとりできるという快適さは、他の通信手段の何物にも替えがたい便利さである。

 しかしメールの普及はそれを利用する者に多大な恩恵をもたらす一方、時には第三者によって不快/不利益な状況をもたらされることもしばしばある。今回は、私自身が体験したり見聞した範囲で、どんなようなことが身近に起こっているかを紹介することにする。もしここに書いてある程度のことを経験していないようであれば、それは明日にはあなたの元に降り掛かるかもしれないので、そのつもりで、取れる対策は取るようにされたい。

 一番よくあるのが、知りもしない人間からのメールである。メールアドレスは、基本的に住所や電話番号と同じく、遠隔地にいる人間があなたと連絡を取るための一つの個人情報である。メールを出せばそのメールアドレスは、あなたが出したことを証明する形で相手に知らされるのが通常である。ところがそのアドレスをどこで知ったのか、あなたが全く知らない人があなたに突然メールをよこすこともある。その中身はたいてい「在宅で月に100万円の収入を得ることが可能」とか「このメールを5人に転送すれば200万円手に入る」とかいう、いかにも胡散臭い内容のメールだったりすることが多い。そんな旨い話は現実社会だろうがネットワークだろうが現実に有るわけがない。とっとと捨てて構わない。

 ちなみにこのような胡散臭いメールの場合、差出人のアドレスの方は実在するメールアドレスになっていない場合が多い。このようにメールアドレスを偽ってメールを出すと言う芸当も実は可能だったりするのである。手のこんだ場合だと、メールを出した流通経路から足がつかないように、全く関係ないメールサーバに侵入し、そこから迷惑メールを撒き散らすといったことも現実に行われている。

 また「核兵器使用に抗議するために、このメールをできるだけ多くの人に転送して下さい」などという、一見善意のメールも無視した方がいい。これらのメールはチェーンメールとなって、早い話が「不幸の手紙」と同じようにネットワーク上にいつまでも流通しネットワーク渋滞を起こす元になる。むしろメールは簡単に複写転送が可能なため、あっと言う間に伝播し深刻な被害をもたらすことが多い。発信元に警告することすら、ネットワーク渋滞を助長してしまうので始末が悪い。相手が本当に善意でやっているのか否かにかかわらず、この手のメールも結局は無視するのが一番である。

 私はもらったことがないが、メール爆弾などというものもある。例えばメールに添付されたファイルを展開すると、巨大なファイルが作られてハードディスクがパンクするというようなものなどがあるらしい。そのような見るからに悪質な場合は別としても、故意か否か、添付されたファイルがウィルスに汚染されて自分のマシンに感染するなどというケースもある。

 剃刀入りの郵便だとか無言電話に比べれば、こういうメールに付き合わされる苦痛は大したことはないにせよ、受け取って嬉しいものでないことは確かである。この類のメールを受けたくないのならば、メールアドレスの公開は信頼できる特定の相手だけにとどめ、メーリングリストや、その他WebPageの掲示板などの場所に自分のメールアドレスを不用意に書込まないことが一番である。

 しかしそのようにして自己防衛していても、メールアドレスが漏れる可能性は皆無とは言えない。Internetはその性質上、様々な場所を流通してデータのやりとりを行っているので、残念ながら、Internet上を流れるデータはすべて第三者に見られている可能性があることは否定できない事実である。当然メールアドレスやメールの本文についても然りである。だから、メール中に重要な個人情報を書いて送ることは止めたほうがいい。特にクレジットカードの番号なんてもっての他である。最近はメールの中身を暗号化するための規格も整備されつつあるが、暗号化も完全に安全とは言えないので、結局はそういう情報は最初から送らないことが一番である。


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