#046 MS-DOS強化ソフトたち

1999/01/21

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 何度か私は未だにMS-DOSを使っていると書いたが、いくら私でも素のままのMS-DOSを使っているわけではない。もともとMS-DOSはUNIXを模して作られたもので、ディレクトリ構造やリダイレクト・パイプラインの機能を一応備えているが、貧弱な環境を仮定して中途半端な実装のされかたをしたために、素のままのMS-DOSはUNIXなどに比べると、とても使いづらく貧弱な機能しか持っていない。

 とは言えMS-DOSは、良くも悪くもPC/AT系(もしくはPC-9801シリーズ)のパソコンの世界でデファクトスタンダードなOSとして長く使われてきた経緯があり、その結果、それらを少しでも使いやすくしようとしてきた人たちの努力によって、あまたの便利なフリーソフトが産み出されてきた。これらを巧く使うと、MS-DOSの貧弱な環境でもそれなりに便利に使えたりする。今回は今更ながらであるが、私が今でも使用しているそういった優秀なフリーソフト群を紹介することにする。

 MS-DOSの時代からパソコンを使用していた人ならFDというソフトを知らない者はほとんどいないであろう。これのおかげでMS-DOSがどういった仕組みでファイルを管理しているのかを知った人も多いはずだ。このソフトはカレントディレクトリ内のファイルを、各種情報とともにリストで表示し、ファイルを指定してのコピー/移動/削除が簡単な操作で行えると言う大変便利なソフトである。こういった機能を持つソフトをビジュアルシェルと呼んだりする。Windowsでもファイルマネージャとかエクスプローラなどというビジュアルシェルがあるが、ワンキーでコマンドを実行できるFDに比べると、マウスで選択してコマンドを選んだりドラッグ&ドロップしなくてはならないWindows標準のビジュアルシェルは結構面倒だと感じることがある。

 もっとも私の場合は、最近はFDに良く似たK-Launcherというビジュアルシェルを愛用している。基本的な操作はFDに似ているが、こちらは2画面(2ディレクトリ)を同時に表示し、ファイルの移動/コピーがよりスムーズに行える。ちょっと難しくてどうでもいい話だが、通常MS-DOSの場合、あるファイルをあるディレクトリにコピーする時には、copy file1 directory1というように指定するが、K-Launcherを使っている場合は、対象となるファイルを探して指定し、もう片方の画面に対象となるディレクトリを指定してから、おもむろにコピーするという操作になる。つまり思考の流れが、命令(コマンド)→対象(オブジェクト)ではなく、対象(オブジェクト)→命令(コマンド)という流れになり、これは最近よく言われる「オブジェクト志向」的な考え方にかなっている。こういうところが「手になじむ道具」になっている理由の一つではないかとも考えるのである。

 そのほかK-Launcherでは、FDにはない機能(ディレクトリのまるごとコピー、ネットワークドライブの認識、指定ディレクトリへのダイレクト移動、拡張子連動実行)も備えており、しかもメモリ常駐量が小さく、さらにWindowsも含めた多種多様な機種やOSに対応しているのがうれしい。FDを使い倒した経験のある方にはお勧めのツールである。

 そのほかMS-DOS(というよりもcommand.com)の欠点として、スクロールした画面を取り戻せないことがあるが、これを補ってくれるものがxscriptというフリーソフトである。これはCtrl+↑or↓でスクロールした画面履歴を参照したり取り込んだりすることができる。また近頃のUNIXのシェルであれば当然持っているコマンド履歴保存やコマンドのエイリアス(別名)定義なども素のままのMS-DOSにはないが、これもKI-shellというソフトで補っている。更にfind,diff,uniq,head,tailといったUNIX上の便利なフィルタ系ツールもUNIX-Like Toolsというツールセットをインストールして使っている。

 Windowsがいまいち使いづらいと思うのは、コマンドラインシェルをMS-DOSの時代から進歩させていない(つまりGUIに阿り過ぎて、コンピュータに命令を与えるのになんでもアイコンですまそうとする)ところであると思う。GUIは確かにとっつきやすいのだが、複雑な定型処理をさせようと思ったらやはりコマンドラインを使った命令の方が遥かに自由度が高い

 こうしたツールを組合わせて使うことによって、私はMS-DOSのシステムそのものを、ビジュアルシェルで管理されたファイル群からなる巨大なデータベースとして扱っているのである。自分で作った文書やデータやプログラム、他人から受け取ったメールやログや資料、収集した各種データなど、とにかくありとあらゆるものをファイルにして自分に分かりやすいように整理し、必要に応じて参照したり加工したりしている。もちろん最近では画像処理やWebPage作成・閲覧などはMS-DOSの手に余るのでWindowsも平行して使っているが、今でもデータを集め管理しているのはあくまで枯れて使い慣れたMS-DOSのシステムなのである。


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