#004 携帯を換えた(前編)

1998/08/03

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 携帯というのはもちろん携帯電話のことである。ご多分にもれず私も携帯電話を所持している。

 所持しはじめたのは1997年5月のころ。私は劇団に所属しているのだが、そのメンバーとの連絡用にというのが主な目的であった。稽古の際の連絡などに、誰かが携帯電話を持っていると連絡が取り易くてとても便利なのである。ところで、自分で言うのもなんだが、私は稽古などの際に遅刻などはしないほうであるし、稽古の出席率も悪くない。そのため、携帯電話を持つや、他のやや時間にルーズなメンバーたちが稽古遅刻の連絡を次から次へ入れるようになり、そういう意味では存分に活用されているのだが、なんだかこっちが身銭を切って買ったものが主にそういう目的に使われているというのも妙な話である。まあそれはよい。

 そういう次第で当時購入したのはNTT DoCoMoのP201という機種。これは当時は携帯電話の中ではもっとも軽く故障率も低い名機であったのだが、ほどなくして各社から後継の203シリーズが出て、購入時に29800円だったかの名機も3ヶ月ほどで1万円を割り込むばかりか、店頭にすら並ばなくなってしまった。まあ世代交代の早いもっともホットな電気製品であるためいささか仕方のないことであるが。

 それにしても、私がP201を購入したそのすぐ後に発売されたN203という機種は、P201とほぼ同じ重さで登録番号件数が500もある。かたやP201は300件。300件もあれば十分ではないかと思われるかもしれないが、これで結構マメな私はともかく一回でも電話をかけたり世話になったりした人の番号を入れていくうちに240件にまでになってしまったのだ。もう登録可能件数が残り2割くらいしかない。これはなんとなく不安である。

 重量の方でも今では206シリーズが並ぶようになって、P201は最軽量機種でもなんでもなくなっていた。P201とて99gであるから十分軽いといえなくもないが、携帯するものにはとことんこだわる私としては、重さは1gでも軽い方がいい。実際最近の機種などちょっと前のPHS並みの重さではないか。79gとある。これは軽い。持ってることを忘れそうな軽さである。忘れても困るのだが。

 しかもP201は登録番号の名前の部分はカナ入力であり、番号表示も10桁しか表示されない。表示されないだけで実際には20桁まで記憶可能なのであるが、平成11年になって携帯電話の番号が11桁化されたときに、一度に11桁表示されないというのもちょっと気になる。カナというのも視認性がいまいちよくないので、できれば漢字の方がいい。

 まあこうして並べてみても大した理由ではないのであるが、本人にとっては使っていてなんとなーく半年くらい気になっていたことである。しかしそれだけのためにまた万円単位のお金を払ってまでやる必要があるのかどうかというと、それも確かに疑問である。

 とまあそういう次第で絶対にというわけではないけれど、なんとなーく交換したいなーと考えていたのだが、先日ふらふらと自転車で走っていたら、DoCoMoの携帯電話の取り扱い店の前を通ったので、涼むついでに入ってみた。たいていは最新の機種である206シリーズしか置いていないのだが、そのなかに、限定10台でP205が9800円で新規契約/機種交換できるとある。P205とは一世代前の機種であるが、後継のP206と同じデザイン/重さで、漢字ショートメールが使えるか否かという点のみが大きく違うだけらしく、その程度ならショートメール自体使っていないしP205でも一向に構わない。出張旅費が出てちょっと懐具合もよかったこともあり、ちょっと店員に聞いてみた。頼りなさそーなお姉ちゃんであったが、いやいや人をみかけで判断してはいけない。「携帯電話の機種交換についてお聞きしたいのですが」

 お姉ちゃんはとても困った顔をしたあと、別の男性店員に助けを求めに行ってしまった。うーむ、見かけ通りであったか。それにしても、機種交換というポピュラーな問い合わせに対して一通りくらいは説明できるようにしておいてよ。一応接客に立っているわけだし。

 呼ばれて出てきた男性店員の話によると、交換は本体と、本人を証明するものがあればその場で20分くらいでできる。電話番号も今まで使っていた番号と同じ。ただし、登録した電話番号は場合によっては2つか3つ転送に失敗することもあるとのこと。

 意外と手続きは簡単そうだが、最後の「転送に失敗するかも知れない」というのがなんとなく不安である。やはりちゃんと登録番号のデータのバックアップを確認してからにした方がよかろうと思い、その日は引き上げた。(続く。


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