1998/07/27
そんなわけでつい始めてしまったこのコーナーだが、そもそも私がWeb上にページを作るようになった経緯について、何回かに分けてお話ししよう。だが、その前置きとして、やはりどうしても言及しておかなくてはならないことがあろう。今、私は「Web上にページを作る」と書いたが、大概の人はここでは「インターネットのホームページを作る」と言っているのではないだろうか。
結論から言うと、この言い方はいくつも問題を孕んでいる。
まず「インターネット」。世間にこの言葉が瞬く間に普及したのは、何と言ってもWWW(World Wide Web)にあることは疑いようのない事実だ。早い話、あなたが今これを見るのに使っているサービスである。画面上のテキストや絵や、場合によっては音楽が展開され、それらをクリックすれば、また瞬時に別の所へ移動したり音が鳴ったりするヤツである。だがこれを「インターネット」と称するのは間違いである。
「インターネット(Internet)」とはTCP/IPで相互に接続されたネットワークの集合体としての「インターネットワーキング」であり、英語圏では単に「the Net」と呼ばれていたりする。そして、今あなたが使っているサービスはWorld Wide Web、あるいは単にWebと呼ばれる、Internet上のサービスの一つである。Internet上のサービスには他にもMail、FTP、Telnet、Net News、IRC、Archie、WAIS、Whoisなどなど…、いちいちここでは説明しないが（その知識もないが）、どれもこれもWWWが出てくる前から普及し利用されてきたInternet上のサービスである。WWWは、あくまでそれらのサービスのうちの一つでしかなく、だから決してInternet＝WWWではない。
そして「ホームページ」という言い方はもっと厄介だ。よく企業や団体や個人が「ホームページを作りました」という言い方をするが、そもそもホームページのホームとは「基点」とか「出発点」などの意味あいがあり、端的に言えばホームページとは、あなたがこれを見ているソフトウェアを立上げた時、あるいは「Home」というボタンを押した時に現われる最初のページのことである。もしあなたが個人でページを作り、あなたがこれを見ているソフトを立上げた時に、あなたのページが最初にそこに現われるのなら、それを「あなたが」ホームページという分には構わない。だがあくまでそれは「あなたの」ホームページであり、それを見ている多くの人にとってはおそらくホームページではない。従って「ホームページを作りました」という言い方は正しくない。一般的には「Webページ」「WWWページ」あるいは単に「ページ」と言った方がいい。
それだけならいいのだが、世間ではホームページを間違った意味で使った上に、場合によっては「HP」と略す場合もある。コンピュータの世界においてHPと言われて普通想像するのはHewlett Packard社の略称であり、決して「ホームページ」ではない！（このあたりのことは、森晴信氏の「ホームページ」のウソなどが詳しい。参考までに。）
だがそうは言っても、世間の人々があんまりにも「インターネット」とか「ホームページ」とかを不正確な意味で使う用法がまかり通っているので、さすがに私も友人に「ホームページ作ったんだって？アドレス教えてよ！」とか聞かれた時に、「あのね、そもそもホームページって言い方は…」なんて始めてしまうと偏屈で嫌味ったらしい人間だと思われることは想像にかたくないし、そんなことで人間関係が悪くなることは私も望むところではないので、苦笑しつつも、相手の言ってることを頭の中で翻訳して、相手の望む答えを返すだろう。また「ホームページ」という使い方が間違っていることが分かっていたとしても、相手に分かってもらえなければ意味が無いので、つい会話の中で「私のホームページのアドレスは…」なんて言ってしまって一人苦笑している（気味が悪いぞ）。いくら本当は間違った意味だとしても、言葉がコミュニケーションのための道具である以上、相手に通じなければ話にならないのだから。
だけど、せめてWWW上でこんなページを作っている以上、そしてInternetの恩恵を少なからず受けている生活を送る一人である以上、せめてそのInternet上で間違った言い方を分かっていて使うわけにはいかない。これ以上誤解を促進する側に回ってはいけない。というわけで、私の作るページは「Haradayのページ」なのである。間違っても「Haradayのホームページ」ではない。
（とか何とか偉そうなことを書いたが、私のInternetについての理解もまだまだ誤解が多いかも知れない。間違いに気づいたかたはMailでつっこんでやって下さい。勉強させていただきます。）