△ 不等辺ワークショップ第60回 (2008/08/17)


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写真  進行役を務めた林です。「俳優を目指さない演劇ワークショップ」のレポートです。夏のこの時期にやるのは久しぶりだなぁ。お盆明けの日曜日。この暑さだし、北京オリンピックもあるし、申し込みが少ないかなーとも思っていたのですが、17名もの方がご参加くださいました。ありがとうございます。アシスタントの茶円と私とでお待ちしていました。この会場で、このメンバーで、演劇を遊び道具にして、楽しく遊びましょう。全員が集まるまでの時間、私たちはフルーツバスケットに興じます。始めたのが12時45分ぐらいかな。早く来た人ほど、たくさん遊べて得する仕掛けです。だんだん人が増えてきて、輪が大きくなる。いいですねー。いかにも放課後のグラウンドで子供たちが遊んでいるみたいな感じです。ちなみに鬼は、自分にも当てはまることなら何を言ってもいいというルールです。「ゆうべ呑んだ人!」とか「今日京王線に乗った人!」とかね。ちなみに「オリンピックよりも高校野球のほうが興味がある人!」は私しかいませんでした。19人も人がいながら、私ひとり。高校野球オタクの私は悲しい…。

写真  ワークショップの本編(?)はいつものようにウォーキングから。会場を観察したり、他の参加者と簡単なコミュニケーションをとったり。様々なルールを次々と繰り出します。久しぶりに「エイジ」のルールも試しています。12歳の夏のイメージで歩いたり、82歳の夏のイメージで歩いたり。今回、私たち19名はタテに30歳超の年齢幅がありました。それでもさすがに12歳以下の人はいないし、82歳以上の方もいない。自分が12歳だったときのことを思い出す。自分が82歳になったときのことを想像する。そうして同い年の人たち同士でちょこっとイメージを共有します。わぁ。いきなりどっぷり演劇的な遊びだなぁ。勢いでやっちゃいました。難しく考えず、イメージの世界で遊んでくださればそれで十分なのです。

写真  短い休憩をはさんで殺人鬼。物騒な名前のゲームですね。これは輪になって立ち、相手の名前をきちんと呼ぶというゲームです。しっかり呼ぶ。しっかり受け止める。みなさん、リアクションが自然でしたねー。ラブバージョンはさらに。殺人鬼バージョンはさらにさらに。いつもだったら、この後「名前鬼」をやるところ。今回はまずは普通の「鬼ごっこ」から。それをスキップでやったりもする。全員がスキップしているのって、とってもハッピーな雰囲気になりますね。鬼がなかなか追いつけなくて、その様子がコミカルだったりもする。そう、それでね。こういうゲームをやるので、裸足だと危ないのです。いつも「参加のしおり」で室内履きをご用意くださるように促してはいますが、徹底はされない。裸足だと足を踏まれます。あるいは足を踏んじゃいけないと他の方が気を遣うかもしれない。次回からは「室内履き持参」を決め事にしようかな。そうしよう。

写真  ワークショップはここから中盤。まずは汗臭いスイカです。これは言わばボキャブラリー・ゲーム。言葉と身体のボキャブラリーを駆使しましょう。お題は「夏」です。お題から思い浮かんだ言葉をグループでたくさん紙に書き出していきます。名詞グループと形容詞グループと動詞グループ。「ひまわり」とかね。「蒸し暑い」とかね。「泳ぐ」とかね。これらたっくさん挙がった言葉を使って、さまざまなポーズを作って遊びました。ボキャブラリー豊かに言葉を挙げたように、身体も豊かに使ってみたい。同じ言葉から、人ごとに違ったポーズができあがるの、見ていておもしろいです。

写真  次はフォーカス。日本語だと「焦点」ですね。誰かひとりに焦点を集める。舞台上でフォーカスがきちんと当たっていると、観ていて観やすいです。ところで私、ダウンタウンの浜田雅功が好きです。「がきの使いやあらへんで」のフリートークが好き。あれ、松ちゃんがおもしろいんだけど、浜ちゃんがまた上手いんだなぁ。余計なことをゼッタイ言わないんですよね。巧みに促す。写真 自分の役どころをわきまえている。それも一種のフォーカスです。浜ちゃんが余計なことを言っちゃうと、その瞬間に松っちゃん(とそのトーク内容)に当たっていたフォーカスが割れちゃうんですよね。余計なことを言わないとか、悪目立ちしないって演劇でも大事です。まずはフォーカスの当て方について簡単なレクチャー。そして全員に1回はフォーカスが当たることを決め事にして、短いシーンを作りましょう。作品名は私がリクエスト。「気持ちいいハイキング」「騒がしいサーフィン」「寝苦しい枝豆」の3つ。さっきの『汗臭いスイカ』で挙がった言葉の組み合わせです。制限時間は10分間。グループに分かれて、さぁ、どうぞ!

写真  これら中盤の内容は、じつは山梨県で高校の演劇部員たちを対象にやった演技講習会の内容とだいたい同じです。大倉マヤさんと私のふたりで、特急あずさで甲府に出張して、50名の高校生たちと楽しく遊んだんでした。やった内容は同じでも、私が押えたいポイントはあちらとこちらでは異なります。こちらは「俳優を目指さない演劇ワークショップ」ですから、知識とか考え方をお伝えすることが主目的ではありません。それらはむしろ遊ぶための材料のようなものです。ワークショップをするに当たって、毎回毎回うんうん唸りながら内容を練ります。どうしたってそのときそのときの私の興味関心が内容に反映します。参加者の方々からすると、重たい軽いとか、濃い薄いとか、各回ごとに感触が違うかもしれません。ブレがあってごめんなさい。重かれ軽かれ、濃かれ薄かれ、楽しさだけは失われないように気をつけています。今回は「やや重」「やや濃」だったかもしれないですね。どうぞご容赦を。

写真  いま私が興味があるのは「グループワーク」のあり方です。私自身はグループワークが本当に苦手。すごくプレッシャーを感じます。苦い思いをすることがほとんど。どうしてなんだろう。私はなにが嫌なんだろう。他の方々はどうなんだろう。どうしたらもっと楽になるんだろう。どうしたらもっと有意義で有効なものになるんだろう。そういった諸々を自分なりに整理したいんです。そして参加者としても進行役としても、グループワークの達人になりたいんですね。今回は『汗臭いスイカ』で、名詞・形容詞・動詞をグループでたくさん挙げるという作業がまずありました。意見を言ったり、それを摺り合わせたりするのと比べれば、単に言葉をたくさん挙げていくというのは、プレッシャーが少ないかなーと期待しました。そんなこと口に出しては言わないけどね。そしてそういう作業が先にあったことで、『フォーカス』でのシーン作りは取り組みやすくなるんじゃないかしら。いや、課題自体の難しさは別ですよ。グループワークに伴うプレッシャーは減ったんじゃないかしら。どうかしら。私が参加者だったら、こういう手順だったら楽になるかも、という流れを試してみたかったのです。

写真  アシスタントの茶円茜さんと、朝の打ち合わせから夜の振り返りまでたくさん話をしています。そのなかで「グループワークのこういう部分が自分は苦手」みたいな話が出て、茶円と私とで違いがあったんですよ。今回のグループワークの進め方について打ち合わせていて、意見が正反対になった部分があったんです。あれはすっごく興味深かったなぁ。もっと突き詰めて考えたい。茶円は世田谷パブリックシアターのワークショップ活動でも活躍していて、いつも優秀な進行役と一緒に仕事をしています。話してみてすぐにわかったが、茶円は頭がいい。ワークショップについての考えが深い。私は得るものが多かったです。茶円、忙しいのに一日付き合ってくれてありがとう。ちなみに今回の『フォーカス』のグループワークの進め方は、強いて言えば茶円にとってやりやすく、私にとって苦手なパターンです。茶円の意見を聞いて当初の予定を変更したのです。なにがそうなのかは内緒ですよ。

写真  ワークショップの終盤。久しぶりにペンキ屋をやりました。50音順の会話を車座で2セット。ペンキ塗りルールで3部屋。3部屋目ではBGMとしてエルトン・ジョンの「ユア・ソング」をかけています。いい曲だぞー。いい話になるぞー。設定は高校3年生の夏です。こう、「ベタにかっこいいセリフを臆面もなく言ってみたい欲求」が満たされますよねー。そういう欲求、ありませんか? 私にはあるよ。これは演劇で遊ぶ醍醐味のひとつだなーと真顔で思います。写真は茶円が自分の携帯で撮ってくれたものです。茶円、ありがとうな。じつはデジカメの電池が不調で、ワークショップ中盤以降の写真が1枚も撮れていないのです。私の不手際。私のバカ。今回のワークショップはこれにて終了です。ご参加くださったみなさん、ありがとうございました。お疲れさまでした。ぜひまた遊びにいらしてください。

写真  今回が通算で60回目のワークショップでした。このワークショップは私のライフワークのようなものです。2001年2月の第1回が第1歩。それから7年半かかってここまで60歩です。1歩ずつ足を踏み出してここまで歩いてきました。思えば遠く来たもんだ。この60歩目を踏まえて、早く61歩目を踏み出したいです。もっともっと、どんどん遠くまで歩いていきたいなぁ。次の1歩の日程が決まり次第、すぐにウェブ上でご案内いたします。私の地道な徒歩旅行にどうぞお付き合いください。オールウェイズ道連れ募集中です。

 不等辺△劇団WS管理部 林成彦(はやしなるひこ)


写真  今回アシスタントをさせていただいた茶円です。

 私は、劇場や小中学校などで演劇ワークショップのアシスタントの仕事をしていたり、最近は自身で表現のワークショップをしています。
 林さんのアシスタントをするのは初めてだったので、前回は参加者として参加していました。

 2回参加してみて、来る人もやる内容も回によって違うので、色んな楽しさがありつつ、林さんならではの落ち着いた進行の地盤は変わらず。

 子供の頃のように遊び、その場だからこそ考えみんなでつくれる演劇をしてみる。
 大人になってしまった人の遊び場だなぁと思いました。

 個人的にスキップで鬼ごっこをしている様子は、見ている方も面白かったです。


★アンケートより

写真 ○疲れた(笑)。いい意味で。いっぱい走って笑いました。
○予想以上に演劇でした!!
○レベル高くてびっくりです。
○初対面同士のメンバーが遊びで知り合っていく過程は自然でよかったです。
○他のワークショップなどと比べて、いい意味で力を抜いた感じで楽しかったです。
○今日は大勢参加者がいてそれぞれ個性豊かで柔軟な発想に大変刺激を受けました。
○人数が多かったけれど、多いときならではのわいわいガヤガヤした楽しさがあった!!
○時間を忘れてしまうくらい充実していたと思います。ありがとうございました。
○老若男女がそろっていて色々な面があって非常におもしろかったです。それぞれの思う小6の子供像の差とか。
○日頃運動不足な私には鬼ごっこはキツかったけれども、いい運動になったなーと思いました。
写真 ○お題に合わせてポージングするのが楽しかったし難しかった。
○形容詞・名詞・動詞を適当に組み合わせてそれを体で表現するゲームはおもしろかったです。
○焦点(フォーカス)はとても勉強になりました。
○視点を当てるエクササイズは初体験でよかったと思う。
○品詞2つで出されたグループワークが特に楽しかった。つくって演じるとはいいものだと思いました。
○3つの芝居が3チームともとてもチームワークがよかった。
○グループワーク、最後の言葉リレーは今後も練習してものにしていきたいです。
○ペンキ塗りがおもしろかったです。
○ペンキ塗りも新鮮でよかったです。作業しながらの会話は日常の中で親密になる豊かなものだなと思いました。
○「ペンキ」がおもしろかった。わっかになってやるよりもやりやすかったです。
○ペンキ塗りは観るのも演るのも大好きなので、今日できてうれしかったです。
写真 ○うーん! ペンキ塗り、難しいですね。自分のセリフによって以降の内容が変わっていくかと思うと、責任感を感じてしまいます。でもこれが演技の基本なんだろうなー。
○毎回毎回知らなかった方々と交流するって、最初は緊張感がなくならないのですが、いつの間にかいろんな人と話せるというのもすごいですね。
○心(腹?)と声がつながった瞬間はとても自然に声が出てセリフが言えて、思いついただけのセリフを言うときは少し苦しくてあまり響かないという体験を初めてしました。これは財産になりそうです!! 本当にありがとうございました。
○ワークショップは色々な年齢、職業だとおもしろいですね。久々のワークショップでもあったのでたっぷり楽しみました!
○言語コミュニケーションの難しさを改めて感じました。哲学思想でいう「言語ゲーム」(言語の本質は意味にあるのではなく、その使用法にあるというもの)が思い浮かびました。言語が通じることが人々の共同性を支える基盤であり、それでいて「正確な相互理解」は不可能だけれど、「あいまいな了解」の上に習慣的に成立していることを身をもってわかりました。
○毎回のネタを考えられるのはすごいことです。(お一人で? もっとHP(ブログ)見ます)
○アシスタントの茶円さんも明るく、くるくるアシストしててよかったです。

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