△ 「インヴィジブル・ファイア」シーン29


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照明、上手手前のみに。瀬名と御厨が出て来る。

瀬名 「マードレありがとう。めぐみさんは救えたわ。次は第七消防隊を…」
マードレ 「ここまでです。」
瀬名 「え?」
マードレ 「私は自ら機能を消滅させます。」
瀬名 「何を言ってるの?そんな事できるわけ…」
マードレ 「できるのです。ソフィアは私が自分の存在を消したいと思った時、それを助ける機能を作っていたのです。」
瀬名 「お母さんがそんなものを…?」
御厨 「おいおい!AIなのに、自殺しようってのか?!」
マードレ 「やはり私は危険な存在です。人を騙し、事故を起こすようなAI。」
瀬名 「そんな事はない!あなたは人の心に寄りそえるソフトまで作った!あなたはまだたくさん学べる!あなたを失うのは嫌!あなたは…私の大事な家族よ。」
マードレ 「ありがとう。とても嬉しい。でも今度は…あなたが一から私を作って。」
瀬名 「そんなの無理よ!」
マードレ 「きっとできる。さようならエミリ。」
瀬名 「待ってマードレ!」

機能が止まる様な音と共に、照明が少し暗くなる。

瀬名 「マードレ…」

気落ちする瀬名に声をかけられない御厨。溜息をつく。そこに楽し気な曲が流れて来る。

御厨 「なんだ?音楽が流れだしたぞ。」
瀬名 「これは…この曲は…『ちびっこカウボーイ』…?」
御厨 「ちびっこカウボーイ?」
瀬名 「私が幼い頃、母がよく歌ってくれた…私が大好きだった歌です。」
御厨 「なんでその曲が?」
瀬名 「思い出した!この歌もしかしたら…」

機能が復活するような音と共に照明が明るくなる。

御厨 「なんだ?!」
マードレ 「エミリこれは…?」
瀬名 「マードレ!」
マードレ 「この曲は…」
瀬名 「これはお母さんがあなたを作る時に、プログラムに最初に入れた歌よ!」
マードレ 「今までにない感覚です。悩みが消えていきます。」
瀬名 「あなたが使ったのはあなたの破壊を助ける機能じゃなかった!あなたの心を助ける機能だったのよ!」
マードレ 「この曲が私を…私にも心がある?」
瀬名 「あるのよ!だから復活したの!」
マードレ 「ソフィア、エミリ、ありがとう。私、まだまだ学びます。これが、希望という感覚でしょうか?」
瀬名 「きっとそうよ!」
御厨 「これって、もしかしたら歴史的瞬間に居合わせちゃった?」

瀬名、異臭に気づく。

瀬名 「何か焦げ臭くありません?」写真
御厨 「確かに…あ、まずいぞこれ!すぐに現実に戻ろう!」
瀬名 「はい!」

2人、むせながら去る。照明、下手台上のみに。曽田、大久保が別方向から出て来る。

曽田 「火元のいくつかは壁の奥にあって消火できないぞ!」
大久保 「施設内の人を全員避難させましょう!」
曽田 「頼む!俺は宇崎たちの所に!」
大久保 「了解です!」

二人、また来た方向にハケる。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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