△ 「インヴィジブル・ファイア」シーン2


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消防車の鎮火信号の音。字幕『東京消防庁 多摩消防署 桜ヶ丘出張所』
明転すると消防士の宇崎俊宏(うざきとしひろ)がタオルで顔を拭きながら出て来て腰を下ろし溜息。
後から同僚の曽田篤(そだあつし)が現れる。結構着替え終わっている。

曽田 「お疲れ〜!」
宇崎 「お疲れ…着替え早っ!またあれか?」
曽田 「まあね。」

後輩の大久保正人(おおくぼまさと)が現れる。

大久保 「お疲れ様です!」
宇崎・曽田 「お疲れ!」
大久保 「お2人とも非番なのにご苦労様です…着替え早っ!」
曽田 「はっ!これから飲食店の防火点検へ行ってまいります!」
宇崎 「合コンだろ?」写真
曽田 「そうとも言います!」
大久保 「やっぱり。」
曽田 「なんにせよさっきの現場がボヤで済んで良かったよ。」
宇崎 「もう少し遅かったら、本人も近隣の家も危なかった。」
大久保 「あれ、自分で部屋に灯油まいてますよね。」
宇崎 「ああ、最近多いよな、あの手の自殺未遂。」
曽田 「そう言えば聞いた?こないだの飛び降り未遂男、あの後逮捕されたって。」
大久保 「あ、ニュース見ました。悪質なネット荒らしだったって。」
曽田 「なのにネットに自分の情報全部晒されて絶望。で、自殺未遂。自業自得だよ。」
宇崎 「けど、そんな奴の命でも救うのが我々のお仕事。」
曽田・大久保 「その通り。」
曽田 「おっと、そろそろ行かなきゃ。」
宇崎 「曽田。」
曽田 「何?」
宇崎 「まだ煙くさい。」
曽田 「大丈夫。今日、焼肉。じゃ、失礼します。」

曽田ハケる。

宇崎 「『焼肉焼いても家焼くな』だな。」
大久保 「ことわざですか?」
宇崎 「いやいや、昔のCM。知らない?カンカンカンカンバンサンカン…」
大久保 「いや、ちょっとわかんないっす…」
宇崎 「だよな。」

大久保のスマホからベルの音。

大久保 「あ、失礼。」

大久保、スマホをチェック。

大久保 「お〜ごめんごめん、今ご飯あげるからね〜」写真
宇崎 「なに?」
大久保 「あ、これゲームです。動物育てるやつ。」
宇崎 「ああ『アニマル・ノア』?」
大久保 「そうです!アニノですアニノ!宇崎さんもやってます?」
宇崎 「いや。うちの妹がはまってる。」
大久保 「あ、めぐみさんですか。いやでもこれ凄いっすよ。育てるだけじゃなく、冒険もできちゃうし。」
宇崎 「あれだろ?企画から制作まで全部AIが作ってんだろ?」
大久保 「そうなんですよ!でもまさか動物に対する愛情をAIに教えてもらうなんて思わなかったです。」
宇崎 「そう聞くと、なんかちょっと怖い気もするけどな。」
大久保 「あ、動物と言えば、宇崎さん、さっきの現場に猫かなんかいました?」
宇崎 「え?猫?なんで?」
大久保 「いや、なんか猫でも見つけて追いかけてる風に見えたんで。」
宇崎 「え?…いや、まさか、別になんにも追いかけてないよ。」
大久保 「そうですか。気のせいか…」

奥から隊長の声。

隊長の声 「大久保〜!ちょっといいか〜?」
大久保 「あ、隊長だ。今行きま〜す!(宇崎に)じゃ、失礼。」

大久保、去る。宇崎溜息。宇崎のスマホにメール着信音。宇崎スマホをチェック。

宇崎 「ん?なんだめぐみか…え?また仕事で遅くなる?連日じゃないかよ…待てよ…ほんとに仕事なのか?…まさか悪い虫でもついたんじゃ…。とりあえず帰ろう。」

宇崎、そそくさと去る。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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