△ 「インヴィジブル・ファイア」プロローグ3


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暗転中に音楽がかかり字幕とナレーション。
字幕『都市伝説』

ナレーター 「都市伝説。信用するには眉唾な噂ばかりだが、その中にはいくつか真実が隠れている。」

字幕『心霊現象 宇宙人 秘密組織 超能力者 妖怪 魔族』の文字が、ナレーションと共に画面に。

ナレーター 「心霊現象 宇宙人 秘密組織、超能力者、妖怪、魔族といった存在が、人知れず事件を起こし、人知れず解決されている。」

字幕の文字が消えていく。

ナレーター 「そしてまた、新たな事件が…」

字幕『2033年夏』『警視庁公安部特務8課』明転すると音楽フェードアウト。公安8課の部屋。
客間里子(かくまさとこ)はパソコンで作業、、課長の御厨猛(みくりやたける)がそれを覗き込んでいる。

御厨 「どうだ?」写真
里子 「間違いなさそうです。」
御厨 「(溜息)また面倒な事になるなぁ…」
里子 「だからあの人たちを呼んだんですよね?」
御厨 「まあそうだが…石倉さんは?」
里子 「まだ連絡着きません。海外旅行中ですからね。娘の愛さんにも連絡してもらってますが。」
御厨 「しょうがない。とりあえずあの2人だな…(時計を見て)まだか?」
里子 「そろそろですよ。」

自動ドアの音。

里子 「ほら来た。」

奥から2人の男が出てくる。スーツの男はダブの日本支部長 角田一郎(つのだいちろう)。
ラフな出で立ちの男はダブのエージェント上底友吉(あげぞこともきち)。

上底 「よう!御厨ちゃんお久しぶりぶり!」
御厨 「気持ち悪いくらい変わってないな、上底。」
上底 「良く言われます。おお、里子もぶりぶり!」
里子 「ぶりぶり。角田さんもわざわざありがとうございます。」
角田 「元気そうだな。」
里子 「はい。」
上底 「久々にすごいメンツが揃ったんじゃない?」
御厨 「妖怪、ほぼ妖怪、超能力者。まともな人間は俺だけだ。」
角田 「人間なのは認めるが、まともかどうかは。」
上底 「それな。」
御厨 「てめ〜ら…」
里子 「はい、それじゃ本題に入りましょうか?」
御厨 「(咳払い)…だな。」
里子 「今回お二人にご足労頂いたのは…」
上底 「例のネット炎上の消防士の件だろ?」
里子 「ええ。ここ数か月で急激にネット荒らしやネット犯罪の容疑者が検挙されてるんですが…。」
御厨 「加害者も被害者も口を揃えて『ネット消防士』の存在を主張し、警察もその正体を探り始めた。」
上底 「ありがたいじゃん。ネットで悪さしてる奴らをこらしめてくれてるんだから。」
御厨 「その消防隊の手口も違法だ。しかも相手をネット処刑にするんじゃ、犯罪者と変わらん。」
上底 「うわぁ、警察っぽい考え方だこと。」
御厨 「警察だからな。」
里子 「実際、ネット処刑にされた人の自殺未遂が増えているのも問題ですし。」
角田 「これまでの捜査は?」
里子 「初めはハッカーやクラッカーの線で捜査してたんですが、行きつく先は全てデッドエンド。」
御厨 「ネット専門の捜査官たちがみんな根を上げちまった。」
角田 「つまりこの首謀者の正体は、とてつもない高度な技術を持っている者か、あるいは…」
上底 「超能力者じゃないかって事ね。」
御厨 「それで捜査がうちら8課に回ってきて…」
角田 「それでも厳しいんで、うちらダブのメンバーにも声がかかったってわけだ。」
御厨 「ああ。」
上底 「でも、能力者の俺が呼ばれたのはわかるけど、なんで妖怪の角っちまで?」
里子 「実は、あるものをみつけちゃったんですよ。」
上底 「何々?」
里子 「(パソコンを操作し)これです。」

みんなパソコンを覗き込む。

上底 「え?もしかしてこれって…」
角田 「結界か?」
里子 「ええ。ネットに結界。通常の人間は気づく事すらできません。」
上底 「すげえな。ネットの結界ってこんな感じなんだ。」写真
角田 「結界を作り出せるのは、妖怪、ヴァンパイア、魔族、超能力者…その中でもごく一部だ。」
上底 「里子も作れるよね?」
里子 「どちらかというと壊す方専門ですけど。」
御厨 「いずれにせよ人間には無理だ。」
上底 「お〜い。超能力者は人間だよ〜。」
角田 「今わかっている情報は?」

後ろの台上が明るくなり、ホースを持った消防士、せんたが現れ、消火のジェスチャー。

里子 「共通している情報は、ネットが炎上し始めるとスマホやパソコンの画面に消防士のアバターが現れ、自分の投稿や批判のコメントの全てを消すというもの。通報する方法はなく、むこうが発見し勝手に来るそうです。」
角田 「パソコンには疎いが、ネットの炎上をそんなに早く発見できるものなのか?」
里子 「不可能に近いと思います。しかも、助けに来るのは悪質な被害を受けた炎上の場合のみ。」
角田 「悪質かどうかも即座に判断できるってことか。」
里子 「相当高度な監視システムでもないと…」
御厨 「そんなもん、警察はおろか政府ですら持っていない。」
里子 「画像の記録はありませんが、目撃者の情報では消防士のアバターは3人。」

台上にめい、らくすけも出てくる。

里子 「自ら第七消防隊だと名乗っているそうです。」
上底 「第七って事は他の隊もあるの?」
里子 「いえ、今のところ第七消防隊しか現れた報告はありません。スタイルはアメリカの消防士風ですが、おそらく日本人ではないかと。」
上底 「なんで?」
御厨 「今の所、この国で起きた炎上にしか現れていない。」
里子 「しかもヘルメットの真ん中に漢字が一文字書いてあったと。」
上底 「漢字?なんて字?」
里子 「漆(うるし)です。」写真

消防士が『漆』と書いたプラカードを掲げる。

上底 「漆?」
角田 「なるほど。」
上底 「え?何がなるほど?」
角田 「漆は漢数字の七の旧字体だ。」

プラカードを裏返すと『七』の文字。

里子 「お流石です。」
上底 「伊達に400年も生きてませんね〜。」
御厨 「よ…400年?!!」
角田 「おおよそだ、実年齢は忘れた。」
御厨 「400歳…で…いらっしゃったので…ございますね…」
角田 「急に敬語を使わなくていい。」
里子 「もう年上とかいう年齢差じゃないですよ。」
御厨 「そう…だな…。」
角田 「ん?…七?…七…」
上底 「え?どうかした?」
角田 「あ…いや、なんでもない。」
里子 「あれ?なにこれ?」
御厨 「どうした?」
里子 「パソコンが急に動かなくなりました。」
御厨 「おいおい勘弁してくれよ?」

電気がビリビリいうような音がする。

里子 「あれ?手がしびれてきた。」
御厨 「静電気か?」
上底 「ぱちぱちくん?」
角田 「いや…これは…みんな気をつけろ!!」

突然雷鳴の様な光と音。

全員 「うわああああ!!!」

一度暗転するが、角田と後ろの台上の3人にサスが当たる。3人角田に呼びかける。

消防士3人 「どわすれ〜!」写真

角田、顔をあげる。

角田 「…お前たち…」

再び雷鳴が轟き暗転。

里子 「停電?みんな無事ですか?!」
上底 「生きてるよ!」

明転すると里子、御厨、上底がしゃがみこんでいる。角田の姿は消えている。

里子 「あ、電気ついた。」
御厨 「無事の様だな。」
上底 「びびった〜。」
里子 「パソコンも元に戻ってます。」
御厨 「一体何がどうなったんだ?」
上底 「あれ?角っちは?」
里子 「角田さん?」

3人で探し始める。

里子 「え?…待って下さい!またパソコンが!」
御厨 「なに?」
里子 「画面が乱れてます。」
上底 「さっきの影響?」
里子 「わかりません。…あれ?音が…音声になにか…」
御厨 「音量上げろ。」

里子が音量を上げると雑音の中に角田の声が聞こえる。

角田の声 「…みんな…すまん…」

すぐに音声が消える。

里子 「え?音声消えました。」
御厨 「今のって…」
上底 「間違いない、角っちの声だ。」
里子 「角田さん!角田さん聞こえますか?!…あ…画面がまた元に戻りました…」
御厨 「おい…これってまさか…」
上底 「角っち…この中に?…」
里子 「そんな事って…」写真

音楽がかかり暗転。
オープニング
字幕『不等辺さんかく劇団 35周年記念公演』映像。火が起こり、やがて一面に広がる。
その炎が爆発するように散り、タイトルが現れる。タイトル『インヴィジブル・ファイア』
ロゴの周りには数か所火が燃えている。炎は再びタイトルを包むように広がり全面へ。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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