△ 「迷い子なカミサマ」シーン29


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全体明かり。VIPルーム。
上手台上から田中、熊耳、平泉、亜子、あきら、幸恵、ナユタ、佐藤が出て来る。ぞろぞろと下に降りながら。

田中 「VIPルームに着きました。」
幸恵 「何ここ?!」
ナユタ 「VIPルームというより…」
幸恵 「巨大なシェルターみたい。」
田中 「そう、まさにシェルター。いざという時に魂の避難場所になります。」
亜子 「魂の避難所…」

下手台の上から新任神様が出て来て下へ降りる。

新任神様 「ここなら「外から」も「外へ」も影響なく事を進められます。」写真

ランゼ、ミルキー出て来る。

ランゼ 「VIPルームでかっ!!」
亜子 「みんな戻って来た!」
田中 「神様、ご無事でなによりです。」
みんな 「神様?!」
平泉 「ってあの子だったの?」
熊耳 「じゃ、もしかしてもう一人のめがねの女の子が…」
佐藤 「閻魔大王様です。」
平泉 「え〜。」
ナユタ 「2人とも小さい。」
新任神様 「すみません。ここでは生前の姿になるもので。」
幸恵 「生前?神様の?」
新任神様 「霊界の神も閻魔も元は人間なんです。私も人間でした。死んだ後30代目の神様に。」
熊耳 「30代目?」
亜子 「神様って交代するの?!」
新任神様 「先代は生まれ変わって人間になってます。」
あきら 「ば!ぼべぼ!」
新任神様 「あ、そうだ。」

新任神様、あきらに手かざし。ヒュウという風の音で術が解ける。

あきら 「それも!…あ、やった!言葉が戻った!」
幸恵 「よかった…」
新任神様 「どうしてあなたがこちらの世界の事をたくさん知っているのか不思議でしたが、やっと全てがわかりました。」
あきら 「教えて下さい!」
新任神様 「でも今はちょっと…」
あきら 「どうして?」
新任神様 「心を読まれてはまずいんで。」
あきら 「心を読まれる?誰に?」
新任神様 「あいつです。」

上手台からスーザン登場。

スーザン 「なめられたもんだな。」
ランゼ 「スーちゃん!」写真

田中、佐藤、ランゼ、ミルキー、平泉、ナユタが前に出る

田中 「予想より早かったな。」
スーザン 「さあ、コアを渡してもらおう。」
新任神様 「アモン。ここでは魔界の半分も力が出ないはず。あなたが不利ですよ。」
スーザン 「逆だ。お前たちの考えは全て読める。素直に渡せば命は助けてやろう。…ほう、コアが誰だかお前たちもわかっていないのか。」
佐藤 「お前はわかっているのか?」
スーザン 「ああ、そこの神様が3人に絞ってくれたお陰でで助かった。」
あきら 「3人?」
スーザン 「神幸恵、原亜子、熊耳志々雄の3人。だがここで、はっきりした。コアである人間には超能力は覚醒しない。」
あきら 「じゃ、コアは…」
スーザン 「そう。この3人の中で、超能力を持たない人間は一人だけ。原亜子だ。」
亜子 「え?私?!」
平泉 「やっぱり亜子がコアだったの?」
スーザン 「渡してもらえないなら仕方ない。こちらからもらいに行く。」
ランゼ 「神様。ここで人を殺したら地獄に行く?」
あきら 「え?」
新任神様 「状況によります。」
ランゼ 「ミルキー。」
ミルキー 「ええ、スーザンを殺しましょう。私たちの手で。」
ランゼ 「うん。」
ミルキー 「ナユタさん。スーザンの中からアモンの魂が出て来たら斬って。」
ナユタ 「いいんですか?仲間なのに。」
ランゼ 「仲間だからよ。」
ナユタ 「…わかりました。」
スーザン 「ハハハハ。中々面白い選択だ。」
田中 「神様。」
新任神様 「あと少しです。それまで我々も。」
佐藤 「了解です。」

暫(しば)しのにらみ合いの後

ミルキー 「レベル7で行くよ。」
ランゼ 「ごめんねスーちゃん。」

激しい戦いが始まる。相当のスピード。
ランゼ、ミルキーは銃撃。ナユタは刀、それを田中、佐藤、新任神様は援護。平泉はあきらたちの防御。
スーザン、ミルキーとランゼに

スーザン 「やはりためらいがあるな。仕留めるならちゃんと急所を狙ってこい。」写真

ランゼ、ミルキー、弾き飛ばされる。今度はナユタに

スーザン 「お前メンテナンスの途中だな?あちこち傷だらけじゃ勝ち目はないぞ。」

ナユタ、弾きとばされる。

ナユタ 「くそぉ…」
ミルキー 「強い…」
スーザン 「心が読めると言ったろ。」

亜子を守るように新任神様、田中、佐藤、平泉、熊耳、あきら、幸恵が立ちふさがる。

スーザン 「まったく、面倒な。仕方ない。こいつらも使うか。」

上手台からフラフラと魔族3人が出て来る。

石倉 「ちきしょう。こんな目に合わせやがって。」
新任神様 「しぶとい奴らね。」
スーザン 「コアを渡せ。それとマケニャストーンもだ。でなければ一人一人始末する。」
新任神様 「どちらも渡すわけにはいきません。」
スーザン 「そうか。お前たち、3人でならこいつらを殺せるな。」
石倉 「おうよ…」
スーザン 「始末しろ。」
鈴木 「バラバラに刻んでやるでやんす。」
納谷 「誰から刻んじゃおうか?」

3人襲い掛かる瞬間に。下手台から閻魔が現れる。

閻魔 「やめた方がいいですよ。」
スーザン 「チッ、閻魔か。」
新任神様 「閻魔さん、ギリ!」
閻魔 「危ないとこだった。」
スーザン 「お前か来たところで形勢はかわらん。」
閻魔 「いいえ。そこの人間は誰一人殺せないわよ。」
スーザン 「なに?」
閻魔 「一人でも殺したら、コアの亜子さんが消えてしまうけど、いいの?」
スーザン 「コアが消える?どういう意味だ。」
閻魔 「ミルキーさん。あなたがスキャンした皆さんの情報、勝手に調べさせてもらったわ。」
ミルキー 「え?いつの間に?」
閻魔 「亜子さんのDNAから、ここにいる人間全員のDNAがみつかったの。」
全員 「え?!」写真
閻魔 「つまり亜子さんはここにいるみんなの子孫。誰か一人でも殺せば、千年後に彼女は生まれない。」
亜子 「みなさんが私の…ご先祖様って事ですか?」
閻魔 「ええ、ナユタでさえね。」
ナユタ 「私は有機ドロイドです。子孫は残せません。」
閻魔 「いいえ。あなたの脳細胞からクローンが作れる。」
ナユタ 「私のクローン?…亜子さんは私のクローンの子孫?」
閻魔 「もちろんお前が乗っ取っているスーザンも、亜子さんのご先祖様だ。」
スーザン 「いい加減な事を!」
閻魔 「疑うのなら、心を読んでみればいい。」

スーザン、心を読む。倒れた全員、亜子に近づいて行く。

スーザン 「…バカな…そんな事が…」
納谷 「こいつらもコアの先祖の一人なの?」
石倉 「おい、アモン!本当なのか?」
鈴木 「本当なら、打つ手がないでやんす。」

全員で亜子を守るように囲む。

新任神様 「さあ、奪えるものなら奪ってみなさい。」
スーザン 「おのれ〜…」

後ろからポールが一升瓶を持って登場。

ポール 「皆さん。準備OKです。」
スーザン 「貴様は…」
納谷 「あ、さっきは美味しいお酒ごちそうさまでした。」
ポール 「いえいえ。」
スーザン 「お前ら飲んだのか?」
石倉 「一杯だけ。」
鈴木 「美味かったでやんす。」
佐藤 「今です。熊耳さん。」写真
熊耳 「やっと出番か!」

熊耳、魔族たちに手かざし。

熊耳 「とお!」

魔族たち苦しみ出す。

魔族たち 「うぐぐぐ!」
スーザン 「なんだこれは?!」
佐藤 「熊耳さんの超能力、プルアウター。あんたたちの魂を引きずり出します。」
スーザン 「ハハハハ!そんな真似をすれば、この人間の魂も一緒に抜けてしまうぞ!」
新任神様 「ご心配なく。そのために薬を使ったので。」
スーザン 「く、薬だと?!」
ポール 「はい。先程のお酒です。」
スーザン 「酒?!」
石倉 「しまった!」
鈴木 「あれ、薬だったでやんすか?!!」
納谷 「おいしかったのに〜!」
スーザン 「私は飲んでいないぞ!」
ポール 「浴びても同じですよ。」

熊耳、更に力を込める。

熊耳 「とおお〜っ!」

アモン以外の三人の魔族、叫ぶ。

3人 「ぎゃああああ!!」

3人、魂が抜けてへたり込む。

閻魔 「魂が抜けた!」
ナユタ 「私が!…」
新任神様 「待って!ここはマスターに!」
ナユタ 「え?」
新任神様 「マスター!お願いします。」
ポール 「はい。」

ポール、一升瓶の蓋を開けると突風の音。ぽんぽんぽんと音がして蓋を閉める。

ポール 「三ちょあがり。」
スーザン 「なんだ?!」
ポール 「お仲間3人の魂は、ここに封印しました。」
スーザン 「なにい?!」
みんな 「凄い!」
ポール 「さ、あなたもどうぞ。」
スーザン 「冗談ではない!!」
熊耳 「とおおお!!」
スーザン 「こなくそおおおお!」

スーザン踏ん張る

閻魔 「しぶといな。」
熊耳 「あと一押し〜!」
スーザン 「もうどうでもよい!この体も道ずれにしてくれる!!」
ランゼ 「スーちゃん!」写真

銃声が響き、スーザンがひるむ。

スーザン 「ぐあ!ちくしょおおお〜!!!」

ついにアモンの魂か抜け、スーザンへたり込む。
ポールが瓶のふたを開け、突風の音ともに瓶に吸い込まれる。辺りが静かになる。

ポール 「はい終了。」
新任神様 「これで魔族は全て封印しました。」

みんな安堵。熊耳、へたり込む。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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