△ 「迷い子なカミサマ」シーン22


トップページ > ページシアター > 迷い子なカミサマ > シーン22 【公演データ

<前一覧次>

明転。全体明かり。街中の路地裏。上手から魔族3人とあきらが出て来る。

石倉 「くそ、またここか?」写真
鈴木 「どの道に行っても結局この路地裏に戻っちまうでやんす。」
石倉 「コアはまだコントロールできないのか?!」
納谷 「これ、入り方が違ったのかも。一回術を解くよ。」

納谷、あきらに手かざし。ヒュッという術の音。あきら、術が解ける。

あきら 「あれ?なんだ?どうしたんだ?」
納谷 「ちょっとじっとしててね。」

上手から他の待機組が出て来る。

田中 「いたいた。」
石倉 「ほら見ろ、追いつかれちまった!」
幸恵 「あきら!そこから離れて!」
あきら 「え?」

石倉、すかさずあきらを押さえる。

石倉 「動くな!こいつを刻(きざ)むぞ!」
あきら 「し、師匠?!なんですかこれ?」
熊耳 「そいつら3人が魔族に乗っ取られていたんだ!」
あきら 「え?うそ?!」
佐藤 「彼を刻んだらお前たちも困るだろ。」
石倉 「心配するな。人質はまだいる。」

鈴木、納谷、自分の首を絞めるポーズ。

鈴木 「こいつらの体でやんす。」
平泉 「最低ね。」
鈴木 「それ、魔族には最高の誉め言葉でやんす。」

ナユタが飛び出す。

ナユタ 「おのれ魔族め!」
納谷 「ナユタさん。」

ナユタ止まる。

ナユタ 「はい。あなたと石倉さんと鈴木さんとスーザンさんは魔族ではない。」
納谷 「せいか〜い!」
あきら 「え?」
納谷 「ナユタは私の術中(じゅっちゅう)よ。」
幸恵 「そんな…」
亜子 「あの、いまスーザンさんの名前も…」
石倉 「その通り。やつも魔族さ。」
熊耳 「4人だったのか…」

田中が携帯を出すが

石倉 「もし向こうのチームに連絡したら…」
鈴木 「速攻こいつらを刻むでやんす。」

みんな歯がゆい状態。

石倉 「残念だったな。神様、閻魔さま。」
田中・佐藤 「…え?」
石倉 「とぼけても無駄だ。このタウロス様の目はごまかせんぞ。」

田中、佐藤、顔を見合わせ、小さく小刻みにうなずく。

田中 「良く見破ったな。いかにも私が神で…」
佐藤 「私が閻魔だ。」
幸恵 「か、神様と閻魔様?」
熊耳 「なんと…」
平泉 「確かに…」写真
亜子 「言われてみれば…」
石倉 「ちょうどいい、例の石も渡してもらおうか?」
田中 「例の石?」
鈴木 「マケニャストーンでやんす。」
佐藤 「マケニャストーン?」
田中 「あ、あれじゃない?マケニャ石(いし)。」
佐藤 「あ〜マケニャ石ね。」
田中 「魔界ではストーンって言うんだ。」
佐藤 「そっちの方がかっこよくね?」
田中 「いや、マケニャ石の方がかわいくていいよ。」
幸恵 「なにそれ?」
石倉 「有頂天界との交信ができる石だ。」
亜子 「有頂天界?」
田中 「この世界より更に上の世界です。」
平泉 「更に上?」
熊耳 「神様にもお上(かみ)がいるってことか?」
あきら 「そんな設定、僕の話には出て来ない…」
石倉 「その石で有頂天界に助けを求め、霊界は何度も危機を救われてる。」
佐藤 「その通りだ。」
鈴木 「今度はそいつを魔界のために使うでやんす。」
納谷 「さ、出してちょうだい。」

佐藤の後ろで田中が石を拾う。

納谷 「まさか神様たちが見殺しはしないわよね?」

鈴木、納谷、自分の首を絞める。

鈴木・納谷 「ぐえええ…」
佐藤 「待て待て、わかった。已むを得ん。神様、石を。」
田中 「仕方がない。我々の負けです…」

田中、石を掲げる。

鈴木 「おおお、あれがマケニャストーンでやんすか。」
納谷 「ナユタさん。あの石取って来て。ついでに携帯も。」
ナユタ 「はい。」
あきら 「やめろ、こいつらに渡すな!」

ナユタ、田中から石と携帯を奪い、納谷に渡す。

納谷 「グッジョブ!」
熊耳 「これでこの世は魔族の手に?」
平泉 「そんな…」

田中、平泉の肩をたたく。

平泉 「ん?」

田中、平泉に耳打ち。平泉驚きながらも田中の言葉を聞く。

ナユタ 「あきらを殺す。」
納谷 「そうね、あきらを…え?!」
あきら 「ナユタさん?」
ナユタ 「あなたが我々の世界を作った。という事は、過去の戦争も全てあなたが作ったストーリー。」
納谷 「ナユタさん。余計な事しなくても…」
ナユタ 「数億人の命を奪った。そして、私の家族を奪い、私をこんな姿にした。全てあなたが書いたストーリー。」
あきら 「あ、あのナユタさん?」
ナユタ 「あなたは神じゃない。悪魔だ!」

ナユタ、あきらに斬りかかる。

あきら 「うわああ!」
幸恵 「あきら!」

幸恵、飛び出すが、ナユタが刀を振り回し近づけない。

あきら 「あ、そうだ!」

ナユタ、あきらに斬りかかる。

ナユタ 「成敗!」写真
あきら 「客間(かくま)ナユタ!」

ナユタ、動きが止まる。

あきら 「失礼。」

あきら、ナユタの首の後ろ押す。ナユタ倒れる。

あきら 「良かった。僕の書いた通りだ。」
幸恵 「え?」
あきら 「「客間ナユタ」彼女の本名。ナユタが制御できなくなった時に一時的にフリーズさせるキーワードです。」
熊耳 「シリーズ3巻の中盤のシーンだ!」
納谷 「しまった、こいつもその方法知ってたわ。」
石倉 「ちゃんと調べておけ!」
納谷 「そいつの記憶にもあるはずよ!」
石倉 「え?…あ、ホントだ…」
鈴木 「しっかりしてくれでやんす。」
石倉 「うるさい!とにかく後はコアに空間の穴を開けさせれば終了だ。」
鈴木 「こいつらはどうするでやんす?」
石倉 「邪魔だ。消せ。」
鈴木 「しかしこの霊界では我々の力はそこまで…」
納谷 「じゃ、私に遊ばせて。」
石倉 「勝手にしろ。」

納谷、前に出る。

佐藤 「何をする気だ?」
納谷 「体の自由を奪いま〜す。後は〜…そうだ!言葉を原始人みたいにしちゃお!」
亜子 「原始人?」
納谷 「大丈夫、「ん」と「ば」はしゃべれるから。」
熊耳 「動けない上に「んばんば」しかしゃべれない?」
亜子 「そんなのやです!」
納谷 「これ絶対面白そう!じゃ、行くわよ!」

納谷、気を貯める。

納谷 「はああああ…」
田中 「平泉さん、行きますよ。」
平泉 「はい!」

納谷、貯めた気を投げる。

納谷 「はあっ!!」写真
田中 「今です!」

平泉、両手を突き出す。

平泉 「ミラー!」

ドーンという爆発、閃光。みんな悲鳴を上げて倒れる。
照明が戻る。みんな次々起き上がるが魔族とあきらは動けない。

幸恵 「何よ今の…」
熊耳 「体、動きますよ。」
亜子 「言葉もふつうです。」

魔族たち、体を縛られたようにウゴウゴしながら。

納谷 「んばんば…んば?」
石倉 「んば〜!!」
鈴木 「んばばば!」
幸恵 「あ、あいつら!」
佐藤 「平泉さんの超能力です。」
幸恵 「え?」
田中 「彼女のミラーという能力で、敵の術を弾き返しました。」
平泉 「私、凄い…」
亜子 「凄い。」

魔族たちとあきら、んばんば喚(わめ)く。熊耳、ナユタに近づき

熊耳 「えっと、確かナユタを回復させるには…ここだな。失礼します。」

熊耳、ナユタの首の後ろを押すと、Macの起動音。ナユタ我に返る。

ナユタ 「よくも私を操ってくれましたね。成敗(せいばい)!」

ナユタ、魔族に斬りかかる。

田中 「待ってナユタさん!」

ナユタ、止まる。

田中 「彼らはもう動けません。」
佐藤 「それに、体は元の人たちに返したい。」
ナユタ 「しかし…」
田中 「お願いします。」
ナユタ 「…わかりました。」
あきら 「んばばばんばばば。」
幸恵 「あきらが巻き添えくってますが。」
あきら 「んばば。」写真
田中 「ちょっとやってみましょう。」

田中、あきらに手かざし。ヒュウという風の音。あきら、よろよろと立ち上がる。

亜子 「術が解けた!」
田中 「いや、不完全です。」
あきら 「んばば〜。」
熊耳 「まだ「んばんば」言ってますよ。」
佐藤 「こう見えて、この魔族たちのパワーはかなりトップレベルです。」

田中、携帯を拾って電話をかける。

幸恵 「じゃ、ずっとこんな状態なの?」
あきら 「んばっ?!(うそ?!)」
田中 「(電話に)はいそうです。」
幸恵 「え、そんな…」
あきら 「んばばば〜…(マジかよ〜…)」
田中 「あ、違います、今のは電話の相手に。(電話に)あ、はい、宜しく。」

田中、電話を切る。

佐藤 「放っておいても一週間位で元に戻ります。」
あきら 「んばば〜ばん?!(一週間?!)」
田中 「大丈夫。後ほど神様がいらっしゃいます。神様ならすぐに元に戻せますよ。」
あきら 「んば〜…(よかった…)」
幸恵 「え?神様?神様はあなたじゃ?」
田中 「あ、すみません。さっきのはこいつらを騙すための嘘です。」
魔族三人 「んばば〜っ?!」
佐藤 「私も閻魔ではありません。」
魔族三人 「んばば〜っ?!」
平泉 「じゃ、さっきの何とかストーンは?」
田中 「そこに落ちてた石ころです。」
魔族三人 「んばばばば〜っ?!」
幸恵 「んばんばうるさい!!」
あきら 「んば!(そうだ!)」
幸恵 「あんたも!!」
あきら 「ん〜ばばばん…(すんません…)」
亜子 「待機場所までまだ遠いんでしょうか?」
田中 「入口までは来ましたよ。」
平泉 「え?どこ?」
佐藤 「この壁です。」
幸恵 「壁?」
亜子 「まさか…」
田中 「呪文で開けます。」
熊耳 「おお!ハリーポッターみたいだ!」
田中 「では早速…」
佐藤 「待て!この呪文、奴らに聞かれちゃまずいだろ?」
田中 「え、でも奴らしゃべれないし…」
佐藤 「いや、だってここの呪文あれじゃん。」
田中 「え?…あそうか!ダメだよ。」
佐藤 「だろ?」
幸恵 「どうしたの。」
田中 「すみません皆さん、私を囲んで下さい。」
佐藤 「小声で呪文を唱えるので。」写真

みんな、田中を囲む。

田中 「では唱えます。(聞こえないように唱える)」

ギイイというドアが開く音

幸恵 「あいた!」
亜子 「今のが呪文?」
田中 「はい。」
熊耳 「全然ハリーポッターっぽくなかった…」
佐藤 「ここから階段で地下に潜ります。」
田中 「さ、どうぞ。」

みんな田中について中ハケ。最後に佐藤が入ると、ドアが閉まる音。暗転。魔族たち「んばんば」喚(わめ)く。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

<前一覧次>


トップページ > ページシアター > 迷い子なカミサマ > シーン22 【公演データ