△ 「迷い子なカミサマ」シーン9


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明転すると談話室の外の廊下。あきら、石倉、納谷たちに、幸恵、熊耳、平泉が事情を聴いている。

あきら 「いやもう、なにがなんだか。」写真
幸恵 「う〜ん…ちょっとイッちゃってる熱狂的なファンの仕業ってのが妥当だけど。」
熊耳 「このフロアは関係者以外入れない密室ですよね。」
平泉 「ここ以外足跡一つないし。」

鈴木が入って来る。

鈴木 「失礼します。」
平泉 「どうだった?」
鈴木 「監視カメラは全て故障。目撃者もいません。」
平泉 「まじか。」
石倉 「どこか秘密の抜け道があるとか?」
納谷 「あるいは…」
平泉 「あるいは?」
納谷 「…異世界から来たとか…」
あきら 「ははは、まさか。僕の小説じゃあるまいし。」
幸恵 「自分で言った。」
石倉 「とにかくみんな怪我がなくて良かった。」
熊耳 「いたずらにしては悪質すぎますね。」
幸恵 「立派な犯罪よ。不法侵入。器物損壊。」
平泉 「殺人未遂も入るかもです。」
幸恵 「とりあえずいったん下の警察車両で待機しましょう。」
あきら 「はい。」
鈴木 「そちらのエレべーターで。」

鈴木を先頭にみんなぞろぞろエレベーターに乗り込む。エレベーター下り出す。

幸恵 「そうそう、これ。」

幸恵、あきらに財布を渡す。あきら、申し訳なさそうに受け取る。

あきら 「あ、すんませんでしたホントに。」
幸恵 「ちゃんと持ち歩いてるのね。免許証とクオカード。」
あきら 「あ、いや、まあ…」
幸恵 「あんなに父親の文句ばっかり言ってたのに。」
あきら 「いや、それは…一応、捨てるのもなんだし…」

けっこうな間。

石倉 「…あの、いいですか?すごく気になるな今の。」
平泉 「私もです。」
熊耳 「同じく。」
鈴木・納谷 「僕も。」
あきら 「あ、いや、大した話じゃないですから…」
幸恵 「父親の形見よ。」
石倉 「え?」
あきら 「おばさん…」
平泉 「免許証とクオカードが形見?」
あきら 「ええ…実は父が3年前外国で事故死しましてね。現場に落ちてた財布にこれが。」

あきら、免許証とクオカードを出す。

熊耳 「交通事故ですか?」
あきら 「いや、火山で。」
納谷 「火山?」
あきら 「火口に落ちたらしくて。」
平泉 「え〜っ?」
石倉 「なんでそんな所に?」
幸恵 「理由はさっぱり。」
あきら 「父は僕が高校の頃に仕事辞めて、世界中放浪の旅をしてたんです。子供置いて勝手な事して結局死んじまって。こんな物しか残さず。めちゃくちゃな人ですよね。あの世に行ったらぶん殴ってやりますよ。」
幸恵 「自分の弟ながらホントに情けない。せめて財布に家族写真くらい入れとけっての。」
あきら 「あ、すみませんこんな話。」
石倉 「いや、こっちこそ。」

ガタンという音でエレベーターが止まる。

あきら 「あれ?止まった?」
幸恵 「故障かしら?」写真

キーンという音とともに照明が揺れる。みんなに頭痛が起こる。

みんな 「いたたた!」
あきら 「なんだこれ?!」

熊耳、非常ボタンを押すが。

熊耳 「だめだ、非常ボタンが通じてない!」

落雷の様な音と共に暗転。全員の悲鳴。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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