△ 「スパイシー・エージェンツ」シーン2


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字幕「南浅草 喫茶結界」
明転すると喫茶店のドアのカランコロンが鳴り、服部麻美(ミー)が入って来る。店内を見渡していると、ウエイトレスの椎名琴音(コト)が出て来る。

コト 「いらっしゃいませ。」写真
ミー 「コトちゃん!」
コト 「ミーちゃん久し振り〜。」
ミー 「久し振り〜!ホントに働いてるんだぁ。」
コト 「うん。」
ミー 「ってかコトちゃん接客なんかできるの?」
コト 「(可愛らしく)失敬だな。ぶっ殺すぞ。」
ミー 「わ〜!全然変わってなくて嬉しいけど…しんぱ〜い!…あ、みんなは?」
コト 「ミーちゃんが一番。あっちの席で待ってて。」
ミー 「は〜い。」

コトはハケ、ミー席に座ろうとするが立ち止まりサスになる。

ミー 「皆さん初めまして。あ、お久しぶりの方もいますね。私は服部麻美。今年、2031年に短大を卒業し、4月から晴れて社会人1年生です!就職先は…ま、それは追々。そうだ!まず最初に皆さんに教えておかなければ。実は私、こう見えて超能力者なんです。他にも妖怪や魔族、ヴァンパイア等、人間ではない仲間がたくさんいます。ちなみにさっきのウエイトレスは高校で一緒だった椎名琴音。コトちゃん。」

コト、出て来る。

ミー 「正体は妖怪言霊(ことだま)。人の心を読んだり言葉を操ったりできる妖怪なんです。」
コト 「ウィッス!」

カランコロンが鳴り、照明が戻ると羽阿弥亜子が入って来る。

ミー 「カーコ!」
カーコ 「ミー! 」
ミー 「久し振り〜!」
カーコ 「ミー全然変わってないね〜。」
ミー 「そお?」写真
コト 「あちこち成長してないって。」
ミー 「う…」
カーコ 「こら!心読むな!」
コト 「すんずれ〜すますた。」

照明、サスに変わりカーコとコトがストップモーション。

ミー 「この子は羽阿弥亜子。正体は妖怪烏天狗。みんなからカーコと呼ばれています。カーコは剣の達人で…あ、ちなみにこの二人は今年112歳!」
カーコ・コト 「(ストップモーションのまま)それいらない情報。」

カランコロンの音がして照明が戻ると石倉愛(アイ)が入って来る。

「みんな〜!」
ミー・カーコ・コト 「愛ちゃ〜ん!」

みんな愛に抱きつく。

「う〜くるし〜」
ミー・カーコ・コト 「お〜ごめん!」

照明、サスに変わり愛、カーコ、コトがストップモーション。

ミー 「この子は石倉愛。愛ちゃん。魔族と人間の超能力者のハーフで、病気や怪我を治す治癒能力を持っています。私たちは4年前に魔界と霊界を巻き込んだ壮絶な闘いを…」

ミー以外咳払い。

ミー 「ん?」
ミー以外その話、2時間位かかるよね?」

ミー頷く。ミー以外も頷く。

ミー 「…今日は止めます。実は今日みんなが集まったのは、3日後にアメリカ留学に旅立つ愛ちゃんの送別会をするためなんです。」

照明戻る。

「わあ、コトちゃんホントにここで働いてるんだぁ。」
コト 「うん。」
「ってかコトちゃん接客なんかできるの?」写真
コト 「(可愛らしく)お前もぶっ殺すぞ。」
「わ〜!全然変わってなくて嬉しいけど…しんぱ〜い!」
ミー 「おんなじ展開。」
コト 「座って座って。」

4人、話しながらテーブル席に座る。

ミー 「愛ちゃんごめんね。結局この4人だけなんだ。」
「いいよいいよ。こっちの都合だもん。みんな忙しいの知ってるし。」
ミー 「みんな活躍してるよねぇ。」
カーコ 「ユウはヴァンパイアの戦士としてトランシルバニアで修行中。ユアはイギリスに留学中。」
「ケンブリッジでしょ?」
ミー 「凄いよね〜。」
コト 「凄いの?」
カーコ 「凄いの。」
コト 「凄いんだぁ。凄〜い。」
カーコ 「あんたのリアクションも凄い。」
コト 「ウィッス!」
ミー 「凄いと言えばやっぱりマイだよね。」
「だよねぇ。」
カーコ 「まさかのCIA捜査官だもんね。」
ミー 「あんなに勉強が苦手で、剣道一筋だったマイがだよ?」
コト 「根性は誰にも負けなかったよ。」
「根性でCIA?」
コト 「根性も才能だよ。」
「ミーは4月から例の組織だよね。」
ミー 「そう。」
カーコ 「よくお父さん許してくれたよね。」
ミー 「え?う…ん…」
コト 「え〜っ?お父さんには警察官だって言ってるの?」
ミー 「ちょっとコト!心読まないでよ!」
「え?じゃ、嘘ついてるの?」
ミー 「警察官とでも言わないと絶対許してもらえないから。」
「だよね…」
ミー 「カーコはまだボランティア活動?」
カーコ 「まあね。残念ながら災害も戦争もなくならないからね。」
「偉いよカーコは。」
カーコ 「全然。百年以上この道でやってるのに、毎度力不足を実感するよ。」
ミー 「百年以上か…」
コト 「最初のボランティアは関東大震災だもん。」
「年季が違うわ。」
カーコ 「ってかコト!あんたウエイトレスなのになんで座ってんの?」
コト 「なんでって?」
カーコ 「注文とか取るでしょ普通。」
コト 「あ、そうか。みんな、ミルクコーラでいいよね?」
ミー・愛・カーコ 「良くない!」
ミー 「それあのコーラにミルク入れたやつでしょ?」
「軽く懐かしいけど。」
コト 「じゃ、いいよね?」
ミー・愛・カーコ 「良くない!」
カーコ 「ってかなんでそんなもんメニューに入ってんの?」
コト 「おいしいよ。」
「マズくはないってレベルだと思うよ…」
コト 「結構有名だよこの店。世界一美味しいミルクコーラが飲めるって。(くるくるパーの仕草)」
ミー 「そりゃそうでしょ。世界でこの店しか出してないんだから。ミルクコーラ四つ!」
ミー・愛・カーコ 「え?」
コト 「ご注文、承りました。マスタ〜!ミルクコーラ四つで〜す!」
ミー 「しまった…油断して言葉操られた!」
カーコ 「コト!」
「反則!」
コト 「まあまあ、ここは私のおごりだから。」
ミー・愛・カーコ 「嬉しくない。」

コト、また席に座る。

カーコ 「って、また座ってるし。」
コト 「大丈夫、大丈夫。他のお客さん来ないもん。」
ミー 「え?もしかして貸し切り?」
コト 「違うよ。今、結界張ったの。」
ミー 「ああ、結界か…」
ミー・愛・カーコ 「結界?!」
カーコ 「それじゃ他のお客さん入って来れないじゃん!」
コト 「いいのいいの。儲けとか関係ないし。」
ミー 「いいわけないでしょ!クビになっちゃうよ!」
コト 「大丈夫、この店の方針だから。」
「店の方針?」

マスターがミルクコーラをトレーに乗せて運んで来る。マスターは角田。

マスター 「お待たせしました。ミルクコーラです。」
ミー 「え、ちょっと待って…」写真
「マスターって…」
ミー・愛・カーコ 「角田副校長?!」
角田 「とっくに副校長じゃないぞ。」
カーコ 「公安辞めて喫茶店のマスターに?」
角田 「確かに公安は辞めたが、喫茶店に転職した訳じゃない。この店はある組織のものだ。」
ミー 「ある組織って?」
角田 「君の就職先だ。」
ミー 「え?!WHPO?!じゃ、角田さんは…」
角田 「君の上司の一人って事だ。」
ミー 「知らなかった…え?まさかコトちゃんも?」
コト 「私はバイト。時給千円。」
角田 「この店は、言わば組織の隠れ家。作戦や会議にも使っている。」
コト 「だからお客さん来なくてもつぶれないのだ。」
「結界も張れるわけね。」
コト 「店の名前も「喫茶結界」。」
ミー 「そこはもう少しひねってほしい。」

角田、ミルクコーラをテーブルに置き始める。

カーコ 「コト!何座ってんの!こういうのウエイトレスの仕事でしょ!」
角田 「いいんだ。彼女の仕事は店に来た客の心を読む事だ。」
カーコ 「でも一応ウエイトレスなんだし…」
角田 「それに…こぼすから。」

みんな、コトを見る。

コト 「(可愛く)こぼすから。」
ミー 「角田さん、時給千円は高すぎます。」
コト 「という訳で、ここでは超極秘な事も話したい放題だよ。愛ちゃんのアメリカ行きの事とか。」
カーコ 「別にアメリカ留学は極秘じゃないでしょ?」
「あの…その事なんだけど…」
ミー 「え?なに?」
「あのね…アメリカに行く理由は、ほんとは留学じゃないんだ…」
ミー 「留学じゃない?って、じゃ…」
「コールド…スリープ…」
ミー・カーコ 「コールドスリープ?!」
「実は、またちょっと魔界に行く事になって…」
ミー 「魔界?!うそ?ちょっと待ってよ愛ちゃん。」
「ただ、私の体は人間だから、魔界へは魂しか行けないでしょ?」
コト 「魂が抜ければ愛ちゃんの体はただの死体になっちゃう。」
カーコ 「魂が戻って来るまで体を冷凍保存しとくってこと?」
ミー 「心配だよ。」
「そう言うだろうと思って言い出せなかったの。ごめんね。」
ミー 「愛ちゃん…」
「大丈夫。今度のトラブルは私が行けばすぐに解決するから。それに今あっちには父さんや仲間の魔族もいるし。心配ないよ。」
角田 「アメリカまでは俺が護衛する。」
「え?そうなんですか?初めて知りました。」
角田 「今日決まったんだ。ちょうど別件でアメリカの本部に呼ばれていてな。」
「心強いです。」
カーコ 「ミー。ここは応援してあげようよ。」
ミー 「(少し考え)…うん…そうだよね…きっとすぐに戻って来るよね。」
「約束する。ミー…」
コト 「スマイルスマイル。」
「あ、それ私のセリフ。」

みんな笑う。カーコがミルクコーラのグラスを持ち

カーコ 「それでは、愛の健闘を祈って、カンパーイ!」
みんな 「カンパーイ!!」

みんな、ミルクコーラを飲む。

コト 「おいし〜!!」
ミー・カーコ・愛 「マズくはな〜い…」

照明暗くなり、下手にサス。ミーがサスに入り込む。みんなハケる。

ミー 「3日後に、愛ちゃんはアメリカに旅立ちました。そして私もWHPOのエージェントとして新社会人スタートです!」写真

暗転し、音楽と映像
オープニング
字幕「不等辺さんかく劇団 プロデュース公演2017」
音楽に合わせて、黒服に蝶ネクタイ姿の全登場人物が一人ずつあちこちに登場。最後は全員揃ってポーズ。
タイトル「スパイシー・エージェンツ」
映像が消え暗転。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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