△ 「ガールズ・イン・ザ・クライシス」シーン29


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明転すると、朝の保健室。みんな眠っているが、柊だけ起きている。氷室が目を覚ましあくびをする。

氷室 「ふわわあ〜。ん?どこだっけここ?あ、柊先生おはようございます。」写真
「おはようございます。」

全員目を覚ます。みんな朦朧としている。

ミー 「何が…どうなったんだっけ?」
ユア 「えっと…」
客間 「確か…韓流ドラマのディスクを消された所までは覚えてる…」
ミー 「それ夢です。」
マイ 「私は確かイケメンに振られまくって…」
ミー 「それも夢。」
瀬名 「千円札が中々…」
ミー 「それも夢。」
カーコ 「みんな、この子に悪夢を見せられてたんだよ。」
コト 「よくも首を絞めやがったな。」
氷室 「え?え?何の事ですか?」
ミー 「そうか、記憶を変えられたんだっけ。」
火槌 「さあ!眠気を覚ますにはラジオ体操だ!いっち!にっ!さん!し!…」
客間 「こいつもね。」
ユア 「夢だったとはいえ、か〜なり精神的にダメージば来てんだけど…」
マイ 「ん?…待てよ…違う…この気分の悪さは夢じゃない…そうだ!」
ミー以外の女子 「王子からのラブレター!!」
ミー 「だからあれは、まだ返事を…」
マイ 「ああ!これだけは夢であってほしかった!」

みんなまたへたり込む。朦朧としていた角田が立ち上がる。

角田 「校長は?!」
瀬名 「あ、いない。」
客間 「そう言えば、校長が魔族だって!」
氷室 「デビルマン!」
上底 「そうだよ!そのあと俺たち、眠らされたんだよこの子に!」
氷室 「私も眠らされたよ。」
上底 「え?誰に?」
氷室 「お巡りさん。」
角田 「お巡りさん?ってまさか…」
氷室 「あ、来た。」写真

そこに、瀕死の校長をかかえたまほろばが入って来る。

まほろば 「そろそろ皆さんお目覚めになる頃だと思っていました。」
ミー 「校長先生?!」
カーコ 「ひどい傷!」
客間 「愛さん!傷の手当てを!…愛さん?」
ユア 「あれ?いね?」
ミー 「愛ちゃん?!」
校長 「愛は…愛はどこだ…」
まほろば 「大丈夫、講堂に隠れてもらっています。」
客間 「とりあえず応急処置を…」
校長 「大丈夫だ、かなり良くなった。」
まほろば 「発見した時は片足がもげていましたから。」
客間 「魔族の力…」
マイ 「引くわ〜…」
ささがに 「この傷は!(匂いを嗅ぐ)アモンにやられたのね!」
角田 「アモン?」
火鎚 「うちらの上司だ。」
氷室 「下界侵略作戦の隊長。強いよ〜。」
客間 「まさか校長一人でそいつと?」
火鎚 「倒したのか?」
校長 「相当の深手を負わせたが、まだ生きている。」
まほろば 「おそらく、夜には復活してしまうでしょう。」
ささがに 「まほろば〜。」
まほろば 「何です?」
ささがに 「何か隠している事があるのね。全部話すのね。」

全員まほろばに注目

まほろば 「そうですね。みなさんお揃いですし。」
校長 「あんた、何を…」
まほろば 「あなたと、愛さんの話です。」
校長 「待て、それは…」
「それ、長い話になりますよね?」
まほろば 「は?」
「その話、私が一瞬で皆さんの脳へ送ってあげましょうか?」
まほろば 「あなた何をおしゃってるんですか?そんな事できるわけが…大体話の内容を…」
「大丈夫、全部知ってますから。」
まほろば 「え?」
「知りたくない人!」

みんな手を挙げない。

「いませんね、じゃ送ります。」
まほろば 「ちょっと待ちなさい。」写真
「ただ、データが重いので、受け取ってすぐは頭が混乱するかもしれませんので覚悟して下さい。3、2、1!」

メール着信音がすると、まほろば以外、みんな一斉に頭を抱える。

全員 「うわっ!」
上底 「なんだこれ?!」
客間 「…え?メフィスト?」
カーコ 「魂の双子?」
マイ 「愛のお母さんて…」
火鎚 「俺たちが…」
氷室 「捨て駒?」
ユウ 「次元を消す力?」
瀬名 「世界が消える?!」
コト 「宇宙を救うために…」
ミー 「愛ちゃんが…そんな…」
校長 「まほろばさん、まさかあんた、愛を殺したんじゃ…!」
まほろば 「まだ殺していません!」
マイ 「まだって?やっぱり殺す気じゃん!」
角田 「やってくれましたね校長?更に結界を広げた上に、我々の精鋭達を中に入れない様にした!」
校長 「それはあなた方が娘の抹殺を決めたからです!」
カーコ 「副校長も愛を殺す気?」
「みなさん落ち着きましょう!!」

みんな、沈黙。

「やっぱり皆さん混乱しちゃいましたね。」
まほろば 「柊先生、いったいこの力は…」
「ハンドパワーです。」
ユア 「手品か?」
ミー 「それはない。」
カーコ 「しかし一気に脳に情報を送り込むなんて。」
マイ 「テストに使える。」
まほろば 「こんな技、能力者にも妖怪にもヴァンパイアにも、魔族や我々にも使えない…あなた一体何者です?」
「そのデータも皆さんに送りたい所ですが、恐らくパンクしてしまうと思うのでわかり易く説明しましょう。私は、異星人です。」
まほろば 「い…」
全員 「異星人?!!!」
「驚きました?」
上底 「…そりゃもう、だってここに来て異星人って…なあ瀬名ちゃん?」
瀬名 「いや、異星人はいるでしょ。」
上底 「え〜〜っ?!」
マイ 「木星人?土星人?」
「もっとずっとず〜っと遠くです。」
マイ 「じゃ火星人?」
「うん、近くなってますよ。」
ミー 「78億光年離れた別の銀河?」
マイ 「え?」
「お、正解です。」
マイ 「何で知ってるの?」
ミー 「前、授業中に雑談で話してた。」
「よく覚えてましたね。さすが優等生。」
まほろば 「いったいなんの目的で地球に?」
カーコ 「侵略?」
瀬名 「メフィラスか?!」
「違います。」
瀬名 「メトロンか?!」
「侵略じゃないです。」
校長 「そうか、あんたも愛を消しに来たんだな?」
ミー 「え?」
校長 「宇宙が消えるって事は、あんたの星も消える。」
まほろば 「なるほど、それを阻止するために地球に来た。」
上底 「そう言う事か。」
「違いますよ。」
上底 「違うのかよ!」
まほろば 「一体何なんですか?!」
「う〜ん、皆さんの脳じゃその話も理解できないでしょうから、ここからは地球人風に変換して説明しますね。実は…明日が締め切りなんですよ。」
まほろば 「締め切り?」
「私、学生でしてね。卒論のテーマが「地球人の生活」なんですよ。明日提出できなければ留年決定。就職が内定してるんで、しゃれにならないんです。…ってのが近いかな?」
瀬名 「…何それ?」
校長 「しかし…あなたの星も消えてしまうんですよ。」
「大丈夫、仮にここで次元消滅が発動したとしてもそのスピードは光と同じ速さです。つまり私の星が消えるまであと78億年かかります。それまでには別次元に引っ越す方法もみつかるでしょう。それより重要なのは明日の締め切りの方です!」
上底 「価値観も危機感も我々と違い過ぎるぞ。」
「とにかく、早目にけりをつけて頂きたいのでカミングアウトしました。」
校長 「手を貸してもらえるのか?」
「私は誰の味方にも敵にもなれません。そんな事したら即退学です。しかし、ヒントなら差し上げます。」
まほろば 「ヒント?」
「今からそのヒントを皆さんに送ります。今度のデータは軽いのでご安心を。じゃ、送ります。3、2、1!」

メール着信音。みんなにヒントが届く。

マイ 「あ、来た。」
校長 「これは…」
客間 「こんなの、どうすれば…」
「それをどう扱うかは皆さん次第。扱い方に寄っては悲劇に終わる可能性もあります。」
校長 「作戦会議が必要ですね。」
ささがに 「まほろば仲間に入れないのね。」
まほろば 「は?」
ささがに 「愛ちゃんに死んでもらいたいのね。」
まほろば 「だからそれは神様の命令で…」
ささがに 「命令は絶対なのね。」
まほろば 「そうですが…他に最善策があれば神様に提案することもできますし。」写真
校長 「信用はしきれませんが、今は人手が必要です。」
カーコ 「でも、副校長も愛を殺す気ですよね。」
客間 「違うわ。副校長は仲間に提案していた。愛さんを抹殺せずに保護しようと。」
上底 「え?そうなの?」
客間 「でも結局抹殺に決定。だから精鋭達が攻めて来たら一人で迎え撃つつもりだった。」
カーコ 「どう?コト。」
コト 「嘘じゃない。」
校長 「私より無茶ですね…」
瀬名 「そんな事より、早くアモンにとどめを刺しに行った方が。」
まほろば 「それは難しいでしょう。」
瀬名 「なぜ?」
校長 「今、アモンの体は散りぢりバラバラなんです。」
瀬名 「手分けして探せば…」
校長 「例え腕一本でも、皆さんじゃかなわない。ここは、夜まで待ってこの学校で迎え討つしかないでしょう。」
角田 「さっきのヒントがあれば、勝算はあるかもしれん。」
校長 「生徒の皆さんは、講堂へ。」
ユウ 「あそこなら日が当たらないから助かる。」
ミー 「愛ちゃんの所ですね。」
校長 「はい、上底先生も一緒にお願いします。」
上底 「了解。」
校長 「柊先生は体育館の生徒達を講堂へ。そのくらいはお手伝いできますか?」
「問題ありません。」
校長 「残りの方は職員会議です。」

校長、角田、客間、瀬名、柊、火鎚がハケ始める。

氷室 「タウリンも?」
火鎚 「体育教師だからな。」
氷室 「あ、そうだっけ?」

職員ら出て行く。

マイ 「教わりたくないなぁ。」
上底 「さ、講堂に行くぞ。」

見せ暗転。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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