△ 「ガールズ・イン・ザ・クライシス」プロローグ3


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嵐の音が止み、心電図の心音。字幕「一年後 2026年10月」字幕消えると男の声。

男の声 「愛!しっかりしろ愛!」

心音、フラットになる。

男の声 「愛!駄目だ!戻って来い愛〜!…」

明転すると、舞台中央にペリルそっくりの少女「石倉愛(いしくらあい)」と、iPadの様な物を持ったタキシードの男「まほろば」、カンフー服にサングラスの男「ささがに」が立っている。

「…私…本当に死んだの?」写真
まほろば 「石倉愛さん。6ヶ月前に脳梗塞で倒れ、そのまま植物状態に。今朝容態が悪化して死亡。」
「そんな…私まだやりたい事たくさん…」
まほろば 「そうでしょうそうでしょう。その歳で亡くなればねぇ。」
「父さんは?!」
まほろば 「一人娘を亡くされたわけですからそれはもう大層…」
「父さん…」
まほろば 「しかしここは気持ちを切り替えて頂かないと、地縛霊とか悪霊になってしまいますよ。」
「悪霊?」
まほろば 「成仏できなければお父さんはもっと悲しみます。」
「でも…」
まほろば 「あ、そうそう、ご紹介が遅れました、私、天国のエージェント「まほろば」と申します。」
「…ろ…」
まほろば 「ろばじゃないですよ。」
「…マ…」
まほろば 「マジシャンでもないですよ。」
ささがに 「ひゃはははは。反応早くなってるのね〜。」
まほろば 「(咳払い)このカンフーパンダみたいのは「ささがに」と言いまして…」
ささがに 「地獄のエージェントなのね〜」
「地獄?!私、地獄に行くの?!」
まほろば 「地獄に行くか天国に行くかはあなた次第。これからあなたには、生きていた時の罪を償うために仕事をしてポイントを稼いで頂きます。ポイントが溜まれば天国に。ポイントが減れば地獄に…」
ささがに 「ウェルカム!」
まほろば 「ちょっと失礼。」

まほろば、iPadを愛にかざす。ささがには匂いを嗅ぐ。

「なんですか?!」
まほろば 「いやね、最近魔界の奴らがちょいちょい妙なもん送り込む事がありまして、ちょこっと検査を。」
「魔界?」
まほろば 「手を変え品を変え、色んな手でこの霊界を攻撃して来るのですよ。」
「この人は違うの?」
まほろば 「は?」
「だってさっき地獄のなんとかって…」
ささがに 「地獄と魔界は全然違うのね!」
まほろば 「地獄も天国も死んだ魂が集まる「霊界」。地獄は悪い魂をお仕置きする所。住んでいるのは鬼。」
ささがに 「イッツミーなのね!」
「鬼…」
まほろば 「一方「魔界は」悪魔や魔獣といった邪悪な魂を持った魔族の世界。別次元なんです。お分かりで?」
「何となく…」
まほろば 「検査終了異常なしです。」
ささがに 「魔族の匂いもしないのね。」
まほろば 「よし、では、参りましょうか。」
「はい…」

突然ド〜ンと言う音が響き、嵐のような音。

まほろば 「ん?何ですか今のは?」
ささがに 「ド〜ンつった。」写真

まほろば、そらに何かをみつける。

まほろば 「あっ、あれは!」
ささがに 「おわ!穴!穴!」
まほろば 「空に…穴が?!」

愛の耳にペリルの声が聞こえる。

ペリルの声 「助けて。」
「え?」
ペリルの声 「ここならきっと…」
「誰?誰なの?」
まほろば 「どうされました?」
「今、声が…」
まほろば 「声?」
「聞こえなかったんですか?女の人の声が…」

愛、突然雷の様な爆音と光に包まれて倒れる。全員悲鳴。

「うあああああ!!」
まほろば 「…何ですか今のは?!」
ささがに 「雷みたいだったのね〜!」

まほろば、ささがに、倒れている愛に駆け寄る。

まほろば 「石倉さん?!大丈夫ですか?!石倉さん?!」

ささがに、突然退き

ささがに 「うわあああああ!」
まほろば 「どうしました?!」
ささがに 「にっ、匂いがさっきと違うのね!」
まほろば 「え?」
ささがに 「まっ、魔族のっ、魔族のっ!」
まほろば 「まさか!」

愛が立ち上がる。

まほ・ささ 「うおわあっ!」
「…ここは?…」
まほろば 「…あなた…何者ですか?」
「私は…愛…石倉愛…」
まほろば 「え?記憶はある?」
「でも…ペリルでもある。」
まほろば 「ペリル?」
「ペリルは自分の居場所を探してる。愛は元の世界に戻りたい。」
まほろば 「え?」
ささがに 「意味がわからないのね。」
「ここも私の居るべき世界じゃないの?…」
ささがに 「あ、穴が閉じて行くのね!」
まほろば 「良かった!神様が気づいて修復をして下さっている!」
ささがに 「ふわあああ!」
まほろば 「何です?」
ささがに 「穴から何か飛び込んで来たのね!強烈な魔族の匂いなのね!」
まほろば 「あれはまさか…」

舞台の後ろにアモンが降り立つ。ペリル、アモンに威嚇する。

アモン 「さすがだペリル。私ですら何万年も開けられなかった壁をいとも簡単に…」
まほろば 「何者です?」
アモン 「曲者です。」
ささがに 「魔族でも相当上の奴っぽいのね。」
アモン 「ご名答。サタン様直属の下部。アモンと申します。」
まほろば 「アモン?!お前があの…」
ささがに 「やっベ〜のが来たのね…」
アモン 「いやいや、私よりもっとやっべ〜魔獣がそちらに。」
まほろば 「この子が?…まさかこの子を使って霊界を侵略しに?…いや、しかしさっきまでは確かに人間の…」
アモン 「確かにどういうわけか人間そっくりですが、そいつはれっきとした魔族。」
まほろば 「しかしこの子は自分でも石倉愛だと…」
アモン 「さあペリル、お仕事だ。」

アモンが近づくと愛は大声を出し、天に手をかざす。すると雷の様な爆音と閃光。ささがにとまほろばは悲鳴をあげて後ずさる。

まほろば 「ああっ!また空に穴が!さっきよりでかい!」

更にもう一発

ささがに 「うわ、あっちもなのね!」写真
アモン 「パワーが格段に上がっている!すばらしい!」
まほろば 「このままじゃこの霊界は!……」
「違う…」
まほろば 「え?」
「ここじゃない…」
アモン 「(ため息)ペリル…」
「ここじゃない!!〜 」

愛、走り去る。嵐の音、愛、空の穴に吸い込まれる様に消える。

ささがに 「早っ…」
アモン 「では、私も今日はこの辺で失礼。」
まほろば 「待ちなさいアモン!」
アモン 「いずれまた。」

アモン、愛を追う様に消える。

ささがに 「これって…ちょ〜ヤバくない?」
まほろば 「はい…とんでもなく…」

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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