△ 「悩める王子の惑星」シーン48


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明転すると礎の間の入口。レーセン、クレセント、ジャスミン、ダグラスが出て来る。

レーセン 「ダグラス。入口を。」写真
ダグラス 「はい。」

ダグラス、下がる。

レーセン 「ここが礎の間。」
ジャスミン 「アーモンドは?」
レーセン 「ここでお待ち下さい。」

レーセン、ハケる。

ジャスミン 「ここって…」
クレセント 「この場所から城が造られたんだ。でも700年間、誰も入る事はできなかった。」

突然ジャスミンの腕時計から声。

ミント 「ジャスミンしゃん!ジャスミンしゃん!」
ジャスミン 「え?ミント?どうして?!」
クレセント 「電子機器が機能している?!」
ミント 「良くわかんないけど動いてる。」
ジャスミン 「ミント、このまま大人しくしてて。」
ミント 「ラジャ。」

レーセンが国王とアーモンドを連れて来る。

クレセント 「来たぞ。」
ジャスミン 「アーモンド!」
アーモンド 「…ジャスミン。僕、協力する事にしたんだ。」
ジャスミン 「え?」
アーモンド 「この星の声を700年間待っていたんだって。僕がいないと聞けないんだって。だから協力するよ。」
ジャスミン 「アーモンド…」
レーセン 「ではここに立って下さい。みなさんは下がって。」

アーモンドが真ん中に立つと地鳴り。アーモンド苦しみ出す。

アーモンド 「ううう…」
ジャスミン 「アーモンド!」
レーセン 「下がって!」写真
アーモンド 「うわああああ!!」
ジャスミン 「アーモンド!」

アーモンド光に包まれる。光が戻ると、アーモンドに別人が乗り移っている。

アーモンド 「…これは…人の体?…俺は…。」
レーセン 「あなたの名前は?」
アーモンド 「…俺の名前は…ウォルド…」
クレセント 「ウォルド?」
アーモンド 「ウォルド・H・マンテル…」
国王 「レーセン?これは一体…」
レーセン 「ウォルド・H・マンテル。地球人。1961年。アメリカ カルフォルニア州サンディエゴで行方不明になったアクロバット飛行士。」
ジャスミン 「大昔の地球人?」
レーセン 「ウォルド。約束通り仮釈放よ。」
クレセント 「仮釈放って?」
国王 「レーセン説明してくれ。救いの声は聞けぬのか?」
レーセン 「申し訳ありません。これは私の星から受けた任務だったのです。」
クレセント 「まさか…あなたも地球人ではないのか?」
レーセン 「ええ。この星に遺跡を残した別の銀河の超科学文明人。あなた方がこの星に来る300年も前からここで看守をしていました。」
クレセント 「看守?この星は牢獄?」
国王 「この、ウォルドと言う男が何か罪を?」
レーセン 「千年前、我々の銀河の調査団が地球の生き物のサンプルをいくつか採取しました。彼はその一人。ところが彼は宇宙船内で脱走し、我々の仲間を何人も殺してしまった。」
ジャスミン 「あんた達が誘拐したからじゃない!」
クレセント 「それで彼はこの星に閉じ込められたのか?しかしどうやって…」
レーセン 「この星の正体はただの惑星ではありません。」
国王 「何だと言うのだ?」
レーセン 「実は、巨大な生物なのです。」
ジャスミン 「生物?!」
レーセン 「そう。惑星型の生物。」
アーモンド 「俺は魂を抜かれ、この星と一体化させられた。この星が死ぬまでの無期懲役だ。」
国王 「この星の寿命は?」
レーセン 「100億年。」
国王 「100億年?…生き地獄だ。」写真
レーセン 「ただし、執行猶予もあった。千年に一度だけ、この牢屋を開ける鍵が来れば。」
アーモンド 「それがこのアーモンド。」
ジャスミン 「どうしてアーモンドが鍵に?」
レーセン 「鍵の条件は同じ血を引いた者のみ。」
アーモンド 「この子の本名はアーモンド・マンテル。俺の子孫だ。」
ジャスミン 「子孫…」
国王 「電子機器が使えないのは?」
レーセン 「外から脱獄を手伝えないようにするため。なのに地球人はこんな場所に住みついてしまった。」
クレセント 「この星が生きた牢獄だと、700年も気付かずに。」
レーセン 「更に予想外の事が起きました。ヴォルドの強い望郷の想いが、この星を包み込んだのです。」
アーモンド 「地球で暮らしていた時の想いが、この星に住む人々の心に影響している。」
クレセント 「1950年代のアメリカンスタイル。これはこの星の記憶だったのか…」
国王 「ウォルドが釈放されたらこの星はどうなる?」
レーセン 「牢獄の役目を終えて、ただの惑星生物に。電子機器も使える様になります。」
ジャスミン 「ちょっと待って、アーモンドはどうなるの?」
レーセン 「ウォルドの肉体は既にありません。彼の体を譲ってもらうしかありません。」
ジャスミン 「冗談じゃない!ウォルド、アーモンドに体を返して!」
レーセン 「それを決められるのは本人のみ。ウォルド、考える時間は3時間。それを過ぎればその体はあなたの物。」
ジャスミン 「ウォルド。アーモンドはこの国の役に立とうとして体を貸したのよ!あなたに譲る為じゃないわ!」
アーモンド 「レーセン。…俺には人間の体はいらない。…彼に返すよ。」
クレセント 「ウォルド。」
アーモンド 「最初は地獄だった。死ぬ程辛くても星にされちゃ自殺もできない。でも千年この星として生き、700年この国の住人を見て来た。俺はこの国が、この星の全てが愛しい。俺にとってこの星はもう牢獄じゃない。この星としてずっと彼らを見守って行きたい。」
国王 「ウォルド。」
アーモンド 「それに、この子は俺の大事な子孫だ。彼の人生を奪うなんて、まっぴらごめんだ。」
ジャスミン 「ウォルド。」
レーセン 「いいのですね?」
アーモンド 「ああ。」
レーセン 「ホッとしました。」
アーモンド 「え?」
レーセン 「看守の身でありながら、私もこの国を愛しています。誰よりも長くあなたの想いの中にいたせいですね。」

突然、ハケから声。

ハヤブサ 「全員動くな!」

ダグラスに銃をつきつけたハヤブサが出て来る。

クレセント 「ハヤブサ!」
ダグラス 「申し訳ありません…」
クレセント 「城内を爆破したのはお前か!」
ジャスミン 「違うわよね。」
クレセント 「え?」
ジャスミン 「この子を脱走させた人物。全ての事件の犯人。そこにいるんでしょ?」
クレセント 「なに?」
ジャスミン 「出て来なさいよ。チヌーク。」写真

チヌーク登場。

チヌーク 「さすがですねジャスミン。」
クレセント 「チヌーク!お前死んだんじゃ?!」
チヌーク 「フェイクですよ。パラシュートは別に持ってたんです。」
クレセント 「それじゃお前が!」
チヌーク 「ええ、そうです。全ての事件の犯人です。結構うまくやってたのに、後一息ってとこでこいつの邪魔が。」
ジャスミン 「私を撃ったのもあなたよね?」
チヌーク 「良くわかりましたね。」
ジャスミン 「あの部屋の中の誰かが私を撃ったと知った時、思い出したの。あの時「廊下に人影が!」って叫んだ人物を。」
クレセント 「そうだ、チヌークだ!…しかし銃は?」

チヌーク指を構える。

チヌーク 「私の指は仕込み銃なんです。」
クレセント 「なぜだ?お前もジモラスを憎んでいたんじゃ?」
チヌーク 「いいえ全く。確かに私の両親はスティング星人ですが。私は生まれも育ちもジモラス星ですから。」
クレセント 「貴様!」

チヌーク、仕込み銃を撃つ。

チヌーク 「動くなって言いましたけど。」

チヌーク、アーモンドの元へ行き仕込み銃を突きつける。

チヌーク 「ウォルドさん、まだ戻らないで下さいね。戻ったらこの子を殺します。」
ジャスミン 「何をする気?」
チヌーク 「何も。今この星はどんな状態かわかってますか?」
ジャスミン 「え?」
クレセント 「あ、電子機器が使える!」
チヌーク 「そう。ここの鍵が開いてるうちはパルスが止まっている様ですね。」
ジャスミン 「それじゃ…」
チヌーク 「今ならこの星は攻め放題です。」
クレセント 「くそお!」
チヌーク 「これでエッグもこの星も頂きです。そうなれば銀河も我々の手に。」
国王 「やはりそれが目的か。」

チヌーク、モバイルで通信を始める。

チヌーク 「こちらチヌーク!ネオガイアのパルスが止まっている!総攻撃を!…あれ?電波が悪いな。ハヤブサ、ここは頼む。」
ハヤブサ 「はい。」
チヌーク 「来い!」

チヌーク、アーモンドを連れてハケる。

ジャスミン 「あんたはこれでいいの?」
ハヤブサ 「…」
ジャスミン 「分かったでしょ?君の星が何をしようとしているのか。」
ハヤブサ 「俺は…俺は…」写真
クレセント 「君は利用されてただけなんだ。」
ジャスミン 「お願い。銃をさげて。」

ハヤブサ、銃を下げ、ダグラスに渡す。

ハヤブサ 「チヌークを止めましょう。」
ダグラス 「ああ。」

ダグラス、ハヤブサハケる。

クレセント 「レーセン。父上を頼む。」
レーセン 「ええ。」
ジャスミン 「行きましょう!」

ジャスミン、クレセント、ハケる。レーセンと国王は別ハケへ。暗転。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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