△ 「心海のサブマリナー」シーン22


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バッカスのクルー、布施を抜かして全員集合している。

根本 「布施くんの取り調べを行いましたが、どうにもわからない事だらけです。」写真
紀之 「魔族に操られてたんですよね?」
石川 「状況から見て間違いないんだが、その形跡がないんだ。」
岡田 「形跡がない?」
根本 「これまでは魔族が我々に成り済まして潜入したり、最近では魔族の魂が我々の魂に潜り込んで来るケースまで出ていますが、いずれもこのささがにが、匂いで発見していました。」
ささがに 「布施くんからはなんにも臭わないのね〜。」
根本 「布施くんだけじゃありません。ささがには乗艦時に全員の匂いをチェックしています。」
ささがに 「誰からも臭わなかったのね〜。」
山田 「じゃあどおして…」
石川 「恐らく、布施は別のなんらかの方法で操られている。こんなもの作らなけりゃ、あんな事には…。」

石川、布施のコントローラーを取り出す。

根本 「預かります。」

根本、コントローラーを受け取る。

岡田 「何らかの方法って…」
石川 「わからん。が、この中に魔族に魂を売ったスパイがいる可能性もある。」
光彦 「スパイ?」
紀之 「まほろばさん。あなた我々の心が読めるんだよね。」
まほろば 「ええ。」
紀之 「だったらスパイが誰か…」
まほろば 「それが分からないんです。」
紀之 「なんで?」
まほろば 「ブロックされてるんです。」
紀之 「ブロック?」
まほろば 「ここに居る全員の心にブロックをかけた方がいるんです。潜水艦が出航してから。」
岡田 「そんな事が出来るのって…」
まほろば 「我々エージェントか、魔族位だと。」
有沢 「でもこの中に魔族はいないのよね?」
ささがに 「誰からも臭わないのね〜。」
川藤 「臭わない魔族が出て来たとか?」
山田 「ささがにの嗅覚を奪った奴がいるとか。」
ささがに 「嗅覚は正常なのね!」
根本 「とにかく、魔族の手の内がわからい以上、このままでは危険です。」
ほおずき 「ミッションはどうするでありんすか?」
根本 「元より使える魚雷が一発もないんじゃ、作戦遂行は不可能です。とりあえず一度本部に戻って魚雷を補給し、明朝までにまたここに戻りましょう。」
クルー 「了解!」
まほろば 「それはできません。」
根本 「…は?」
まほろば 「本部に戻る事はできません。」
石川 「何言ってるんですか?」
まほろば 「これは天からの指示です。」
根本 「天からの指示って…」
まほろば 「トップクラスの潜水艦が狙われている事件。我々エージェントもずっと原因を探っておりましたが、どうしてもシッポをつかめませんでした。しかし今、この潜水艦の中にその解決の糸口があるのです。浮上すればそれを見す見す逃がす事になります。」
石川 「あんた…まさか最初からそのつもりでこの艦に?」
まほろば 「はい。」
根本 「この潜水艦自体を罠にしたって事ですか?」
まほろば 「はい。ポセイドンも同じでしたが、まさか瞬殺されるとは…。したがって真相が究明されるまでは、この艦を浮上させるわけにはいかないのです。」

みんなざわめく。

根本 「守護霊の意向は?」
光彦 「守護霊?」
岡田 「この仕事の依頼主だ。」
光彦 「依頼主は神様じゃないんですか?」
岡田 「守護霊が神様に依頼して、神様が我々に仕事を振っている。」
まほろば 「神様が説得された様です。このと界を守る為なら、任務の失敗もやむを得ないと。」
石川 「倉内が死んでもいいって?」
まほろば 「と界が魔族に乗っ取られたら。全て地獄ですから。」
根本 「指示には従えません。」
まほろば 「は?」写真
根本 「この艦の状態で任務を成功させるのは不可能に近いです。なのに海域を出られなかったら我々の魂が消えて無くなるのは決定的です。」
光彦 「消えて無くなる?」
石川 「心の海域に居る間にもし倉内が死んだら、我々の魂は消滅する。」
光彦 「消滅って…」
石川 「天国行きも地獄行きも無い。完全に消えてなくなっちまうんだ。」
光彦 「そんな…」
根本 「私は艦長として、全クルーを守る義務があります。指示には…」
まほろば 「従って頂きます。これは天からの命令。背いても結局地獄行きです。お分かりですよね?」
岡田 「冗談じゃないがぜよ!」

岡田が一歩前に乗り出すと、ささがに、岡田に刀を差し出し

ささがに 「斬っちゃう?斬っちゃう?」
岡田 「…チッ…」
ささがに 「チッつった!マイナス30ポイント〜。」
まほろば 「とにかく事件の真相を突き止めることです。突き止めれば、作戦が失敗しても神の恩赦で地獄行きはなくなるかも知れませんよ。皆さん宜しく。艦長、副長ちょっとよろしいですか?」

まほろば、根本、石川、端の方で話す。

紀之 「真相を突き止めろったって…」
有沢 「心を読むまほろばも、ささがにの鼻も利かないんじゃ打つ手が…」
山田 「本当にこの中にスパイなんかいるんですかね?」
紀之 「消去法でいこうか、まず疑わしくないのは…。」

紀之見渡す。

紀之 「いないな…」
光彦 「おれはスパイなんかじゃない。」
紀之 「残念だけど、あんたが乗り込んで来たとたん、こんな事になったとも考えられる。」
山田 「布施さんの一番近くにいたし…」
光彦 「ふざけんな!」

ささがに、光彦に斧を渡そうとする

ささがに 「やっちゃう?やっちゃう?」

光彦、苦笑い。ささがに、みんなが言い争っている間中、みんなに武器の使用を促す。

紀之 「お前はどうなんだ?」
山田 「え?ぼくっすか?!ないないないない!」
ほおずき 「こういう一番弱っちいのが犯人ってパターン、よくありんす。」
山田 「ひどいなぁ!ほおずきさんだって、あんな事故のあったポセイドンから無傷で帰って来てるなんて怪しいじゃないですか!」
ほおずき 「え?あぁ、言われてみれば怪しいでありんすなぁ。」
川藤 「そこ認めちゃだめでしょ。」
有沢 「あんたは元超能力者だってとこが怪しい。」
川藤 「偏見です!僕はそういう偏見や差別が嫌で…」
有沢 「ばか冗談だよ。死ぬ寸前に能力失ったんだろ?」
川藤 「そうですよ!だからここじゃ超能力なんて…あ…。」
有沢 「なに?」
川藤 「いや、なんでもないです。」
山田 「ああ!そういえば有沢さん本職じゃないっすか!」
紀之 「あ、そっか。」
光彦 「え?本職って、有沢さんスパイなんですか?」
有沢 「元スパイだ!今回の件のスパイじゃない!」
光彦 「お、初めて答えてくれた。」

有沢、うつむく。

紀之 「元より、自分でも気づかないうちに操られているとしたら…」
山田 「我々全員が容疑者ですよね。」
紀之 「そういうことだ。」写真

いきなり紀之が山田をなぐる。

山田 「痛っ!ごめんなさい!…え?今のなんで?」
紀之 「え?あれ?」
ささがに 「なぐった〜!マイナス100ポイントね〜!」
紀之 「ちょっと待って今のは…」

紀之、また山田をなぐる。

山田 「痛っ!」
ささがに 「さらにマイナス100ポイント〜!」
紀之 「何だこれ?」

またなぐろうとするがみんな一歩下がる。

山田 「紀之さん、まさか…」
紀之 「まずい…誰か私をおさえろ!」

紀之、暴れ出し、みんなでおさえる。ささがに、大喜び。まほろば、根本、石川かけよる。

石川 「どうした?!」
山田 「紀之さんが!」
紀之 「布施くんと同じだ!早く私を営倉に!」
根本 「山田くん川藤くん。」
山田・川藤 「はい。」

山田、川藤、紀之を連れて行く。

岡田 「まずいぜよ…」
根本 「まほろばさん、これじゃ戦う前にこのチームは…」
まほろば 「ダメです。上の命令です。」
ささがに 「憎んじゃう?憎んじゃう?」
根本 「…みんな申し訳ない。次の作戦が決まるまで、全員ここに待機して下さい。」
岡田 「艦長…」
根本 「様子がおかしい者が出たら知らせて下さい。石川くん。」
石川 「はい。」

根本、石川去った後、全員去る。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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