△ 「心海のサブマリナー」シーン14


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布施、光彦、チェックファイルを持って出て来る。

布施 「中々良い仕事するね。」
光彦 「なんか生きてた時より楽しいっす!ま、元々人生に未練もなかったすけど。」
布施 「未練がなかった?」
光彦 「オレ、くずみたいな人間だったから、死んで良かったのかも…」
布施 「それはない。」
光彦 「え?」写真
布施 「あ…いや…何でも無い…」

岡田が出て来る。

岡田 「布施。」
布施 「あ、岡田さん。」
岡田 「操舵桿のレーダー反応が若干遅れ気味なんだが…。」
布施 「ブースターのBコードを操舵桿に繋げて下さい。」
岡田 「あ、なるほど、操舵桿に直結か。ありがとう。」
布施 「いえいえ。」
岡田 「で、どうよ、新人は?」
布施 「結構使えますよ。」
岡田 「そりゃよかった。」
布施 「レーダー及び操舵担当の岡田さん。」
光彦 「宜しくお願いします!」
岡田 「宜しく。」
光彦 「あの。」
岡田 「ん?」
光彦 「ソーダ担当って?」
布施 「潜水艦の操縦だよ。」
光彦 「操縦?…あ、そうか、「そうだかん」って言うから缶入りのソーダかと思って…」
布施 「いわゆる操縦桿だよ。」
岡田 「潜水艦にハイポール作る担当はいないよ。」
光彦 「失礼しました。」

3人笑う。ほおずきが出て来る。

ほおずき 「岡田はん。ちいとよいでありんすか?」
岡田 「何でしょう?」

岡田、ほおずきの元へ行き、二人で話す。

布施 「君、幕末詳しいんだって?」
光彦 「え?あ、はい、龍馬とか新撰組とか結構好きで…」
布施 「「幕末四大人斬り」と言えば?」
光彦 「四大人斬り?えっと、いや、そこまで詳しくないんで岡田以蔵位しか…え?岡田?まさか岡田って…。」
布施 「そう。あの人、その岡田以蔵。」
光彦 「マジっすか?いや、オレすげー好きなんですよ!人斬り以蔵!」
布施 「し〜っ!ダメダメ!」
光彦 「なんすか?」
布施 「岡田さんの前でその話は御法度。」
光彦 「そうなんすか?」

岡田、ほおずき話が終わる。

ほおずき 「よろしうなんし。」
岡田 「宜しく。」

岡田はハケる。ほおずき、二人の元へ。

ほおずき 「布施はん。」
布施 「はい。」
ほおずき 「わちきの居ぬ間にソナーいじりなんしたな。」
布施 「いやあの、ソナー本体じゃなくてインカムの方をちょっと。」
ほおずき 「ちょっと?」
布施 「…すみません。」

ほおずき手を出す。

布施 「え?また?」

ほおずき、うなずく。

布施 「わかりました。」

布施、○ッピーターンを渡す。

光彦 「え?○ッピーターン?」
ほおずき 「ありがとなんし。」
光彦 「な、なんであの世に○ッピーターンがあるの?!」
布施 「大概何でも売ってるよ。」
光彦 「買うんですか?」
布施 「お金じゃなくてポイントで買うのさ。どう?一つ」

光彦、受け取る。

光彦 「え?でも死んでるから何も食べる必要ないんですよね?」
布施 「ああ、腹は減らないし、食わなくても死なないよ。死んでるから。」
光彦 「じゃ、どうしてポイント減らしてまで買うんですか?」
ほおずき 「食べてみなんし。」写真
光彦 「え?」
ほおずき 「食べればわかるでありんす。」

光彦、促されて恐る恐る食べてみる。

光彦 「あ、うまい…何これうまい!」
ほおずき 「生きている時、美味しいと感じる幸せは、死んでも魂に深く刻まれているんでありんす。」
布施 「一週間以上なんも食ってないんじゃ幸せ度も高いだろ?」
光彦 「まさにこれ、あれっすよ!ハッピーがターンっすよ!…そうか…うまいって…こう言う事だったのか…生きてる時は考えた事も無かったな…もっとうまいもん…沢山食べときゃ良かった…」
布施 「それ、未練じゃない?」
光彦 「え?」
ほおずき 「少し浄化されはりやんしたね。」
光彦 「そうなんすか?良くわかんないっすけど。」
ほおずき 「それでよござんす。」
光彦 「あの。」
ほおずき 「はい?」
光彦 「そのしゃべり方って…」
布施 「ほおずきさんは生前花魁だったんだ。」
光彦 「やっぱそうか!なんかそんな感じだったから…」
布施 「でも戦闘中は標準語なんですよね?」
ほおずき 「聞き取りにくいって怒られるでありんすよ。」
光彦 「部署は?」
ほおずき 「マインドソナー担当でありんす。」
光彦 「マインドソナー?」
布施 「潜り込んだ人間の、心の声を聞くエキスパート。」
光彦 「そんな仕事もあるんだ。」
ほおずき 「宜しくなんし。では、わちきゃそろそろ戻りんす。」

ほおずき、去りかけて止まり、振り向くと怖い顔。

ほおずき 「布施はん。インカムの具合…」
布施 「はい…」

ほおずき、急に明るくなり

ほおずき 「めちゃめちゃ良くなったでありんす。」

ほおずき去る。

布施 「え?…何だ良かったんじゃん!あ、ハッピーターン損した…」

紀之と山田が出て来る。

紀之 「お前何百回言ったらわかんだよ。一年もいて潤滑油のゲージも読めねーのか!」
山田 「すみません…」
紀之 「おお、布施くんそっちどうよ。」
布施 「こいつは使えますよ。」
紀之 「まじかよ。こいつと取っ替えない?」
山田 「えー…」
布施 「嫌です。」
山田 「えー…」

有沢、川藤が出て来る。

有沢 「あ、居た居た。紀之さん。あ…」

有沢、光彦に気付いて帽子を深く被り

有沢 「ちょっといい?」
紀之 「おう。」写真

紀之、山田にここに残れと手で指示。有沢、川藤にそっちで待てと指示。紀之と有沢は端の方で話す。

布施 「やっぱこえ〜な、トラウマコンビは。」
光彦 「トラウマコンビ?」
山田 「紀之さんは大正3年生まれの五黄の寅。」
川藤 「有沢さんは昭和41年生まれの丙午。」
布施 「で、トラウマ。」
光彦 「なんすかそれ?」
布施 「知らないか?その年に生まれた女性は、滅法気性が荒いって言われてる。」
紀之・有沢 「誰が気性が荒いって?」
山田 「おまけに地獄耳。」
布施 「うちの新人、神くん。」
光彦 「宜しくお願いします。」
川藤 「有沢さんの助手でブイソナー担当の川藤です。宜しく。」
山田 「紀之さんの助手で機関員の山田です。宜しく。」
布施 「川藤くんもここに来てまだ2年。生前は超能力者。」
光彦 「超能力者?」
川藤 「死ぬ寸前に能力失っちゃったけどね。小笠原で。」
光彦 「あ、小笠原に超能力者の島があるって都市伝説聞いたことあるけど…」
川藤 「それホントだよ。」
光彦 「なんかすげーなこの潜水艦。石川五右衛門とか岡田以蔵とか…」
山田 「三億円事件の犯人とか。」
光彦 「山田さんは?」
山田 「え?」
光彦 「山田さんは生前何か…」
山田 「いや…僕は普通のサラリーマンでした。」
光彦 「あ、そうなんすか。」
山田 「期待に添えずすみません。」
光彦 「いや、そんな。」
布施 「山田くんはここへ来て1年。紀之さんにビシビシしごかれてるけど、内心寂しいんじゃない?」
山田 「え?」
川藤 「この任務がうまく行けば紀之さん天国行きですからね。うちの有沢さんもですけど。」
光彦 「へえ。二人とも引退なんだ。」
山田 「寂しいっていうか、不安です。このままじゃ紀之さんの後なんかとても継げないです。」
川藤 「僕もだよ。」
布施 「しっかりしろよ。胸張って送ってやろうぜ。トラウマコンビを。」
川藤・山田 「はい。」
紀之 「山田。」
有沢 「川藤。」
川藤・山田 「はい!」
紀之 「時間ないぞ!」
有沢 「行くよ!」
川藤・山田 「はい!」

紀之、山田、有沢、川藤、それぞれの方向にハケる。

布施 「我々も。」
光彦 「はい。」

布施、光彦もハケる。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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