△ 「ヴァンパイア・ブリード」シーン9


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字幕『20時15分 客間家離れ』
明転すると、シーン7のラストの場面。

里子 「石?」写真
ネム 「これは…」
夏子 「『記憶の石』ですね。」
あずき 「『記憶の石』?」
夏子 「確か自分の見た情景を閉じ込められる石ですよね。」
鬼太朗 「そう、妖怪のビデオカメラみたいなもんだ。」
ネム 「これは前に私がたんぽぽにプレゼントした石。」
里子 「それじゃこの中に事件の極秘情報が?」
あずき 「見っぺ見っぺ!」
鬼太朗 「無理だ。」
あずき 「え?なすて?」
鬼太朗 「情報を閉じ込めた本人がいないと見られないんだ。」
あずき 「じゃ、連れてくればよかっぺさ。」
ネム 「無理よ、彼女は四日前の旅客機墜落事故で…ってどさくさに紛れてなに聞いてんのよ!」
あずき 「わたすたつにも協力させて下さい!」
夏子 「察しはつきます。『血の三ヶ日』事件ですよね?」
鬼太朗 「お、鋭い。」
ネム 「鬼太朗!」
夏子 「あの事件で、私達と親しかった人間も犠牲になりました。」
あずき 「ひとごとでねぇんだ!」
里子 「ちょっと落ち着こうよ、ホントに危険なんだって。」
あずき 「んだども!!」

もめている中、出入り口から銃を構えた鈴木登場。

鈴木 「動くな!」

全員唖然。

里子 「あっちゃぁ〜、また厄介なのが…」
鈴木 「全員手を頭の上に置け!」
ネム 「里子の知り合い?」写真
鈴木 「後輩の刑事です。」
鬼太朗 「人間?」
里子 「バリバリの。」

みんな、渋々手を頭の上に置く。

鈴木 「客間さん!一体これはどういう事ですか?!あなたもこの怪しげな連中とグルなんですか?」
里子 「鈴木落ち着け。この人達は関係ない。」
鈴木 「事件の関係者と会うって言ってたじゃないですか!今だって『血の三ヶ日』の話しをしていた!」
鬼太朗 「里子。」
里子 「すみません。うちにも熱血バカがいました。」
鈴木 「そうか、それで里子さん僕を置いてったんですね!お陰でたっぷり血を抜かれましたよ!」
里子 「もっと抜いてもらえば良かったのに。」
鈴木 「え?なんか言いました?」
里子 「あ〜めんどくさい。鈴木ぃ!!」
鈴木 「なんですか!」
里子 「いいか、良く聞けよ。」
鈴木 「話しなら署で…」
里子 「この人達は人間じゃない。」
ネム 「里子?!」
里子 「なんとかとハサミは使い様です。」
鈴木 「…は?人間じゃない?」
里子 「妖怪だ。」
鈴木 「…妖怪?」
里子 「そう、妖怪。」
鈴木 「妖怪……バカにしてるんですか?!!」
里子 「鈴木ぃ!良く見とけ!」
鈴木 「何を?」
里子 「夏子さん、お願い。」
夏子 「はい。」

夏子、鈴木の前に。

鈴木 「な、何する気ですか?」
里子 「その子、雪女よ。」
鈴木 「ゆ、雪女?」

夏子、銃に息を吹きかける。

鈴木 「ん?つめたっ!!」

鈴木思わず銃を床に置く。

里子 「あずきさん。」
あずき 「はい!」

今度はあずきが前に出る。

里子 「その子はあずき洗い。」
鈴木 「あ、あずきなに?」

あずき、息を一吹き。

鈴木 「熱っ!熱っ!」
里子 「どう?」
鈴木 「こ、こんなの手品で幾らでもできますよ!」

鈴木、冷たそうにしながらも銃を拾ってまた構える。

里子 「しょうがないなぁ。ネムさんお願いします。」
ネム 「はいよ。」

ネムが前に出る。

里子 「その人は眠り猫。眠りを操る妖怪よ。」
鈴木 「ね、ねむり?」
ネム 「はい!」

ネム、鈴木に手をかざすと、鈴木、がくっと眠りに入る。

ネム 「夢の世界にようこそ。」

ネムが声をかけると、鈴木、走り出す!

鈴木 「待てぇ!」
鬼太朗 「お、なんか犯人追いかけてるね。」写真
ネム 「じゃ、こんなのは?」

ネム、色々手を動かす

鈴木 「待てぇ止まらんと…・待ってぇ〜…待ってぇ〜…」
夏子 「なんか女っぽくなった。」
鈴木 「うさぎさ〜ん。待ってぇ〜。」
里子 「あ、アリスじゃないこれ?」
あずき 「んだんだ!アリスだ!」
鈴木 「この穴ね。うさぎさ〜ん。きゃあああああ!」
鬼太朗 「あ、穴に落ちた。」
夏子 「落ちた落ちた。」
鈴木 「ああああああああああ」
里子 「まだ落ちてる。」
あずき 「深いね。」

鈴木、落ちる格好のまま走り回り、あげぱんに倒れかかる。あげぱん、うつぶせに転び、
鈴木、あげぱんの背中に乗っかるかたちになる。

鬼太朗 「あ、底に着いたねこれ。」
夏子 「着いた着いた。」
鈴木 「あらぁ?ここはどこかしらぁ?」
あげぱん 「ぬぬぬ〜ん!」
鬼太朗 「重い〜!って言ってるぞ。」
鈴木 「え?」
あげぱん 「ぬ、ぬ、ぬ〜ん!」
鬼太朗 「お、も、い〜っ!て」
鈴木 「…え?」
あげぱん 「ぬう!ぬう!ぬう〜〜〜ん!!!」
鬼太朗 「お〜!も〜!い〜〜〜!!って」
鈴木 「あなた…(笑顔になり)トトロっていうのねぇ!!」
鬼太朗 「話し変わってるぞ。」
ネム 「こんなもんでいいか。」

ネム、また手をかざすと、鈴木目覚める。あげぱんに乗っかっている自分に驚き、立ち上がる。

鈴木 「うわあ!なんだこれ!」

あげぱん、泣いている。

あげぱん 「ぬ〜ん!」
里子 「どうよ?」
鈴木 「こ、こんなの、ただの催眠術じゃないか!お前らあれだろ?シルク・ド・ソレイユの犯罪者バージョンみたいな奴らなんだろ?!」
ネム 「なんですってぇ!」
里子 「どうしたもんかねこのバカ。」

鈴木、鬼太朗に銃を向ける。

鈴木 「こいつは何なんだ?」
鬼太朗 「え?僕?」
里子 「この人は鬼太朗。魂の使い手よ。」
鈴木 「鬼太郎?!あの、ゲゲゲのか?」
里子 「あれのモデルになった妖怪。」
鈴木 「うそつけ!下駄も履いてないし、ちゃんちゃんこも着てないじゃないか!」
鬼太朗 「だからあれはマンガなの!僕がオリジナル!」
鈴木 「あの、髪の毛びゅんびゅんって飛ばすのやってみろ!」
鬼太朗 「それもマンガで、僕はできないの!」
鈴木 「じゃ、妖怪アンテナは?」
鬼太朗 「あ、それならある!…けど…こないだ切っちゃったんだよなぁ…」
鈴木 「ほら見ろ!何が鬼太朗だ!みえすいた嘘つくな!」
ネム 「射っちゃえば。」
鈴木 「なにっ?」
ネム 「その銃でこいつの頭射ってみなよ。」
鈴木 「な、何いってんだ?!」
ネム 「射って死ななかったら信じるよね?」
鈴木 「バ、バカ言うな!」
鬼太朗 「そうだよ、あれって結構痛いんだぞ。」
鈴木 「死なないわけないだろ!こんな近距離で人の頭射ったら…」

鈴木の後ろからそ〜っと近づいて来たあげぱんが、おもいっきり鈴木のズボンを引き上げる。

あげぱん 「ぬーん!!」
鈴木 「あああっ!」

鈴木、思わず引き金を引き、鬼太朗の頭に弾が命中。鬼太朗ぶっ倒れる。鈴木真っ青。

鈴木 「…・あ…ああ…なんてこった…人を…人を殺してしまった…ごめんなさい…ごめんなさい…」

鬼太朗、飛び起きる。

鬼太朗 「痛ったいよ!!」
鈴木 「うわあああ!!!」
鬼太朗 「あ〜もう、(おでこを指差して)ここ赤くなってない?」
鈴木 「…なんで?…なんで生きてるの?」写真
里子 「いい加減信じろ鈴木。」
鈴木 「…そうか…外れたんだ…弾外れたんだ…だから!…」
ネム 「あ〜もう!これならどう?」

ネム、鈴木の銃を取って至近距離から鬼太朗を射つ。鬼太朗ぶっ倒れる。

鈴木 「うわっ!」

鬼太朗、起き上がり

鬼太朗 「って遊ぶなぁ!!」
鈴木 「うわああああ!」

ネム、拳銃を里子に渡す。

里子 「どおよ鈴木。これで…」
鈴木 「じゅ、銃に細工したんだ!さっき催眠術かけた時に細工したんだ!」
ネム 「往生際悪過ぎ。」
里子 「鈴木い!!」
鈴木 「はい?」
里子 「私から絶対目を離すな。」
鈴木 「は?何を言って…」

里子が手をかざすと、鈴木だけ里子が見えなくなる。

鈴木 「うわっ!…消えた?!…客間さん?…客間さん?」

里子、再び手をかざすと鈴木に見えるようになる。

鈴木 「うわ出た!」
里子 「うちの母、座敷童でね。私、気配を消す能力の血を引いてるの。」
鈴木 「ざ、座敷童って、そんな…」

里子、再び手をかざす。

鈴木 「うわ!また消えた?」

里子、後ろにまわってスリッパで鈴木の頭をはたく。

鈴木 「痛っ!」

鈴木キョロキョロする。里子また手かざし。

里子 「どおよ?」
鈴木 「うわっ!こんな!こんなことって…」

里子、また手かざし。

鈴木 「わあ!」

里子、鈴木スリッパで連打。

鈴木 「痛っ!痛っ!痛っ!」

里子、また手かざし。

里子 「鈴木。シルク・ド・ソレイユにこんなまねできるか?」
鈴木 「多分…できません…」
里子 「多分?」
鈴木 「絶対できましぇん!」

里子、鈴木に拳銃を帰す。

ネム 「ま、そう簡単に信じろったって無理じゃない?人間には。」
鈴木 「そんな…そんな…」

鈴木、座り込んだ場所で手紙を発見。

鈴木 「え?何で?何でここに?!」
里子 「今度は何?」
鈴木 「僕の出した手紙がなんでこんな所に?!」

里子、鈴木から手紙を取って読む。

里子 「え?『コンビニのパリパリ海苔のおにぎりを…』って、これあんたのか?!」
鈴木 「え?、じゃまさか、伝説の相談室って客間さんちなんですか?!」
里子 「そうみたいね。」
鈴木 「そうか、どこかで見た住所だとおもったんだよなぁ。」

ピキーン!

鬼太朗 「また妖気だ!」
里子 「母さん母さん!」

立子、入って来る。

立子 「はいはい、どうかしたの?」
里子 「結界は?。」
立子 「後2、3分で張り終わるけど。あら、また一人増えてる。」
里子 「間に合いませんね。」写真
ネム 「迎え撃つしかないでしょ。」
鬼太朗 「来たぞ!」

みんな入り口にファイティングポーズ。何者かが飛び込んで来るが、中央で崩れる様に倒れる。

鬼太朗 「なんだこいつ?」
たんぽぽ 「うううっ…」
ネム 「あれ?この人…まさか…」

ネム、近づき抱え起こし、フードを取る。

ネム 「たんぽぽ?!!」。
他全員 「たんぽぽぉ?!!」
鈴木 「…って誰?」

暗転

(作:松本仁也/写真:はらでぃ)

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