△ 「ヴァンパイア・ブリード」プロローグ


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暗転の中、怪しげな音楽。ナレーションと字幕と映像。

『ヴァンパイア。人間の血を吸い生きる種族。人間を遥かに凌ぐパワーを持つが、彼らが地上を支配できなかった理由はただ一つ。日の光の元で生きられぬ体である事。
一時は人間を絶滅に追い詰める勢いがあったが、妖怪の血をもつヴァンパイアハンターの出現により形勢は逆転。二十世紀初頭には絶滅の危機を迎えた。写真
第二次世界大戦直後、ヴァンパイアとヴァンパイアハンターの間に調停が結ばれ、ヴァンパイアに掟が定められた。

「人間を殺してはならない。」
「人間の血は直接吸ってはならない。」

その掟を破った者は、ヴァンパイアで組織した処刑部隊『シュヴァート』が始末する。つまり、ヴァンパイアの罪人はヴァンパイアの手で処刑する事となった。調停に反した場合は即再結成する事を条件に、ヴァンパイアハンターは廃止。輸血用の血液の一部がヴァンパイアに提供され、平和の均衡は半世紀以上保たれていた。

しかし、2011年。元日から三日間に渡り、日本各地で同時多発大量殺人事件が発生。
「血の三ヶ日」と呼ばれたこの事件にヴァンパイアが関与していたことが判明し、事態は急変した。そして…』

旅客機の音。字幕。
『太平洋上空 八丈島西南沖400km ベルリン発成田行き ルフトハンザ9780便
2011年 1月18日 20時11分』

点滅する翼灯の光が見え、やがてゆっくり明転すると旅客機の中。舞台中央の座席に 並んで座っている女性、ひまわりとたんぽぽ。
ひまわりは起きている。たんぽぽは眠っている。たんぽぽ、目を覚ますがすぐに違和感に気づく。

ひまわり 「おはよう、たんぽぽ姉ちゃん。」
たんぽぽ 「…今…何時?…」
ひまわり 「日本時間、20時11分。」
たんぽぽ 「…20時…11分?…成田は?…」
ひまわり 「通り越したよ。」
たんぽぽ 「…通り…越した?…」

たんぽぽ、動こうとするが身動きが取れない。

たんぽぽ 「これは…どういう事?…ひまわり…」
ひまわり 「やっぱりお姉ちゃん凄い。こんなに早く目を覚ますなんて。できれば最後まで眠っててほしかった…」
たんぽぽ 「何をしたの?」
ひまわり 「機内食に薬を。」
たんぽぽ 「薬?!…みんなは?」
ひまわり 「眠ってるうちに…始末したよ。」
たんぽぽ 「始末って…乗客全員?!」
ひまわり 「乗務員も、パイロットも、全員グルなんだから仕方ないよ。」
たんぽぽ 「どうして…」
ひまわり 「どうして?それはこっちのセリフよ、お姉ちゃん。どうしてこんな裏切りを…」
たんぽぽ 「裏切り?」
ひまわり 「バルドルの剣はクーデターなんかに使わせない。」
たんぽぽ 「クーデターって…あなた一体何を言って…」
ひまわり 「せめて私の手で、葬ってあげるよ。お姉ちゃん。」写真

ひまわり、光の中から剣を抜く。

たんぽぽ 「ひまわり…」

ひまわり、たんぽぽに斬り掛かるが、たんぽぽ、寸前にかわす。

ひまわり 「ほんと凄いよお姉ちゃん。もうそんなに動けるなんて。」

ひまわり、また斬り掛かるが、たんぽぽ、またかわし、光が走りたんぽぽの手にも剣が現れる。

たんぽぽ 「やめなさい、ひまわり!」
ひまわり 「信じてたのに!」

たんぽぽ、体が上手く動かせない中、ひまわりの攻撃を全て剣で受ける。

たんぽぽ 「カーミラね?」

ひまわり、攻撃を激しくする。

たんぽぽ 「ひまわり!あなたカーミラに騙されてる!」
ひまわり 「騙してるのはお姉ちゃんでしょ!」

たんぽぽ、腕を斬られるがすぐに斬り返し、ひまわり倒れる。

たんぽぽ 「ごめんねひまわり。バルドルの剣をカーミラに渡すわけにはいかないの。」
ひまわり 「もうカーミラには渡らない。」
たんぽぽ 「え?」
ひまわり 「もう誰も、あの剣を手にする事はできない。」
たんぽぽ 「どうゆう事?」
ひまわり 「落ちるから。」
たんぽぽ 「落ちる?」
ひまわり 「この飛行機、落ちるから。」
たんぽぽ 「まさか…あなた…」
ひまわり 「丁度時間よ。さよなら、たんぽぽ姉ちゃん。」
たんぽぽ 「ひまわり!!」写真

閃光が走り、大爆発。炎と轟音。
オープニング 映像タイトル『ヴァンパイア・ブリード』ナレーションと字幕。

『妖怪。人間の念と彷徨う魂が結びつき生まれた存在。妖気の力で作られた体は人間と
見分がつかず、人間社会にとけ込んで生活している。彼らは常に人間に味方し、人知れず人間を守っている。』

(作:松本仁也/写真:はらでぃ)

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