△ 「トワの宇宙」エピローグ


トップページ > ページシアター > トワの宇宙 > エピローグ 【公演データ

<前一覧|次>

トワにスポット。語り。

トワ 「こうして、ガニメデでの戦いは終わり、同時に半世紀にも及んだ嘘の戦争も終わった。戦争の真相は、混乱を防ぐため、大統領の発表まで伏せられる事になったけど、無事に地球に辿り着いた我々は、すぐにそれぞれの未来を歩き始めた。」

クラウドとシンプ出て来る。

クラウド 「東京に戻って、また教会を?」写真
シンプ 「ええ、また一から。」
クラウド 「やっぱり神様は…」
シンプ 「居ますよ、今回沢山の奇跡を見ちゃいましたからね。クラウドさんは?」
クラウド 「田舎に戻って、今回の経験を本にします。人類が踏み出す新しい一歩についてね。」

メールの着信音。

クラウド 「あれ?メールだ。誰からだ?(メールを見て)えええっ?!」
シンプ 「どうしました?」
クラウド 「信じられない…婆ちゃんからだ!」
シンプ 「お婆さんも、新しい一歩を踏み出したってわけですね。」
クラウド 「確かに。」

クラウド、シンプ、ハケて、山田、小嶋出て来る。

小嶋 「やっぱりフライパン屋継ぐのか?」
山田 「いや、継がねぇ。」
小嶋 「え?じゃあ何を?」
山田 「シェフになる。」
小嶋 「まじかよ。」
山田 「ああ、実はもう調理師免許取ってあんだ。お前は継ぐのか?」
小嶋 「ああ、迷ってたが、うちの商品に誇りを持てる様になった。お前のフライパンのお蔭でな。」
山田 「もしホントにトワちゃんが戦争を無くしたら、お前んとこ商売あがったりになるな。」
小嶋 「そん時はまた…殺虫剤屋に戻るさ。」

山田、小嶋、ハケて、ドロップス出て来る。

ミキ 「どうするの?あんたたち。」
ランゼ 「別にどうもしないよ。なんかスッとしちゃったし。」
スー 「ま、元々父親同士の戦いだしね。」
ランゼ 「うちらはうちら。今まで通りでいいじゃん。」
スー 「あ、でもミキは結婚退職?」
ミキ 「しないわよ。これからまた暫くは地球も混乱しそうだし。うちらも活躍しなくちゃね。」
ランゼ 「ってことはこれからも…イエス!」
ドロップス 「ウィーアー ドロップス!」

そこに、ライアン、レパード、フォックス、ブル出て来る。

ライアン 「これからは君にもお父さんと呼ばれるわけか。」
フォック 「はい、お父さん。」
ライアン 「なんか馴染まんな。」
レパード 「大丈夫、そのうちおじいちゃんって呼ばれますから。」
ライアン 「そりゃもっと馴染まん。」
フォック 「ブルはやっぱり野球か?」
ブル 「ええ、体力の限界までは突っ走りますよ!」
レパード 「今度みんなで試合観に行くわね。」
ブル 「是非!」
ライアン 「マリナーズ戦の時は応援しないがな。」
ブル 「ですよね。それじゃ、僕はこの辺で。失礼します。」

ブル、去ろうとしたところに。

フォック 「ブル!」
ブル 「はい?」
フォック 「一つ聞き忘れてた事が。」
ブル 「なんです?」
フォック 「お前が操縦できない乗り物って何なんだ?」
ブル 「え?…」写真
ミキ 「あ、それ知りたい!」
スー・ランゼ 「知りたい知りたい!」
ブル 「…しょうがないな…僕の操縦できない乗り物は…」
フォック 「乗り物は?…」
ブル 「…自転車です…」

暫し沈黙。フォックスか吹き出したのを皮切りに、みんな吹き出して笑い出す。全員ハケる。
樋口、ハル、漫才スタイルで登場。

樋口・ハル 「はいどぉもぉ〜っ!」
樋口 「樋口で〜す!」
ハル 「ハルシオンで〜す!」
樋口・ハル 「東京アンドロイズで〜す!」
ハル 「というわけでね、残念な感じで始まりましたが。」
樋口 「いや、特に残念ではないですがね。」
ハル 「それはさて置きぃ〜。」
樋口 「あ、さて置くんだ。」
ハル 「もういいよ!」
樋口 「早い早い!ハルさん早い!」
ハル 「へい。」
樋口 「へいじゃなくて。」
ハル 「へふ。」
樋口 「ヘふじゃなくて。」写真
ハル 「へ。」
樋口 「へ?」
ハル 「……それはさて置きぃ〜。」
樋口 「あ、さて置くんだ。」
ハル 「わたくし、こう見えてもアンドロイドなんですよ。」
樋口 「そうなんです、この人。」
ハル 「アンドロイドと言ってもただのアンドロイドじゃあない!」
樋口 「ただものじゃありません!」
ハル 「それはさて置きぃ〜。」
樋口 「そこでさて置くか。」
ハル 「わたくし、こういう舞台に立つのが夢だったんですよ!」
樋口 「変わってるでしょ〜アンドロイドなのに。」
ハル 「だからもう、嬉しくて嬉しくて、今朝なんか思わず…」
樋口 「思わず?」
ハル 「それはさて置きぃ〜。」
樋口 「それもさて置くんかい!」

ハル、樋口のツッコミを腕で避け、腕を打った樋口痛がり、かがむ。

樋口 「イッ…タイ…」
ハル 「もういいよ!」

更にハルのツッコミが顔に入る。

樋口 「ぶふっ!…」
ハル 「あ、入ったか?」
樋口 「…駄目だ、もう一回練り直そう…」

樋口袖に向かいハルが着いて行く。

ハル 「なあ、俺にもツッコミやらせろ。」
樋口 「駄目駄目、死んじゃうから。」

二人、ハケる。下手からリーが現われる。立ち止まり、息を整える。上手からデイジーが 現われる。
二人とも気付きゆっくり近づいて行く。立ち止まり、暫し見つめ合い。

リー 「…ただいま…」写真

デイジー初めて聞く夫の声に笑みを浮かべ。

デイジー 「…おかえりなさい…」。

リー、初めて聞く妻の声に感激する。二人近づき抱き合うが、リー、感極まって号泣。二人、手を繋ぎ、去る。
高台の上アイが倒れている。意識が戻り、起き上がる。

アイ 「あれ?ここは…」

後ろからジャックが現われる。

ジャック 「よっ!」

アイ、とっさに銃を向けるが、ジャックだと気付き下げる。

ジャック 「良かった気がついて。」

ジャック、足を引きずりながら出て来る。

アイ 「お前…足…」
ジャック 「ああ、ワープの時ふっとばされてね。あなたも多少傷があったんで治療しときました。」
アイ 「触ったの?!」

また銃を向ける。

ジャック 「変な事してませんって!」

銃を下げる。

アイ 「この星、どこにワープして来たの?」
ジャック 「わかりません、星の位置からして銀河系の端っこって所でしょうか?」
アイ 「そう…」
ジャック 「取りあえず、太陽系から出た初めての人間には違いないですね。」
アイ 「どのくらい生きてられるかわからないけど。」
ジャック 「ええ、テラフォーミングシステムがいつまで保つか、食料がいつまで保つか、アンドロイドもうじゃうじゃいますからね、ここ。」
アイ 「どちらにしろ、直ぐに救出は来ないわね。」
ジャック 「わかりませんよ。これ聞いて下さい。」写真

ジャック、アイに通信機を渡す。

アイ 「なにこれ?!何か聞こえる!」
ジャック 「地球のラジオ放送です。」
アイ 「ラジオ放送?」
ジャック 「惑星レベルのワープの影響で、亜空間の穴が開きっぱなしになってるようです。」
アイ 「それじゃ…」
ジャック 「地球でそれに気付いてくれれば、ここの座標を割り出して救助をよこすかも。」
アイ 「あんたと待つのはごめんだけど。」
ジャック 「ほんと冷たいなぁ…でも、考えてみれば、うちらはこの星のアダムとイブみたいなもんじゃないですか。もうちょっと仲良く!」
アイ 「近寄るな!」

アイ、ジャックを突き飛ばし、ジャックひっくり返る。

ジャック 「いたたたっ!」
アイ 「あ、ごめん。」

ジャックひっくり返ったまま、夜空を見上げる。

ジャック 「うわぁ〜。ホントにすげー星だな。太陽系で見るのと全然違う。」

アイ、ジャックが怪我をして裸足になっている足の指に指輪をみつける。

アイ 「ちょっと待ってこれ!」

アイ、ジャックのけがをしている足を持ち上げる。

ジャック 「いてててて!何するんですか!」
アイ 「この指輪…どうしたの?…」
ジャック 「え?発見された時持ってたんです。」
アイ 「あなた…200年前のジニアスなの?!」
ジャック 「分かりません。発見された時手足バラバラで身元不明だったんです。この指輪は衣服に入ってたんですけど、手足は移植したものなんでここしかぴったり合わなくて…」
アイ 「…あなた…」
ジャック 「それより空を見て下さいよ!面白い星がいっぱいある。暇だから一緒に作りません?」
アイ 「…何を?」
ジャック 「新しい星座を。」

アイ、ハッとするが、すぐにクスクス笑い出す。

ジャック 「ん?どうかしました?」
アイ 「なんでもない。」

と、言いながら笑いが大きくなって行く。

ジャック 「え?僕、何か面白い事いいました?」

トワ、大統領、佐倉、キム、セカイ出て来る。大統領からの発表直前。

キム 「多分、私たち親子には厳しい処罰が下るでしょう。」
セカイ 「この演説の後には、世界中大混乱になる。」
大統領 「でもトワ姉ちゃん。あなただけはそれを鎮める事ができる。だから何があっても負けないで。」
トワ 「うん。救世主なんてやっぱりピンと来ないけど、私にしか出来ない事が見えて来た気がする。私、皆に会えて強くなった気がする。一人ぼっちじゃなってわかったから。」
大統領 「そうね…それじゃ言って来る。」

大統領、中央手前に出る。歓声が沸く。演説が始まる。

大統領 「皆さんの前にこうして姿を見せるのは、これが初めてになります。世界連邦政府大統領ミツヨ・マクドネルです。今日ここに、半世紀に渡ったエイリアンとの戦争の終戦を宣言致します。」

歓声が沸く。各キャラクターが、様々な場所から出て来て、大統領の演説を聴く。

大統領 「しかしここで、大変重要な事を、みなさんにお話しなければなりません。この演説後、恐らく世界中が混乱する事になるでしょう。その前に一つだけ言わせて下さい。これからの人類は、地球や太陽系よりももっと大きな世界を意識しなければなりません。かつて地上を支配していた恐竜は滅びましたが、鳥へ進化したと言われています。彼らは鈍い体を捨て、空を選んだのです。人間も進化するべきなのです。鈍い考えを捨て、そらを、宇宙を選ぶべきなのです。この地球上で小さく滅んで行ってはならないのです。その事を胸に置いて聞いて下さい。半世紀前、地球を襲ったマグネティック・インパクトは…実は…」

突然、演説に雑音が入り、高台にルナが現われる。

ルナ 「おはこんばんちわ!地球の皆さん聞こえますか?! レポーターの客間ルナです!」写真
トワ 「ルナさん?!」

皆、どよめき出す。

ルナ 「私、只今木星の衛星、エウロパで取材中なのですが、偶然とんでもないものを見つけてしまいました!」
キム 「なに?なんなのこれ?」
ルナ 「エイリアンです!」
全員 「エイリアン?!」
ルナ 「地球に向かって無数のエイリアンが飛んで行っております!わたくし気配を消して撮影しておりますが見えますでしょうか?!」
トワ 「エイリアンって…」
セカイ 「トワさん大丈夫!僕とトワさんの力で、どんなエイリアンだって…!」
ルナ 「見えますでしょうか?!昆虫型エイリアンの群れ!」
全員 「昆虫?!!」

スクリーンに、宇宙空間を高速で飛ぶ昆虫エイリアンの群れが映る。トワ、しゃがみ込む。

トワ 「いやああああっ!!」

皆、口々に、トワの名前を口にし出し、最後は一斉に。

全員 「トワ!!!」写真

全員が『絶対負けニャイ』のポーズ。スポットが当り、ゆっくりと立ち上がって行くトワ。
『絶対負けニャイ』のポーズをし、大きく息を吸い、勇ましく、少し笑みを浮かべた顔で。

トワ 「絶対負けニャイ!」

暗転。

終幕。

(作:松本仁也/写真:はらでぃ)

<前一覧|次>


トップページ > ページシアター > トワの宇宙 > エピローグ 【公演データ