△ 「トワの宇宙」シーン2


トップページ > ページシアター > トワの宇宙 > シーン2 【公演データ

<前一覧次>

トワにスポットがあたり、起き上がる。語り。

トワ 「悪い夢であって欲しいと願った。でも現実だった。薬のお蔭か、元々の性格のお蔭か、私は不思議な位落ち着いていた。目覚めて三日、この200年間の色んな話を聞いた。コールドスリープを拒否したジニアス達によって、科学が急速に進歩した事。人類が宇宙で暮らし始めた事。ジニアスのカプセルが金持ち達に買われ、宇宙の移住地に 散り散りになった事。そして…」

スポットが消え、元の明りへ。リーがコーヒーを入れながら話している。

トワ 「隕石?」写真
リー 「ええ。直径二キロの隕石が二つ、大西洋とインド洋に落ちて、何億人も死んだんです。ミルクと砂糖は?」
トワ 「あ、ミルクだけ。」
リー 「了解。しかもその隕石が磁石の塊の様なものでね。落下する前に地球を一周ずつ回っちゃったお蔭で、地球上のあらゆる電子機器やデータがパー。」
トワ 「パー?」
リー 「ディスクやテープに入った記録も、コンピューターも、みんなパー。歴史上『マグネティック・インパクト』っていわれる大惨事です。はい、お待たせ。」

リー、トワにマグカップを渡す。

トワ 「ありがとうございます。…大変な事があったんですね…」
リー 「大変なのはその後ですよ。電子機器を失った人類は、次に何をしたと思います?」
トワ 「…?」
リー 「戦争ですよ。原始的な小さな戦争が世界中で起こったんです。人間は愚かです。一気に減ってしまった人口を更に減らす様な行為を…」
トワ 「ひどい…」
リー 「ところが、更に追い打ちが…」
トワ 「え?」
リー 「宇宙に移住していた科学者達がとんでもない事実を発見をしてしまった。隕石は落ちたのではなく、落とされたものだったんです。」
トワ 「落とされたって…誰に?」
リー 「エイリアンです。」
トワ 「エイリアン?!って…宇宙人…ですか?」
リー 「ええ。そして次々に地球人のコロニーがエイリアンに襲われ始め、人類は慌てて世界連邦地球軍を結成して応戦した。それが今から五十年も前の話しです。」
トワ 「五十年前?」
リー 「それから半世紀、未だに人類とエイリアンの攻防は続いてるんです。」、
トワ 「エイリアンって…いったいどんな…」
リー 「わかりません。」
トワ 「わからないって…」
リー 「どこから来たのか、何のために来たのか、どんな姿をしているのかさえ、何一つわかっていない。」
トワ 「半世紀も戦争しているのに敵の正体がわからないなんて…」
リー 「でも、今実際戦ってる相手はエイリアンそのものではないんです。」
トワ 「え?」
リー 「開戦当初、人間の代わりにアンドロイドがエイリアンと戦っていたんですが、全てエイリアンに乗っ取られてしまった。」
トワ 「それじゃ、今人間が戦っているのは…」
リー 「そう、人間が作ったアンドロイド。」

客間ルナ伍長、入ってくる。

ルナ 「失礼します!」
リー 「ルナ!許可は?」
ルナ 「ちゃんと取りました。(トワを指さし)その子?」
リー 「ああ。」

ルナ、あんちょこを出して、見ながらトワに話しかける。

ルナ 「んちゃ!」

トワ、リアクションに困る。ルナ、あんちょこを確認しながら。

ルナ 「あれ?…んちゃ!…あれ?あってるよな…んちゃ?!お、おはこんばんちわ?!」
リー 「おいルナ。この子、地球人だぞ。」
ルナ 「おかしいな。彼女のいた時代のデータに入ってるんだけどな。」
リー 「またジャンクなデータ拾って来るから…」
ルナ 「え〜っ、高かったんだよこのデータ!…んじゃこれは?…ちょっとだけよぉ…」
トワ 「…何がですか?」
ルナ 「あんたも好きねぇ。」
トワ 「…何をですか?」
ルナ 「…田園調布に家が建つ!」
トワ 「…家が…?」
ルナ 「…ええ、家が…。地下鉄ってどこから入れるんでしょうねぇ?」
トワ 「…わかりません…」
ルナ 「…ですよね…。金もいらなきゃ女もいらぬ。あたしゃ、も少し背が欲しい。」
トワ 「…そうなんですか…」
ルナ 「…いえ、そんなでも…」
リー 「何だその会話?」
ルナ 「おかしい。2010年代のお笑いデータのはずなのに…」
トワ 「お笑い?」
リー 「どこが笑えるのか全くわからない…」
ルナ 「あぁ…だめだこりゃぁ…」
トワ 「あ!それ知ってます!」
ルナ 「え?」
トワ 「だめだこりゃぁっ!って。」
ルナ 「だ…だめだこりゃぁ?…え?ギャグなの?」
リー 「(トワに)ごめんね、混乱させる様な事して。こいつはね…」写真

リーのメール着信音が鳴る。

リー 「あ、ちょっとごめん。」

リー、メールしに席を外す。

ルナ 「あれね、奥さんとメールしてんの。新婚ホヤホヤで戦場来ちゃったもんだからメールばっかり。」
トワ 「そうなんですか。」
ルナ 「ラブラブはいいんだけどさ、戦闘中もメールばっかしてんのよね。信じらんない。あ、失礼。私は客間ルナ。兵隊兼フリーの戦場レポーター。」
トワ 「戦場レポーター。」
ルナ 「いい画が撮れたら、宇宙じゅうに私のレポートが放送されるんだ! ま、今まで一度もないけどね。えっと、トワちゃんだっけ?」
トワ 「はい。」
ルナ 「実はね、私もジニアスなの。と言ってもあなたの時代のじゃなくて、現代のだけどね。」

ルナ、トワに腕章を見せ。

ルナ 「このイエローリボンって言う腕章が、ジニアス能力者のマーク。あなたの時代から来た兵士には更にオレンジリボンが付いてる。」
トワ 「じゃあ、オレンジリボンの人を見つければ…」
ルナ 「ええ。さっきのギャグの意味がわかるかも。」
トワ 「え?いや、それは別にどうでも…」

デイジーとデビットのメールシーン。デイジーのメールを読むデビット。

リー 「『トワさん、本当に救世主だったら凄いですね!ダーリンはその救世主を助けた事になるからもっと凄いかもっ!』くううっ!そうね!そうね!〜」

デイジー宛のメールを打ちながら読むデビット。

リー 「『そうだよねぇ〜。救世主の救世主だよねぇ〜。カッコ笑い。あぁ、それにつけても早く会いたいよぉ。文字じゃなくて声が聞きたい。アイ・ラブ・ユー・ハニー。ハート』あぁ…デイジー…。」

(作:松本仁也/写真:はらでぃ)

<前一覧次>


トップページ > ページシアター > トワの宇宙 > シーン2 【公演データ