△ 「ロスト・ピーチボーイズ」第3幕第3場


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イワン 「僕は平凡な日常を送っていた。写真
お母さんに怒られながら毎朝、遅刻気味に学校に向かい、授業を受ける。
退屈な時は友達と教師にあだ名をつけてからかった。
話題になるのは昨日のテレビのこと、好きなスポーツのこと。
好きな女の子のことを得意げに話す奴もいたっけ。
世界は広くて、空は明るく輝いて、永遠に続くと思った。
あいまいな愛情に、あいまいな平和に包まれて、僕は自分が永遠に
終わらない夏休みを過ごせると疑いもしなかった。」
「イワン、耐えろ!」
「イワン、憎しみをとめるんだ!」

その時、海賊船が乗り付け、海賊旗がはためく。
海賊4人とウスが手に剣を持って登場。
海賊4人は黒い桃太郎を囲む。
ウスは犬と猿を匿う。(舞台中央から逃れる。)

稲妻 「今度は逃がさねえぞ!」写真
荒波 「油断するな!」

まず、稲妻が斬りつける。

稲妻 「お頭の仇だ!」

次に夕凪。しかし二人の剣はかわされ、一瞬の隙をつかれ、夕凪が斬られる。
(夕凪、舞台から退場)

稲妻 「夕凪!この野郎!」
荒波 「ひるむな!囲み込むんだ!」
黒い桃太郎 「まず一人!」

海賊三人は黒い桃太郎を囲むが、稲妻が勇みだって斬り込み、返り討ちにあう。(稲妻、舞台から退場)

黒い桃太郎 「残りは二人!」

戦いのさなか、荒波は後方のウスを振り返り、尋ねる。

荒波 「おい、ウス!こいつの勢いを止めるには世界樹を復活させるしかないようだ!」

その隙を狙って黒い桃太郎が荒波の背後を狙う。
黒雲が荒波をかばって、刺される(黒雲、舞台から退場)。

荒波 「黒雲!貴様!」
黒い桃太郎 「最後の一人!」

荒波が黒い桃太郎に挑むが、その刀の威力に押され、腕を斬りつけられる。
その時、ウスが荒波の前に飛び出し、黒い桃太郎と対峙する。

ウス 「お父さんと、よく二人で星を見に行った。」
荒波 「おい!何を言ってんだ!昔話に花咲かせる時じゃないぜ!」

犬は黒い桃太郎を押さえようとするが、逆に黒い桃太郎に斬りつけられる。

「大丈夫ですか!先生!」
「子供たちが殺し合っているなんて。何でこんな事になってしまったのか。」
黒い桃太郎 「お前たちが見ないふりをしている間に、時の関節がはずれたんだ!」

そして、『影』に堕ちてしまった海賊3人とイワンが現れ、黒い桃太郎に加勢し、ウスを囲む。

黒い桃太郎 「邪魔をするな!」
ウス 「鋳子!僕だよ。臼杵だ!」
黒い桃太郎 「そんな奴は知らない。」
ウス 「思い出してくれ!」
黒い桃太郎 「誰の哀れみもいらない!誰も助けてはくれなかった!」
ウス 「僕が救う。」
「臼杵、自分自身の物語を語っていいんだ!」
「語ってくれ!」

ウスは剣を交わしながら、語り続ける。
その時、若き二人の周りに結界が生じ、二人を包み込む。

ウス 「お父さんは星を捜すときのこつを教えてくた。
自分を中心にして見ると良いんだって。
そうすると、銀河の芯が定まって星が自分の周りに広がりだし、
見つけやすくなる。
鋳子、海賊船から星を見た時の事を覚えているかい。
あの時、僕らは宇宙の中心だった。
世界樹は僕らだったんだ。」写真

自我の扉が現れ、ウスは臼杵に戻っていく。
臼杵はとうとう自分自身の知覚の扉を開け、己の心に秘めていた暗い記憶と
対峙する。その事に気付いた黒い桃太郎の心の中にも葛藤が生じていく。

ウス 「君を遠くから眺めることしかできなかった僕は、君の後をつけて、、、。
君が家で傷つけられているのを見てしまった。
近くにいて、何が起きたかも知っているのに、僕には何もできなかった。
これからは、、、これからは僕が君を守って行く!」

と、突然、黒い桃太郎の構える刀がウスを襲う。
腕を傷つけられるウス。
『影』たちが剣をかまえて、つめよってくる。
まるで怯えたような顔の黒い桃太郎がとどめを刺そうと、
必殺の突きを繰り出して来る。
その時、『影』の一人の剣がそれをはじき返す。
黒い桃太郎はその場に倒れる。

フック 「見事な剣さばきだ、ウス殿。」

『影』が変化して復活したのはフックであった。

ウス 「フック!よみがえったんだ!」
フック 「ウス殿、我が物語を語ってくれたな!」
ウス 「僕はお父さんの思い出を、、、。」
フック 「父君と我が輩を同じような男と思っていてくれていたようだな。同じ様な、、、怖い男だと。光栄だ!」
ウス 「、、、ありがとう!」

その時、再び『影』たちが剣をかまえて、つめよってくる。鋳子を抱きかかえる臼杵。

フック 「野郎ども、仕事を怠けているのではないかね!全員、整列!」

その合図で、イワンを除いた『影』たちが一斉に海賊たちの姿に戻る。

海賊ども 「イェッサッー、キャプテン!」
フック 「ちょっと会わない間に良い船乗りになったな。」
臼杵 「戻ってきてくれたんだね。」
フック 「我らの物語を希望する者がいる限り、まだまだくたばれぬ。
我らは何度でも蘇り、語り続けるのだ。」
荒波 「お頭、あれを!」

イワンはまだ影のままであり、一瞬臼杵と目を合わせるが、そのまま走り去ってしまう。

臼杵 「イワン!」
荒波 「イワンの奴はまだ影のままだ!あいつがいなけりゃ、鬼子母神の怒りは静まらない。」

フックは宣言する。

フック 「嵐は未だ治まらず!今からイワンのばかのを助けに向かう!者ども、俺に続け!」
海賊ども 「イェッサッー、キャプテン!」写真

その時、犬と猿が海賊スタイルとなって登場!

「なら我らも!」
「お供致します!」
ウス 「先生!」
「臼杵!これからこの人たちとイワンを助ける旅に出る!」
「学校に伝えといてくれ!野々木は世界を助けにいってます、って!」
「(海賊どもに)そういうわけで」
犬、猿 「頼んだぜ、野郎ども!」
ウス 「僕も一緒に行く!」
フック 「この物語の国は俺たちの戦場だ!
臼杵君。君には守るべきものがあるだろう。
ならば、君は君自身の戦場に行きたまえ!」

(作:大村国博/写真:福田千聖)

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