トップページ > ページシアター > 1/4 breed > エピローグ 【公演データ】
病院の一室。里子がベッドに横たわっている。そこに母、立子登場。
立子 「里子、どう、調子は?」
里子 「うん。全然平気。」
立子 「りんごでもむく?」
里子 「ううん、さっきお菓子食べたばっかりだから。」
立子 「え?」
里子、隠してたおやつの袋を出す。
里子 「看護婦さんの目盗んで、買って来ちゃった。」
立子 「まったくもう、あんたって子は…。あ、そうだ。担任の先生から電話があったわよ、進路のことで。」
里子 「あぁ。」
立子 「どうするの?大学に行きたい?」
里子 「うん。行きたい事は行きたいんだけど…」
立子 「何よ。お金の事だったら心配しないでよ。なんとかするから。」
里子 「違うの。」
立子 「え?じゃあ…」
里子 「ねえ、お母さん、聞いてもいい?」
立子 「何よ。」
里子 「妖怪にも大学ってあるの?」
立子 「…え?」
里子 「そしたらいろいろ勉強して、もっと強い妖怪になりたいの。」
立子 「里ちゃん、あなた…」
里子 「将来はドワスレさんと警察で働くってのもいいかもね。でもやっぱり…キタロウのお嫁さんかな!」
立子 「…どうして?…あの時の記憶は…」
里子 「ドワスレさんよりパワーのある妖怪の記憶は消せないのよ、お母さん。」
立子 「里子…」
里子 「大丈夫。私は大丈夫だから。恐怖の大王が言ってたわ。自分は人間の念の固まりだって。って事は、人間がいる限り、第2、第3の大王がきっと生まれて来る。でも、私の血は、それを防ぐ事の出来る血。みんなを救える血。お父さんとお母さんがくれた血。私はこの血を誇りに思う。」
立子 「里子。」
里子 「だから心配しないで。」
里子、ベッドから飛び起きて部屋を出ようとする。
里子 「ちょっと出かけて来るね。」
立子 「里子、どこに行くの?」
里子 「ウワサを広めに行くの。まずは病院の人達から。」
立子 「ウワサ?」
里子 「すぐに町中にも広がるわ。」
立子 「なんのウワサ?」
里子 「クチサケ女のウワサ。」
二人、お互いの顔を見合う。立子、なるほど、という顔をして微笑む。
里子も微笑み、部屋の外へ出かける。
母、部屋に残って窓の外をみる。
幸せそうな笑顔。
ゆっくりと暗転して幕は降りる。
(作:松本仁也/写真:広安正敬)