「1／4 breed」シーン１８ 「1／4 breed」シーン１８トップページ > ページシアター > 1／4 breed > シーン１８ 【公演データ】
里子、現れる。
里子 「ネムさん…アブラスマシさん…どうしよう、はぐれちゃった。」
袖からアブラスマシの悲鳴。
アブラスマシ 「ぎゃぁぁぁぁ〜っ！」
里子 「何？」
袖からアブラスマシ、刃物に刺されて出てくる。
里子 「アブラスマシさん！」
アブラスマシ、よろよろとしながら窓から転落してゆく。
里子 「きゃぁ！…そんな…ネムさん！ネムさん！」
袖からネムが出てくる。
里子 「ネムさん！（ネムに抱きつく）」
ネム 「里子…ちゃん。」
里子 「え？ネムさん？」
ネムの背中にも刃物が刺さっている。そしてよろよろ歩いて行き、窓から落ちる。
里子 「きゃぁぁぁぁぁっ！ネムさん…うそ…うそよ、こんなの…誰か、誰か助けて…」
どこからか声がする。
トドメ 「里子。」
里子 「え？」
トドメ 「里子。」
里子 「…その声…」
後ろからトドメが現れる。
トドメ 「里子。」
里子 「お父さん？…お父さんなの？」
トドメ 「あぁ。」
里子 「（トドメに抱きつき）お父さん！」
トドメ 「里子。もういい、お前はよく耐えた。…怖がる事はない。さあ、お父さんと行こう。…もう大丈夫。さあ。」
里子 「お父さん。（と言いながらトドメの招く方へ歩みだす）」
トドメ 「さあ。」
里子、突然立ち止まる。
里子 「違う…」
トドメ 「え？」
里子 「お父さんじゃない。」
トドメ 「何を言っているんだ、里子。お父さんを忘れてしまったのか？」
里子 「だってお父さん、私の事、里子って呼んだ事がない。」
トドメ 「え？」
里子 「本当のお父さんなら、私の事、『しゃとこ』って言うはず。」
トドメ 「…じゃあ…『しゃとこ』」
里子 「遅いわ！あなた誰よ？」
トドメ 「ふっ、この際誰でもいいじゃない。それより飛んでみたくない？」
里子 「え？」
トドメ 「ほら。窓の外さ。」
里子 「外？」
トドメ 「飛んでみたいだろ？」
里子 「…飛ぶ？」
トドメ 「気持ちいいぞぉ。」
里子 「…気持ちいい？」
トドメ 「なあ、飛んでみたいよな、しゃとこ。」
里子、ふらふらと窓際に近付き、窓から足を出す。その瞬間、トドメの後ろからキタロウが飛び出て来る。
キタロウ 「飛ばさせるかぁ！」
キタロウの剣がトドメを斬る。
トドメ 「ぐわぁぁぁっ！！…お前。」
キタロウ 「親を切ると書いて、親切。」
トドメ、窓から落ちてゆく。それを見た里子、悲鳴をあげる。
里子 「きゃぁぁぁぁっ！お父さん！お父さん！」
キタロウ 「しっかりして、里子ちゃん！」
里子 「お父さんが、お父さんが！」
キタロウ 「違う。あれはお父さんじゃない！お父さんじゃないんだ。」
里子 「（はっと気付き）…私…」
里子、キタロウに泣きつく。
キタロウ 「辛い思いをしたね。」
里子 「ネムさんが、ネムさんが死んじゃった。」
キタロウ 「違うよ。君が見たネムもアブラスマシもクチグルマが化けていただけだ。」
里子 「クチグルマ？」
窓の後ろから、ゆっくりと手が出て来る。クチグルマが姿を現す。
キタロウの背後から襲いかかろうとした瞬間、キタロウ、後ろ向きのまま背後のクチグルマを刺す。
クチグルマ 「ぐわっ！」
キタロウ 「こいつがクチグルマさ。よかったー、目玉のスペア後ろにつけといて」
キタロウ、首の後ろについた親父の目玉を見せる。
クチグルマ 「スペア…」
クチグルマ、よろよろと後ずさり、再び窓から落ちる。
キタロウ、落ちたクチグルマを確認して、
キタロウ 「哀れなやつだ。」
袖からドワスレと今井が出て来る。
今井 「キタロウさん！」
キタロウ 「兄さん。」
ドワスレ 「待て、今井君！クチグルマかもしれん。」
キタロウ 「違うよ、やつなら…」
ドワスレ 「口に出すな！」
キタロウ、指で窓の下をさす。ドワスレ、それを確認し、
ドワスレ 「確かに。」
里子 「ネムさんは？」
キタロウ 「ギリギリ間に合わなかった。」
里子 「え、じゃあ…」
キタロウ 「大丈夫。連れて行かれただけだ。殺されてはいない。」
今井 「どこに？」
キタロウ 「分からない。」
ドワスレの携帯が鳴る。
ドワスレ 「はい。おう。一反もめんか…なに？分かった、すぐに向かう。（電話を切り）警察内の妖怪の情報網にかかった。ツムジと宇佐美を沖浜市で見たそうだ。」
キタロウ 「沖浜市？」
里子 「沖浜市っていえば…」
今井 「沖浜原子力発電所。」
全員顔を見合わせる。
キタロウ 「まさか。」
ドワスレ 「間違いない。」
里子 「だとしたら…」
今井 「爆弾一つで大変な事に…」
ドワスレ 「行くぞ！」
４人、ダッシュでハケる。
（作：松本仁也／写真：広安正敬）