△ 「1/4 breed」シーン15


トップページ > ページシアター > 1/4 breed > シーン15 【公演データ

<前一覧次>

今井 「警部、訳わかんないんですけど。」
ドワスレ 「車の中でさんざん説明したろうが。」
今井 「大体ドワスレって何ですか?」
ドワスレ 「私の妖怪名だ。」
今井 「妖怪名って…警部も妖怪なんですか?!」
ドワスレ 「言ってなかったっけ?」
今井 「聞いてないっすよ!」
ネム 「ちょっと、あんた何もんよ。」
今井 「僕は…」
里子 「分かった!」
今井 「え?僕を知っているんですか?」
里子 「えぇ、(自信たっぷりに)ねずみ男でしょ!」
今井 「違うよ!」
里子 「えーっ!でも流れからいったら、ねずみ男なのに。」
今井 「なんだよ、流れって。」
里子 「顔もそれっぽいし。」
今井 「お前ケンカうってんのか!僕は人間だよ、人間!」
里子 「人間?純粋な?」
今井 「あぁ。」
ネム 「そういえば、こいつから全く妖気を感じないわ。」
今井 「そういえばって、何でみんなして僕が妖怪だと思うわけ?!」
ネム 「ドワスレさま、何でこんなやつ?」
ドワスレ 「まあ、先に私の話を聞きなさい。キタロウ、お前もだぞ。」
今井 「キタロウって…あいつが警部の?」舞台写真
ドワスレ 「あぁ。」

今井、キタロウの側へ寄り、睨み付けるように

今井 「一つ聞いていいか?」
キタロウ 「何でしょう?」
今井 「お前…ゲタとちゃんちゃんこは?」
ネム 「どうしてそれしか聞けないかな?」
キタロウ 「持ってません。あ、ちなみにネコ娘とラブラブでもないし。」
今井 「ネコ娘?ラブラブなのは夢子ちゃんとだろ?」
今井以外 「誰だよ、それ?」
ネム 「だからそういうのどかな話してる場合じゃないでしょ!」
今井 「いいや、もう一つ!本当に聞きたいのはそんなことじゃない!」
キタロウ 「何でしょう?」
今井 「目玉の親父って本当にいるのか?」
ネム 「バカか、あんたは!」
里子 「あっ、それ、私も知りたかった。」
キタロウ 「ははははは、いませんよそんなの。親父が目玉だったら大変でしょ?あれも漫画のオリジナル。」
今井 「やっぱりそうか。」
里子 「ちょっと残念。」
キタロウ 「ホントはね、目玉の親父じゃなくて…(目に手を当てる)親父の目玉なんです。(片目を取り出してみせる)」
今井 「んにゃぁぁぁ〜っ!!!」
ドワスレ 「私も持ってる。(やはり片目を出してみせる)」
今井 「んにゃぁぁぁ〜っ!!!」
キタロウ 「ウチの一族は、代々息子に目玉を与えるのが習わしでね」
里子 「それじゃお父さん目玉なくなっちゃうんじゃ」
キタロウ 「大丈夫。いくらでも生えかわるから」
今井 「生えかわる…」
キタロウ 「結構使えるよ。のぞきとかに。」
ドワスレ 「こらキタロウ、逮捕するぞ。」
キタロウ 「冗談だよ。」
ネム 「もういいでしょ。ドワスレ様、話があるんじゃ?」
ドワスレ 「おぉ、そうだ。こんな話してる場合じゃなかった。実はな、さっき大王と遭った。」
ネム 「え?」
ドワスレ 「遭ったのは一瞬だったが、情報はかなり入った。いいか、まずはヤツの目的だが、世界を滅ぼそうってのは変わっていないらしい。そしてその目的の為の障害、つまりこの子や我々を消しに来る可能性が高い。」
ネム 「えぇ、そこまでは私も分かったわ。」
ドワスレ 「あぁ、ところがここからだ。ヤツのパワーはまだ回復していない。」
ネム 「え?」
ドワスレ 「1/4のままだ。」
里子 「それじゃあ…」
ドワスレ 「今のままじゃ世界を滅ぼすパワーはない。」
ネム 「じゃあ、どうやって?」
ドワスレ 「人間を利用するんだ。」
里子 「人間を?」
ドワスレ 「実は今朝、大王と遭った時、ヤツはある人間をさらって行った。」
ネム 「誰?」
ドワスレ 「爆弾魔だ。」
里子 「爆弾魔って、最近起こっている連続爆破事件の?」
ドワスレ 「あぁ。犯人は宇佐美 敏。以前テロ組織にいた、爆弾のエキスパートだ。声明文が出ていないから理由も分からんし、犯人を絞り込むのもキツかったよ。」
ネム 「そいつを利用して、世界を滅ぼそうって?」
ドワスレ 「どんな手で来るかはまだ分からんが、ヤツをさらったって事は必ず利用するってことだ。」舞台写真
里子 「でも、相手が人間なら妖怪より簡単にやっつけられるんじゃ…」
ドワスレ 「それは出来ない。」
里子 「出来ないって?」
ドワスレ 「我々妖怪の血を持った者は、純粋な人間を殺す事が出来ない。」
里子 「どうして?」
ネム 「妖怪は人間が生み出したものだからよ。」
里子 「え?どういう事?」
ネム 「そもそも、人間も妖怪も、元は同じ魂。うまく人間に入り込めれば人間として生まれ、入り込めずに周りの様々な人の念に囚われれば、不完全なものとして生まれる。それが妖怪なの。」
ドワスレ 「人間の念が生み出したものが人間を殺せば、そいつもまた死んでしまう。」
今井 「あの、僕、2度も殺されかけたんですが。」
ネム 「殴っただけじゃん。」
里子 「じゃあ大王は?あいつだって人を殺せないんじゃ?」
ドワスレ 「あいつの目的は世界を滅ぼす事だ。その目的が達成できさえすれば、自分が死のうがどうなろうが関係ない。」
里子 「そんな…」
ドワスレ 「第一、あいつを妖怪にくくっていいかどうか。確かに妖気は感じるんだが我々のものとは全く違う種類の妖気だ。とにかく、我々では宇佐美に手を出す事ができない。」
ネム 「そこで彼が必要になってくるってわけね。」
ドワスレ 「あぁ。目には目を、人間には人間をって事だ。」
ネム 「でも、コイツで大丈夫なの?」
ドワスレ 「今井君の宇佐美に対する執念はハンパじゃない。私が保証する。そういう事だ、今井君。」
今井 「どういう事?」
ネム 「あんた話聞いてたの?」
今井 「いや、話聞いてても訳わかんなかった。」
ネム 「バカじゃん。」
今井 「でも多分、宇佐美を捕まえられるのは僕しかいないって事ですよね?」
ドワスレ 「それが分かっていりゃいい…。キタロウ、お前も協力しろ。」
キタロウ 「…」
ドワスレ 「ネム一人じゃ危険すぎる。お前の力も必要なんだよ。」
キタロウ 「…」
ドワスレ 「キタロウ、何とか言えよ。」
キタロウ 「自分がやればいいじゃないか。」
ドワスレ 「何?」
ネム 「キタロウ。」
キタロウ 「兄さんが戦えばいいじゃないか。」

ドワスレ、キタロウの襟首をつかみ、

ドワスレ 「ふざけんのもいい加減にしろよ!あぁ、やりたいさ!出来ることなら大王をこの手で倒したい!でも出来ない。この無念さがお前に分かるか?」
里子 「どうしてお兄さんには出来ないの?」
ネム 「力がないのよ。」
里子 「え?」
ネム 「妖怪って、人を騙したり惑わせたりする能力は強いけど、パワーで相手を倒すような力はあまりないの。とくに純粋な妖怪にはね。強い攻撃力を持っているのは人間の血が入っている妖怪、しかもごくわずかしかいない。ましてや大王と渡りあえる力を持っている妖怪などいないに等しい。トップクラスの四天王でさえ一人じゃ倒しきれなかった。」
ドワスレ 「お前にはそのパワーがある。なのにどうして使わない!」
キタロウ 「じゃあ兄さんには分かるのか?!パワーがあっても勝てなかった、大切な人を守れなかった無念さが分かるのかよ!」
ドワスレ 「お前はいつまでウジウジ…」
ネム 「待って!」
ドワスレ 「…妖気だ。」
ネム 「すぐ側まで来てる。」
ドワスレ 「今井君、彼女を。」
今井 「あ、はい!」

入口のドアをドンドンと叩く音。

アブラスマシ 「ネムさん!キタロウさん!開けて下さい!」
ネム 「アブラスマシだ。」
ドワスレ 「アブラスマシ?」

ネムがドアを開けると、アブラスマシが飛び込んで来る。

アブラスマシ 「大変なんです!あっ、ドワスレさんいらしてたんですか。」
ドワスレ 「お前…」
アブラスマシ 「アブラスマシですよ!ドワスレさんまでドワスレですか?」
ドワスレ 「そうかアブラスマシか。しかし何でお前が…」
アブラスマシ 「逃げられたんですよ、僕だけ何とか。」
ドワスレ 「そうか…」
アブラスマシ 「そんな事より、大変なんですって!」
ネム 「どうしたの?」
アブラスマシ 「町の妖怪から連絡があって、ツムジさん…いや、大王と爆弾持った男が、町外れまで来てるって!」
ドワスレ 「何だと?!」
ネム 「すぐにここを出た方がいいわ。」

全員立ち上がるが、キタロウだけ動かずに座っている。

ドワスレ 「キタロウ!」舞台写真
キタロウ 「俺は行かない。」
ドワスレ 「お前いつまでそんな事を!」
キタロウ 「行かないって言ってるだろ。」
ネム 「どうして?」
キタロウ 「…」
ネム 「どうしてそこまで…」
キタロウ 「あのさ。」
ネム 「何よ。」
キタロウ 「僕…」

みんなの方に振り向き、

キタロウ 「…見たいテレビがあるんだ。」
ドワスレ 「何だとてめぇ…」

ドワスレがキタロウに飛びかかろうとした瞬間、里子がキタロウの頬を叩く。
みんな一瞬息を飲む。

里子 「…私、ゲゲゲの鬼太郎が大好きでした。だからあなたに会えて嬉しかった。でも、やっぱりあれは漫画なんですね。現実のキタロウは…最低です。」
ネム 「行こう、里子ちゃん。」
ドワスレ 「こんな腑抜けには用はない。」

キタロウを残して全員部屋を出る。

キタロウ 「…もっとも低いと書いて…最低…か。」

キタロウ、反対側にハケる

(作:松本仁也/写真:広安正敬)

<前一覧次>


トップページ > ページシアター > 1/4 breed > シーン15 【公演データ